3.3



 「待ってください蓮さん!」
 松葉杖をつきながら歩くアキラに、蓮は振り返ってため息をこぼした。
 「お前に蓮さんと呼ばれたくはないんだが」
 刀を手にした蓮に、アキラは小さく悲鳴をあげたが、すぐに土下座をした。
 「ありがとうございました」
 額を床にこすりつける勢いで言ったアキラに、蓮は「一体何の真似だ」と、警戒心強めて言った。
 「俺はリア国の人間であるのと同時に、貴方ならばお分りでしょうが、移民兵でもあります。移民兵はどんな扱いを受けようとも、文句の一つも言ってはなりません。下っ端で、何も言えない。どんなに酷い怪我の治療だって、正規の兵士優先。そんな自分を後先考えずに救ってくれた。今、こうしていられるのは貴方のおかげです。本当に、ありがとうございました」
 頭を下げて言ったアキラに、蓮は刀を閉まって言った。
 「お前を助けたのは姫だ、勘違いをするな」
 「確かに姫君もそうですが、この国は医学に乏しく、応急処置も分からない者が大勢いらっしゃると聞きました。そんな国の姫君に指示をだしたのは、蓮さんでしょう?」
 自慢げに言ったアキラに、蓮は大きくため息をこぼした。
 「お前、今幾つだ?」
 突拍子もない言葉だった。ぽかんとしたアキラは、どうしてそんなことを、と思ったが、自分の年齢をこたえると、蓮は膝をついた。
 「一六か……若干移民兵にしては若すぎる気がするが、まあ、いいだろう…目を閉じろ」
 慌てて目を強く閉じたアキラに、蓮はアキラの頭の上に、触れるかどうかわからない位置で右手を置いては、生温かい風が、アキラの周囲をぐるぐると回った。蓮は右手を時計回りに三回、反時計回りに五回だけ、円を描くようにゆっくりと回すと、もうどこも痛くないだろ、と言った。あんまりの出来事に、アキラは目を開けて、慌てて手足の包帯を外し、あるはずの傷跡は、もうどこにもなかった。体内に入っていたと思われる銃弾は、なぜか蓮が手にしていた。
 「一応これで完治はしたが、もう三十分は激しい運動は禁止。時間が来たら、重労働をしてもらう。労働賃金は治療費云々で、拒否権は一切なし。腹を括れ」
 はっきりと言った蓮に、アキラは意味が分からず、ただ「分かりました」としか言えなかった。











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