10万打御礼企画夢
(彼女の魅力)
そんなもん
あげたらキリがねぇ
彼女の魅力
「エース隊長!!!」
「!」
突然背中にやってきた衝撃に、寝起きだった頭が覚醒した
背中に抱きついてきたのは振り向かなくても誰か分かるため、思わず緩んだ頬をそのままに首だけ振り返る
「どうした?」
「エース隊長!あたしの魅力って何ですか!?」
「はっ?」
俺の問いかけに、背中に顔を埋めていたナナシは勢い良く顔をあげたが、その顔は悲しみに溢れており、同時に発せられた言葉に思わず素っ頓狂な声を上げてしまった
「いいから、何かないですか!?」
「ま、待て、落ち着け、一体何があった!?」
悲しい顔をしていたかと思えば目じりを吊り上げ詰め寄ってくるナナシに、その鬼気迫る勢いに圧されながらもとりあえずナナシに向き直り肩を抑えて問いかける
するとナナシはまた悲しい顔をするボソボソと話し始めた
「実はさっき食堂で…」
―--
「あたしの魅力って何だと思いますか?」
「は?いきなりなんだよ」
「いや、あたしにしかない魅力でもっとエース隊長をメロメロにさせちゃおうかな〜なんて」
「冗談もほどほどにしとけよい」
「いや、本気ですから!」
―--
「と言う会話をしてたんです」
「…」
力説するナナシに呆れながらも、俺の為にそんなことを考えてくれていたのかと思うと嬉しくなるのは惚れた弱みか、思わず頬が緩む
「それで、何とか聞き出したあたしの魅力が何だったと思います!?」
「…ん〜」
クワッと目を見開き俺の腕を掴んで声を荒げるナナシに、サッチ達がどう答えただろうと考えてみたが、パッと思いつくことも出来ず首を傾げればナナシはまた悲しそうな顔をして話しだした
―--
「無駄に元気」
「馬鹿正直」
「むしろ馬鹿」
「あほ」
「単純」
「食い意地はってる」
「盗み食い常習犯」
「悪口!?てか、最後のマルコ隊長のが一番悪意を感じるんですけどっ!」
―--
「って、皆酷くないですか!!?」
「…」
「あたしは魅力を聞いてるんですよ!!」と拳を握り締め力説するナナシに、あながち間違ってはいないその回答の数々に苦笑するしかなかった
「まぁ、あいつらも正面きって言うのが恥ずかしくてそう言っただけだろ」
「そんなことないです!あの目は本気だった!て言うか面白がってた!」
「ははっ…」
眉間に皺を寄せその時の光景を思い浮かべているのか悔しそうに唇を噛み締めるナナシに、俺もその光景が手に取るように思い浮かぶのでそれ以上フォローできずに頬をかく
「はぁ、やっぱり女はナースのお姉さまみたいに綺麗でおしとやかでないと魅力的じゃないのかなぁ」
そう呟きながら本気で項垂れるナナシを見て、少し考えた後、俺は仕方がないと小さく息を吐いてからナナシの頭に手を置いた
「俺にしてみりゃ、そう言うとこも含めてナナシの魅力だと思うけどな」
「え?」
普段、こんなこと言う柄じゃねぇけど、目の前で好きな女がこんなに落ち込んでるとなりゃ、そんな自分のちっぽけな羞恥心なんてどうだっていい
俺の言葉に目を見開いて顔を上げるナナシに、安心させるように笑みを向ける
「自信持てよ。お前はこの俺が惚れた唯一の女なんだぜ?」
言葉にすると照れくさいが、それは事実
俺にとっちゃナナシは唯一の存在で、ナースや他のどんな女よりも魅力的で…つーか、比較対象にもならねぇ、それぐらいナナシは俺にとったら絶対的で唯一の女
そんなナナシが笑ったり喜んでくれるんなら俺は望む言葉を言うし、いつも思ってるこっ恥ずかしい想いも伝える
「エース隊長…今、何て…」
目をまん丸にしたまま顔を真っ赤にさせ、やっと発した言葉がそれかよ、と思いながら、俺は笑いながらナナシの視線に合わせる様に屈んだ
「つまり、俺にとっちゃお前の存在自体が魅力的なんだよ」
「最後まで言わせんな」と言って、やっぱり最終的には照れくさくて鼻を摘まんで言えば、ナナシは摘まれた鼻を押さえながら言われた言葉の意味を理解し再び顔を真っ赤にさせた
そして勢い良く顔を上げて口を開いた
「あたしも、エース隊長の全部が魅力的過ぎて困っちゃってます!」
そう言ってナナシは照れくさそうに笑みを浮かべるので、俺はその笑みと思わぬ不意打ちの言葉に胸が締め付けられる感覚に陥った
そして考えるより先に、嬉しそうに緩められたナナシの唇へ口づけていた
「そりゃこっちの台詞だ」
唇が触れるか触れないかの位置でそう呟けば、ナナシはさらに真っ赤になりながら瞬きしていたが、俺はそれを見てさらに緩む頬をそのままにナナシを抱きしめた
お前が傍にいてくれるだけで
お前が笑ってくれるだけで
それだけで俺は幸せな気持ちになれるんだ
ナナシに出会うまでこんな気持ち知らなかったし、知ろうとも思わなかった
俺をこんな気持ちにさせたお前はすげぇんだぞ、って、さすがにそれは言葉にはできねぇから、抱きしめた腕から少しでも伝われば良いな、と思う俺は相当ナナシに溺れてるんだと改めて実感した
(お前の魅力は俺だけ知ってりゃ十分なんだよ)
end
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