短い春と夏が終わって、あっという間に秋がやってきた。ようやく仕事のペースにも慣れ、月に何度かの夜勤にも身体が順応しつつある。今はまだシフト表通りの勤務だが、このままいけば近々緊急要請でオフでも呼び出されることがあるかもしれない、と夏の終わりの面談で言われ、嬉しいやら悲しいやら自分でもどう感情を処理すべきか悩ましい今日この頃ではあるものの──
 それはそれとして。
 私は相変わらず爆豪くんやお茶子ちゃんと友人関係を継続しながら、公私ともにそれなりに充実して日々を送っている。
 この日、私と爆豪くんは昼過ぎに落ちあい一緒に昼食を摂る約束をしていた。適当な店で食事を済ませたのち、さっさと店を出る。こういうときは大抵定食屋かうどん屋、牛丼屋あたりで済ませてしまうことがほとんどだ。それが何故かと言えば単純におしゃれな店の料理では爆豪くんのお腹が膨れないのと、あとは周囲からの注目を極力避けるためだった。回転の早い店はみんなほかの客に注意も関心もない。
 牛丼屋を出ると、私たちは揃って歩き出す。目的地は決まっているので店の前でまごつくこともない。そもそも爆豪くんと一緒に行動するにあたって、そうした無駄は徹底的に省かれるのが常だ。
「さて、じゃあ行こうか」
 と爆豪くんに声を掛けたところで。
「あれ、爆心地さんじゃないすか」
 ふいに背後から、爆豪くんを──正しくは爆豪くんのヒーロー名を呼ぶ声がした。
 振り返った爆豪くんがすかさず「げ」と嫌そうな声を出す。
「あ、本当だ。爆心地だ」
 その声につられて私も振り向けば、私たちから数メートル離れた男性と目があう。そこにいたのは現場で何度か見かけたことのある、爆豪くんと同じ事務所のヒーローの二人組だった。
 現場で会ったときには互いにマスクをつけているので、はっきりとそうだと断言することはできない。ただ、体格や雰囲気から彼らがヒーローであることはそれとなく察せられたし、何より爆豪くんのリアクションを見れば一目瞭然だった。むっとした顔ではなく単に嫌そうな顔というのは、爆豪くんがそれなりに気を許している相手でないと見せない表情だ。
 二人組が軽く手を挙げてこちらに近づいてくる。ひとりは二十代後半、もうひとりは私たちより若そうだ。どちらも男の人。そのうち年下の方が、爆豪くんの隣の私に気が付いた。
「そっちの人は──」
「君、たしか■■病院の」
「あ、はい。■■病院で看護師としてヒーロー活動をしています、苗字といいます」
 年上の人に聞かれ、私は慌てて自分の所属と名前を名乗った。
 ヒーロー資格を持っているとはいっても、私のメインの活動はあくまで看護師だ。ゆくゆくはリカバリーガールのようなバランスで両方の仕事をしていきたいとは思っているが、現状の私はまったくそんな段階にはいない。だからこういうとき、私には名乗るべきヒーロー名がない。一応学生時代にそれらしきものをつけはしたけれど、使っていない名前を名乗ったところで何の意味もないだろう。
 爆豪くんは私たちの遣り取りを面白くなさそうな顔で見ている。私が名乗ると、年上っぽい方がぽんと手を打った。
「やっぱりそうだよね。ヒーロー資格持ってる看護師が新人で入ってくるって、うちの奥さんが言ってた」
「奥さん?」
「そう。俺の奥さん、■■病院の救急の看護師さん」
 ということは、つまりこの方の奥さんは私の先輩にあたる人ということになる。思わず隣の爆豪くんに視線をやったが、爆豪くんは特に驚いた様子もなく相変わらずむっつりとした顔をしていた。恐らく、自分の先輩の奥さんと私が同じ職場であることを、爆豪くんはすでに知っていたのだろう。教えてくれればいいものを。
「あの、差支えなければ苗字を教えていただいても……?」
