※学パロ 何をどうしたらジャンに振り向いてもらえるか、なんて恋愛などという甘ったるいものとは無縁だったあたしには分かるもんじゃなかった。恋愛なんかするとも思っていなかった。 「ナマエ?」 「あ、ジャン」 「そういやお前今日日直だったな」 今日は日直で放課後誰も居ない教室に1人残っていた。それが良しか悪しかジャンと2人きりになってしまった。どうやらジャンは忘れものでもしたらしい。自分の机の中をゴソゴソと漁っていた。 それからジャンはあった、と声を上げて同時に顔を上げた。 「携帯忘れちまってよ」 「わざわざ家から帰ってきたの?」 「ああ。携帯ねえと色々困るからな」 「そっか」 おう、と返事をしながら微かに笑ったジャンに高鳴った胸と熱が集まる顔を隠すように俯いた。もう用は済んだ筈なのに帰る素ぶりを見せないジャンを不思議に思って少しだけ顔を上げたらいつの間にかジャンはあたしの前の席に座っていた。 「か、帰らないの?」 「日誌、もう終わんだろ?一緒に帰ろうぜ」 「え、な、なんであたしなんかと」 「嫌かよ」 「嫌じゃないよ!」 寧ろ嬉しいけどいきなりどうしたのかと不信感を抱いてしまう。だって一緒に帰るほど仲が言い訳ではなかったし。 「早く終わらせろよ」 「あ、うん」 それからはどっちも喋ることは無くてカリカリとシャーペンが滑る音だけが響いた。ジャンが居ると思うと思うように手が進まなくて何度も書いたり消したりを繰り返していたら、声が聞こえてきた。 「なあ、お前ってエレンと付き合ってんのか?」 「え?」 思い掛けな質問にシャーペンを落として間抜けな声が出た。何であたしがエレンと付き合ってるなんて、そんな事思うのか。 「いや、仲良いからよ、付き合ってんのか?」 「付き合ってるわけないじゃん」 「そうなのか?にしてま随分と仲が良いんだな」 「席が隣になってから意気投合してね、話すようになったの」 「ふーん」 そうなのか、と俯いてしまったジャン。今日のジャンは何処か変だ。何かあったのだろうか。 「ジャン?」 「なあナマエ、お前好きな奴とかいねえの?」 「あー…うん、居るよ」 「は!?まじかよ、誰だそれ」 いっそのことジャンだよ、って言ってしまおうかとも思ったが生憎あたしにそんな勇気はない。 「それは秘密」 「……俺じゃ、だめか」 「は、」 意味が分からない。だっておかしい。ジャンには好きな人が居るって噂だって聞いた事がある。おかしい、絶対。 そんな事をあれこれ考えていたらジャンに見つめられている事に気付いた。 それから舌打ちをしてからジャンは顔を近付けてあたしに口付けた。 一度だけじゃなくて何度も何度も角度を変えて繰り返されるキスに全身の力が抜けた。 「…なんで、」 「なんで、って…まだ分かんねえのかよ。」 「なにが」 「俺が好きでもない奴にこんな事するようなやつに見えんのか」 その言葉に慌てて首を振るとジャンは大きなため息を吐いて立ち上がった。それからあたしの耳元に唇を寄せて囁いた。 「好きだ、ナマエ」 爪先までとろけてしまいそう |