電車やバスを乗り継ぎ
年の瀬が迫るこの季節に、1人農道を歩いて
小さなお墓を訪ねた。
雪がちらつき出す中、そのお墓に手を合わせる。
いろんな感情が溢れ出し、涙となったそれらが
今にも頬を滑り落ちそうになるのを堪える。
ここは、泣く場所ではないのだ。
ただ、あなたがどこかで笑っていますようにと
願う。
「珍しいこともあるんやなあ」
「え?」
後ろからお年寄りにはなしかけられ、振り返ると
目を丸くしたお婆ちゃんが立っていた。
地元の方なのだろう。
お婆ちゃんが言うには
今日、ここに私くらいの歳の人が来るのは2人目なのだそう。
さっきも、若い男の人が来ていたと。
「古い手紙、何通もその木の辺りから掘り返しとったわ。タイムカプセル?言うてたなあ
えらい大事そうに抱えてたよ。」
その人は、本陣跡に向かったと教えてくれたため
急いで私も後を追った。
もしかしたら、もしかして。
淡い期待を抱いて、よく知りもしない土地の山を
ひたすらに走った。
辿り着いた先に、待ち人は居なかった。
そう簡単にいくはずないか
と、1人自嘲気味に笑い
顔も知らない、声も知らない人を想い、堪えたはずの涙が一筋だけ溢れてしまった。