12月6日

あの不思議な体験からもう3年が経った。
半兵衛さんと交わした手紙は嵩を増すことなく、部屋の片隅に小さなケースに入れ保管されている。
たったの3ヶ月程の期間に起こった、小さな奇跡を私は未だに忘れられずにいるのだ。

3年の月日は、私を学生から社会人へと変えた。

とあるパンフレットで見た、近畿にある旅館の写真。
四季の花を館内の至る所に植えている中の一つ
杜若の庭にひどく心を惹かれ、興味本位で面接を依頼すると、あれよあれよと言う間に就職していた。
憧れの東京生活は叶わず、今は真逆の西の都で一人暮らしをしている。
結局、実家の手伝いをしていた頃と仕事は変わらないものの
責任や仕事内容はガラッと変わり、毎日クタクタになるまで働いている。



そして、何よりもあれから私は竹中半兵衛という人物を調べに調べた。
名前こそ有名なのに、資料と言える物が多くは残されていない彼のことを知るのはあまりにも困難だった。
少しずつ知っていった事実の竹中半兵衛の人柄と、私の知る竹中半兵衛の人柄にあまりにもギャップがある事や、彼が話してくれたことに解せない部分がなかったわけではないが
今となっては、史実とのギャップなんてものはどうでもよくて
ただ、彼に一目会いたい。と、それだけだった。

3年間待ち続け、待っているだけでいいのだろうか?と、思った私は今日
西の地に越してきたのも何かの縁だと思い
彼のお墓を訪れた。

奇しくも、月命日の今日。
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