 おそるおそる本名の苗字を聞く。私が知っているのはこの人のヒーロー名だけだ。そうして彼が教えてくれたのは、私が所属する救急の主任看護師のうちのひとりと同じ苗字だった。そういえば科内の既婚者の先輩の中には何人か旦那さんがヒーローの人がいると聞いたことがある。まさかこんな形で旦那さんの方と話をすることになるとは思いもしなかった。
 むっつりとどうでもよさげな顔をしている爆豪くんとは対照的に、年下らしき男の子の方は私たちの話を興味津々の顔で聞いている。そういえばこの子の顔は高校で見たことがあるような気がするから、きっと私たちの後輩、雄英の卒業生なのだろう。
「へーっ、ファイバーさんの奥さんって看護師さんなんすか。やっぱあれっすか、現場で働く姿に一目ぼれみたいなやつ」
「まあ、大体そんなところ」
 ざっくりとした肯定は多分に照れを含んでいて、なんだか話を聞いているこちらの心が和んでいくようだった。
 私の職場の科内でも、ときおりヒーローとの合コンの話が出る。もしかしたらそれはこういう伝手で発生する話なのかもしれない、とふたりの会話に耳を傾けながら私はぼんやり考える。そうでなくても看護師はヒーローとのカップルが少なくない。互いに不規則な勤務という点と、それから命を扱う現場に身を置いているという点において、そこそこに折り合いがつきやすいのだろう。あとは単純に、怪我をしやすいヒーローは自身の通院の際に看護師と知り合う機会が多い。
 そんなことを考えていると、ふいに年上の方──たしかヒーロー名は「ファイバー」さんだったと記憶している──が、私と爆豪くんを交互に眺めていることに気がついた。ここまで最初の挨拶以降沈黙を守っている爆豪くんは、その視線に鬱陶し気に舌打ちをする。
 こういう視線が何を意味しているのかは、大体想像がつく。爆豪くんの舌打ちも、私と同じ想像をしているからこそだろう。案の定、
「ていうかあれか? 苗字さんと爆心地もそういうあれか?」
 とファイバーさんがにやにやしながら聞いてきた。
「は? ふざけんな、どう考えても違ェわ」
「ちょっと爆豪くん、敬語……」
 質問に対する答えはともかく、あまりにも口が悪い。思わず苦言を呈する私に、ファイバーさんは苦笑した。
「こいつはもういいんだ。そういうやつって分かっててうちのボスも採用してるし、結果は出してるから」
 その言葉に、爆豪くんははんと鼻を鳴らす。
「そういうこった。部外者が知ったような口きいてんじゃねえよ」
「すみませんね、部外者が知ったような口きいて……」
 どんな特別待遇だ、と思わないでもないが、それこそ部外者が口を出すべきことではないだろう。しぶしぶ私は口をつぐむ。爆豪くんに関しては態度だけが大きくて実績が伴わないことはあり得ないだろうから尚更だ。
 そんな私たちの遣り取りを見て、
「はは、その感じだと本当に付き合ってるわけではないみたいだね」
 ファイバーさんが笑った。ヒーローらしく快活な笑い方に、私は何となく在りし日のオールマイトを思い出す。
「爆豪くんとは高校時代からの友人です」
 私が答えると、すかさず爆豪くんが「ただの知り合いの間違いだろ」と私の言葉を訂正した。こういうとき、爆豪くんはやたらと細かいことを言う。
「だ、そうです。ただの知り合いです」
「ははは、友達か。それはいいね」
「爆心地さん、烈怒頼雄斗さんやチャージズマさん以外に友達いたんすね!」
「てめえまじでいい加減にしろよ。先輩敬えや」
「爆心地さんにだけは言われたくねえ!」
 後輩くんは笑っているが、爆豪くんはいたって本気で言っているに違いない。自分の不遜さはさておいても、自分が他者から敬われないことに関しては人一倍敏感な爆豪くんだった。そういうところも高校時代から一向に変わらない。
