「留さん留さん、こっちは終わったよー!」


「おう!ありがとなー、名前!こっちもそろそろ終わりそうだー!」


「あ、じゃあ私も手伝うよー!」


「いや、こっちは俺だけで大丈夫だー!名前は喜三太たち一年と片付けしててくれー!」


「……う、ん。分かったー!」



今日も用具委員会の仕事は学園の備品の修繕活動。
私は一足早く終わったのだが、屋根の上で作業をしている留さんはまだ終わってない。
しかしいつも通り手伝いはさせてもらえなかった。


留さんはアヒルさんボートや屋根の上での作業のような、大掛かりのものや危ないところでの作業は危ないから、と言って私には一切関わらせてくれない。


私だって留さんの手伝いがしたいのに。


「喜三太、一緒に片付けしよっか!」


「あ、はい!名前先輩!片付けま〜す!」


「はい、よいお返事!」


喜三太は誉められたことが嬉しいのかニコニコしながら片付けを進めている。

二人で手際よく片付けを進め、そろそろ片付け終わるくらいの頃、作兵衛の声が響いた。


「食満先輩!危ないっ!」


その声が聞こえてすぐに私は留さんの修繕している屋根の上を見た。
そして屋根から落ちる留さんの姿が目に入った。
私は怖くなって固く目を閉じ顔を背けてしまった。

しかし人が落ちたような音はせず、恐る恐る留さんの方を見やると上手く着地出来たらしく、留さんは無事だった。
無事だった留さんに安心しつつ急いで駆け寄る。


「留さんっ!大丈夫なの!?怪我とかしてない!?」


「おう!こんくらい全然大丈夫だ!かすり傷一つ出来てねえさ!」


「俺、食満先輩が踏みしめたところが悪かった時、もうダメかと冷や冷やしましたよ!」


「ばーか、大丈夫だよ!こんなんなんともない!」



作兵衛も喜三太も安心したようで、固くなっていた表情は力が抜け柔らかく笑顔を浮かべていた。

でも私は素直に無事だったことを喜べなかった。
「バカは留さんだよ!留さんに何かあったら、…私…」


「名前……な…泣くな泣くな!」


「泣いてないっ!」


「たった一瞬でも心配させて悪かったな…。」



同い年なのにいつまでも子供扱いされてるかのようなこの頭を撫でる行為。
今ほど安心感を感じたことなかった。



「よーっし!調度俺の方も終わったとこだったんだ!ささっと片付けて皆で甘味屋にでも行こう!な、名前!」


「やったー!甘味屋!僕しんべヱと平太も呼んできます!」



留さんなりに詫びだと考えたのか皆で甘味屋へ行くことになった。


甘いもので誤魔化そうとしてるのかな、とは考えないであげることにして。



「け、食満先輩ー!しんべヱが!」


「あー!だからあれほど食べ過ぎるなと言ったのに!」


甘味屋では案の定しんべヱが
団子を食べ過ぎて
動けなくなってしまったり、


「ダメだよしんべヱ!プロの忍者は甘味屋でも、すまーとに振る舞うって立花先輩も言ってたでしょ〜!」


「…え〜、そんなこと言ってたの〜…?」

「留さん、とりあえず少し休んでから学園に帰った方が…」


「そうだな、それからぼちぼち学園帰るか!」


しんべヱが動けるようになるまで
雑談を交えて時間を潰したり、



「…名前、その…今日は本当に悪かった。」


「…!……次からは気を付けてよね、留さん。」


「…ああ!お前に心配かけねえように気を付けるさ!」


その帰り道で留さんが真剣な顔で
もう一度ちゃんと謝ってくれたこと、


「あと、危ないからって私だけ修繕の手伝いすらさせてくれないのとかやめてね?」


「なっ!…でも俺は名前のこと心配して…」


「私だって用具委員会なんだもの!ちゃんと皆で活動したいの!」


「んー…そのかわり俺の目の届く範囲内でにしてくれよ?」


「…うんっ!」


留さんの困った表情や、
何となく腑に落ちてないような表情、


「食満先輩!名前先輩!何してんですかー!」


「ごめんごめん!今行くよー!」


「早く帰らないと夕飯に間に合わなくなっちゃいますー!」


「…え〜…しんべヱもう食べられるの〜…?」



用具委員会、
皆でのやりとりも。


過ごす日々の積み重ねが
酷く愛おしいと思うのです。



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