5月21日


悩み事があるとき自分ではきっちり隠しているつもりでも、どうもわかる人にはすぐわかってしまうようだ。
母はそのわかる人間なようで、しばらく仕事は休んでいいと休みをもらった。母に言わせれば、私がわかりやすだけらしい。

友人との一件があってから二週間近くが経った。
バイトが忙しく、この学年にもなれば授業あまり被っていないため、幸か不幸かほとんど顔を合わせることも無かった。
ぞんざいな態度をとってしまったことを謝るべきなのか…と、悶々とする事が度々あった為、母に休めと言われたのは言わずもがな頭を冷やせと言う事だろう。
間違いない、私だって自分がそれなりの立場だったとしたら、そんな事で仕事に支障を来たす従業員が居れば帰らせるだろう。
迷惑をかけてしまったと反省した。

足が自然と向かったのは家ではなく、旅館の離れだった。
小さな池に架かる橋を渡った先にある笹の間には、昔から何かある度によく来ていた。
いくつかある、離れの中でも最も奥まった場所にあるここは、ほとんど貸し出されることもなく、私は大好きだ。

少しだけ植えられた竹の葉の隙間から、宵待月が顔を覗かせている。
濡縁に腰掛け、対策遠い月を眺めながら久々に重虎さんに返事を書こうかと思った。
この二週間ほどは特に返事をなかなか書けずにいたのだ。


『近頃名前からの手紙が遅くて、どうしたのかと思っていたんだ。
何かあったのかい?辛いことがあったのなら、全部吐き出していいんだよ。その原因と僕が出会うこともないだろうからね、僕で良ければいくらでも話してごらん』

どうして、この人は欲しい時に欲しい言葉をくれるのだろう。
優しすぎるその文面が心に響いた。


どこからどう書くべきか迷いながらも、少しずつ手紙に記していった。
一番の親友との仲や、原因の事、どうすればいいのかも、答えは自分なりにはでている。それでも、後一歩の勇気がでない。互いに避けているわけではないが、なかなか声をかける時期を見極められない、と。
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