 ともあれこうして見てみると、爆豪くんは随分と仕事仲間に恵まれた環境でサイドキックとしての経験を積んでいるようだった。事務所のボスがどんなヒーローなのかは今この場では思い出すことができないものの、爆豪くんがため口をきくことが許されている時点でかなり懐の広いヒーローに違いない。
 それでいて爆豪くんが二年以上きっちり同じ事務所につとめているのだから、ヒーローとしての実績も相当なものなのだろう。なんだかすごい世界だ。私のようにヒーローとしての活動の第一線から離れた場所で仕事をしている人間としては、同業者とはいってもなんだか遠い世界のことのように思えてならない。
 そんなことを考えるともなく考えていると、
「それで、ふたりは今からどっか行くんすか?」
 と後輩くんが爆豪くんに尋ねた。
「あ? てめえにゃ関係ねえだろが」
 にべもない物言いの爆豪くんに早々に見切りをつけ、後輩くんは視線をこちらに向ける。爆豪くんが答えればいいだけの話なのだが、仕方がないので私が代弁するしかない。
「今日はこのあと高校の時のクラス会があるので」
 普段は夜に顔を合わせることが多い爆豪くんと私が昼間から一緒にごはんを食べていたのには、そういう事情があったのだった。
 高校を卒業して大体二年半。まだまだ独立の話が出るような年ではないものの、そろそろみんなヒーローとしての生活が落ち着いてきた頃だ。もうじき始まるインターン生の受け容れを前に、落ち着いた今くらいの時期に一度クラス会を開こうという話になり、それが今日の夜に予定として入っていた。
 少人数で集まることはあっても、クラス会として大々的に集まるのは卒業して以来はじめてだ。さすがに全員集まるとまではいかなかったけれど、関東勢は全員出席らしい。ちなみに発起人は上鳴くんたちでも、まとめてくれたのはももちゃんと飯田くんである。
「へえ、クラス会。爆心地もそういうのに顔を出すんだな」
「しゃあなしだわ」
 言い方はそっけないが、爆豪くんがちゃんと有給申請したことは知っている。さすがに三年間ともに頑張ったクラスの集まりとなれば、爆豪くんも顔を出さないわけにはいかないのだろう。そもそもヒーローは情報交換のためにも横のつながりが重要な職業だ。
「じゃあ今から向かうところってことか」
「あ、でも集まるのは夜ですけどね。それまでカラオケで時間潰そうと思って、爆豪くんと」
 ね、と私は爆豪くんに話を振る。が、これはあっさり無視された。
 かわりにファイバーさんが驚いた顔で口を開く。
「え、爆心地とカラオケ? でも時間潰すって、今まだ昼の二時すぎだよ?」
「そうですけど、まあヒーローばっかのクラス会、みんなお酒飲まないで六時始まりなんです」
「いや、そういうことじゃなく……」
 爆心地とふたりでカラオケかあ。
 と、ファイバーさんは呟いて、それから後輩くんとふたりで顔を見合わせた。私はその様子をよく分からないままぼんやり眺める。
 爆豪くんとカラオケ、そんなにおかしなことだろうか。たしかに爆豪くんは付き合いがいい方ではないけれど、高校時代から時々はカラオケやボーリングにも参加していたし、私としてはそれほど珍しいこととも思わない。
 それにカラオケならば会話が続かなくて沈黙になる心配もない。まあ、今更爆豪くんとの間に沈黙が落ちたところでどうこう思うこともないのだけれども。
「爆豪くん、そんなに事務所の人たちとの付き合い悪いの?」
 小声で爆豪くんに聞いてみると、爆豪くんは不愉快そうに鼻を鳴らす。
「業務時間外まで付き合う義理ァねえんだよ」
「今時の若者みたいなこと言うね」
「うるせえ、給料発生しねえ場でへこへこするなんざ虫唾が走るわ」
「お給料発生する場でもへこへこしてなさそうじゃん」
 爆豪くんの職場の人たちが何やら目くばせしているのを感じながら、いつもの通りにそんな益体のない話をしていると。
