10万打御礼企画夢
(キスの魔法)
ふわふわくらくら
あなたのそれはあたしを狂わせる
キスの魔法
バタバタバタ
「…行った?」
「みたいだな」
路地裏の影から少しだけ顔をのぞかせ、背中に"正義"の文字を掲げた相手が遠ざかっていくのを確認したエースの声に、あたしはホッと胸を撫で下ろした
「上陸早々海軍に見つかるとは運がねぇな」
「皆にも早く知らせないとね」
久しぶりの上陸に、あたしはエースとストライカーに乗って視察も兼ねて先に上陸してみたは良いが、上陸してすぐ海軍と鉢合わせ、久々の陸地を堪能する間もなく路地裏へと駆け込んでいた(ある意味堪能したのか?)
まだ接岸していないであろう白ひげ海賊団の皆に今の状況をすぐにでも教えたいのだが、海軍の配備数が通常より多いようで、いくら強いエースでもいちいち戦っていてはキリが無い
「こう言うときのマルコの能力って本当に便利だよね」
「だな…仕方ねぇ、落ち着くまで暫く待つか」
「そうだね。変に動いて騒ぎが大きくなるのも厄介だし」
普段は待つのが嫌いなエースも、この時ばかりはさすが、2番隊の隊長を任されているだけあり適切な判断をするので感心する
チラチラと様子を伺っているエースを見てそんなことを思いながら、先ほどから気になっている今の状況に、あたしは今まで気づかない不利をしていたがそろそろ限界で思わず口を開いてしまった
「あのさ、エース」
「ん?」
「ちょっと…近くない?」
「?」
身長差があるため、あたしを見下ろしながら首を傾げるエースにあたしは苦笑する
今あたし達がいるのは路地裏で、そこは狭くて人一人が一列で歩けるような場所だから仕方ないと言えば仕方ないのだが、あたしは背中を壁に預けた状態で目の前にはエースの筋肉質な胸板があって、あたしの頭上と顔の横についた腕で自信を支えるエース
何と言うか刺激的過ぎる位置で思わず目を逸らす
「今更恥ずかしがんなよ」
「や、別にそう言うわけじゃ…」
喉を揺らして笑いながらからかうように言うエースに、あたしは思わずムキになって顔を上げれば、エースの視線と絡んだ
エースとは最近付き合うようになって、今日は付き合って初めての上陸だったので、実はいつも以上に楽しみにしていて、手を繋いで一緒に買い物したり、何か食べたり…キスとかもするのかなって若干意識していたりして
まさか海軍に追われる羽目になるとは思ってなくて、だけど、いきなりこんな接近するとも思っていなくて、実はあたしの中では想定外なことが多すぎてパニック寸前だ
「なぁ、ナナシ」
「な、何?」
そんなことを考えて、思わず熱くなった頬に手を添えていれば、不意にいつもより少し低い声で問いかけられ、その何となく色を含んだ声色に心臓が跳ねながらも首を傾げる
すると、何を思ったのかエースが口端を吊り上げた
「んな顔すんなよ」
「え、ど、どんな顔?」
突然そんなことを指摘され、あたしは慌てて表情に力を込めると、エースは可笑しそうに喉を鳴らして笑った後、あたしの頭上にあった腕を離しその手であたしの髪の毛を滑るように触りながら耳にかけた
耳にエースの指が触れた瞬間、背筋が一瞬ゾクッとする
「エ、エース?」
今まで感じたことのない感覚に思わず肩を竦めてエースを見れば、エースは嬉しそうな笑みを作ってあたしの耳元に口を寄せた
「キスして欲しいって顔してる」
エースの唇があたしの耳に触れるか触れないかの距離で、ゆっくりと囁かれたその言葉とかかると息に、あたしは大きく目を見開き、瞬時に体が熱くなった
何も言わないあたしに、エースは耳元から離れてあたしの顔を覗き込んで来て、目が合った瞬間、ドキドキと煩い心臓が一層煩く高鳴った
「んっ…」
そしてそれが合図のように触れた唇
いつの間にかエースの腕はあたしの腰と後頭部に回っていて、初めてのエースとのキスにただただ驚きと恥ずかしさでギュッと目を瞑った
「ナナシ」
「エース…」
何度も角度を変えて落とされる口付けの合間にお互いの名前の呼べば何とも不思議な感覚で、数メートル先には海軍や他の人々だっているわけで、見つかるかもしれないドキドキがこの時は気持ちを高ぶらせる材料にしかならない
頭がふわふわして、恥ずかしかった気持ちも今では幸せな気持ちが溢れてきて
もっともっと、とエースを求めていた
「海軍…行ったかな?」
「さぁ、どうだろうな」
どれだけ口付けを交わしたのだろう
暫くして離れた唇に、触れるか触れないかの距離で会話をする
エースは言葉と同様、海軍の様子を確認することはせず、ただあたしの目を真っ直ぐ見据えている
その射ぬかれるような視線にまた体が熱くなって来る
「早く皆に知らせないと…」
「大丈夫、あいつらなら何とかするだろ」
「そうだけど…でもやっぱり知らせておいたほうがっ…」
そこまで言うと、唇に触れたエースの指
喋るなと言うことなのだろうと瞬時に思い口を閉じれば、エースは目の前で口端を吊り上げると口を開いた
「知らせに行くのは俺が満足してからだ」
そう言って一層笑みを濃くしたエースに驚く間もなく、再び降り注いだ唇の熱に、あたしはもう抗うことなく一心に受け止めた
エース以外を見えなくする
エースのキスは魔法のようだ、なんて思いながらあたしはその首に腕を回した
(海軍だー!)
(そんな話聞いてねぇぞ!)
(あいつら一体何してんだよい!)
end
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