 やがて、ファイバーさんがごほんとひとつ咳払いをし、それからこちらに向けてにっこりと満面の笑顔を向けて言った。
「苗字さん。よかったらだけど、今度うちの事務所の懇親会においでよ。ちょうど近々インターン生の歓迎会をかねてそういう会を開く予定だから」
「え?」
 突然の申し出に、私は返事もせずにただ戸惑う。真意がわからない以上どう返事をすべきか決めあぐねる私のかわりに、爆豪くんが横から、
「はァ? なんでこいつが」
 と助け船らしきものを出してくれた。
「いいじゃないか、飲み会は大人数の方が楽しいからね。うちの奥さんと子供もくるよ。そういうゆるいノリの宴会なんだ」
「はあ……」
 説明されたところでいまいちぴんと来ない話である。どうにも曖昧な返事しかできない私に、
「てめえも『はあ』じゃねえだろうがしゃきしゃき断れや!」
 と爆豪くんが吠えたてる。
「爆心地さん何キレてんすか?」
「キレてねえわ! つーかてめえの嫁と子供は身内だろうが! こいつ他人でしかねんだよ!」
「赤の他人ってわけでもないだろ。どうにも日頃から爆心地がお世話になってるみたいだし」
「なってねえ! 俺がこいつに面倒掛けられてんだよ!」
「まあ、それは否定しませんが……」
 実際私が迷惑をかけまくっている事実には覚えがありすぎるので、否定もできない。そこまではっきり「迷惑」と言われると悲しいものがあるが、そんなことは爆豪くんに言っても仕方がないだろう。爆豪くんはそういう他人の受け取り方というものへの配慮がほぼゼロのままここまでやってきた人間である。
 ともあれ、爆豪くんの対人スキルの話はひとまず本筋には関係ないので置いておくことにして、私はあらためてファイバーさんの方へと向き直った。依然にこにこしている彼の顔からは人柄の良さがにじみ出ている。きっと私を懇親会に誘ってくれたのも、何かしらの善意の発露のようなものなのだろう。
「えっと、ファイバーさん。お誘いいただきありがとうございます。ただその、本当にありがたいんですけれども、でも爆豪くんの言うとおり、私がそんな身内の会に呼んでいただく理由がないというか……」
 爆豪くんを怒らせてまで私がその懇親会に参加する理由があるとは思えないし、そもそも私と爆豪くんはただの友達だ。爆豪くんの言うとおり、言ってみれば赤の他人である。そしてまた、私たちはただの友達でしかないので、そうして互いの仕事上の関係にまであまりずかずか踏み込むのはよくないことのような気もする。
 しかしファイバーさんは相変わらずのにこにこ顔を少しも崩さないまま、恐縮する私を眺め見下ろした。
「別にそう畏まるほどのこともないけどね。身内といったって、血縁とか事務所が同じってだけが身内じゃないだろう。現場で一緒に働く以上は、苗字さん──というかヒーローではなくてもヴィラン災害の対応に不可欠な専門職の人たちだって、俺たちにとっては当たり前に身内だよ。うちの事務所は基本、そういう考え方でボスが事務所を運営してる」
 ファイバーさんの声は朗々としていて、それでいてどこか諭すような響きも持っている。今まさに言葉を掛けられている私はもちろん、すぐそばの爆豪くんや後輩くんにも語りかけるように、ファイバーさんは言葉を続ける。
「看護師や救命士だって、それこそ警察官や消防官だって──それぞれ連携して一緒に働くという意味では、間違いなく仲間であり、身内なんじゃないかな。少なくとも、俺たちはそう思っているけど、君はまた違う考え方をしているかな?」
「それは……たしかに」
 問いかけられ、私はただ頷くしかない。
 そもそも私が看護師を目指したのは、自分がヒーローになったときにただヒーローとしての能力だけでは自分が目指すべき目標を達成できないと思ったからだ。その時点で、私はすでにふたつの職業を自らの中であわせ、事態の対処に挑んでいるといえる。
 それをもっと高い視点で見れば、結局は高校時代の私の選択と、今ファイバーさんの言った言葉とでは大意は同じだろう。
 何かひとつだけの力ですべてを対処することができないから、多職種と連携して事態の鎮圧・解決を目指す。プロだからこそ、向き不向きや互いの専門性を考慮したうえで助力を乞うことを厭わない。
 それを多分、世間ではチームと呼ぶ。
「ね? これはヒーローとして事務所に所属して活動するのとは違う、別の場所でヒーローの仕事をまっとうするつもりなら常に心に留めておいた方がいいことだと思うけど、ヒーローはけして万能じゃない。まだまだ半人前の爆心地だってそうだし、あのオールマイトすら警察や医療機関──場合によってはメディアとの連携も綿密だった」
「オールマイトも──」
 そう言われてみればたしかに、オールマイトは引退したのちも頻繁に、警察の人と情報交換をしていたことを思い出す。自分自身が現場に出ることはなくなっても、オールマイトが現役時代に築き上げてきた情報網や伝手は消えることない。オールマイトが仲立ちすることによって、きっとヒーローとそうした「ヒーローではない人々」は円滑に連携をはかってきたのだろう。
「専業ヒーローと他職種はどうしたって連携が必要になる。君はその他職種でもありヒーローでもある、言ってみれば懸け橋だ。そういう意味でも、こういうときに少しでもつながりを作っておくことはのちのち役に立つし、特にまだ就職して日が浅い苗字さんにとっては見識が広がるいい機会だと思うよ」
 ぶらりと下げていた手で、私はぎゅっと握りこぶしをつくる。
 入職して半年ほど。私はずっと環境に慣れることに必死だった。とにかく一日でも早く看護師として使い物にになることを目標としていたためか、何時の間にかヒーローとしての自分という視座を見失っていた。
 私は看護師だけれど、ヒーローでもある。そのことを忘れては、なりたいものになることなんてできるはずもない。
 ファイバーさんの言葉は、図らずもそんな初歩的なことを私に改めて教えてくれた。
「……ありがとうございます、ファイバーさん。都合がつけばぜひ参加させていただきたいです」
 私の返事に、ファイバーさんは大きくしっかりと頷いた。
「うん、ぜひ参加してくれ!」
 そんなふうにして私とファイバーさんの間でうまく話がまとまったところで。
「てめえら、俺にことわりなく話しを進めてんじゃねえ……!」
 今まで無言を貫いていた爆豪くんが、ようやく言葉を発した。しかしその言葉は今更過ぎる内容で、すでに話がまとまった後にそんなことを言われてもただ困るだけだ。そういうことはせめて、私がお誘いを受けたときに言ってほしい。
 困った結果、私とファイバーさんは爆豪くんをシカトすることにした。
「そうだ、よかったら君の連絡先──」
「あ、主任──奥さんが私の連絡先知ってると思うので」
「了解! それじゃあまた詳細は追って連絡するよ」
「話を聞けや! 無視してんじゃねえ!」
「あっはっは、苗字さん、爆心地をよろしくね」
「よろしくすんな!!」
「爆心地さん声がでけえっす」
 最後はなんだかぐだぐだになってしまったけれど、とにかく話を切り上げて去っていくファイバーさんと後輩くんだった。爆豪くんはまだ去っていくふたりの後ろ姿に何やら毒づいている。無視されたのが余程面白くなかったらしい。
 そんな爆豪くんには構わず、私も彼らの後ろ姿に向かって、ぽつりと一言だけ言葉を返した。
「私がよろしくしてもらってる側ですよ」

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