10万打御礼企画夢
(未来へ馳せる思い)
それは来るべき未来の出来事
未来へ馳せる思い
「よっ、オヤジ!」
「オヤジさーん!おはようございます!」
朝食が終わった頃、俺とナナシはオヤジの部屋に遊びに来ていた
今日は調子が良いのか点滴などはしておらず、いつも近くにいるナース達の代わりにマルコの姿があった
「お前らもうちっと静かに入ってこねぇかい」
「マルコ隊長おはようございます!」
「何だよマルコもいたのか」
「話を聞けい!」
眉間に皺を寄せいつも通り気だるそうに怒鳴るマルコに、お前は小姑かと言いたくなるのをグッと飲み込み、オヤジの顔を見上げる
「グラララ、威勢がいいのは結構なことじゃねぇか、マルコ」
「まぁ、オヤジがそう言うなら・・・」
「でた!マルコ隊長のオヤジさん贔屓!」
「オヤジばっかりずるいよな、俺たちにも優しく接しろよ!」
「うるせぇ、気持ち悪いこと言ってんじゃねぇよい」
冗談で言ったのに本気で嫌そうに返されブーブーと不貞腐れる俺とナナシ
「グラララ、ナナシを独り占めできるようになってもまだ満足ならねぇのか、エース」
「んな!オヤジ、それは言うなって!」
「酷い!あたし一人じゃ満足できないんですね!」
「お前も悪乗りすんな!」
オヤジの言葉に焦れば、ナナシは冗談っぽく泣き真似をするのでそのデコを弾いてやれば、「エース隊長のデコピンは殺人級に痛いんでやめてください!」と半べそかいて本気で抗議された
不貞腐れたナナシにケラケラ笑いながら、俺はオヤジの前に胡坐を掻いて座りその顔を見上げる
「オヤジ、俺たちに出来ることなら何でも言ってくれよな!」
「そうですよ!オヤジさんのためなら何だってしますからね!」
俺の言葉にナナシも隣に座り、オヤジの顔を見上げながらウンウン頷きながら満面の笑みを浮かべ力強く言い切れば、オヤジは片眉を挙げグラララと盛大に笑うとその立派な髭に手を添えた
「ほぉ、何でもとはでかくでたなぁ」
「だって、オヤジさんのためなら本当になんでも出来ちゃう気がするんです!」
「俺もだ!だから、遠慮なく言ってくれよ」
「お前ら、何張り合ってんだよい」
俺の方が先に言い出した事なのになぜだかナナシの方が得意げになって言っているのを見て少しだけムキになれば、マルコに突っ込まれてしまった
オヤジに関してはいくらナナシだって負けたくはねぇと思うのは不思議だが仕方ない
オヤジの返答を期待の眼差しで待っていれば、オヤジは何かを思いついたのかニヤリと口端を吊り上げると口を開いた
「そろそろ初孫に会いてぇなぁ」
「は?」
「孫?」
「オヤジ!?」
何かを企むようなその笑みと、耳に届いたその言葉にその場にいた全員が目を丸め、思わず声を上げてしまった
しかしオヤジはいたって普通に俺の目を真っ直ぐ見据えると、再び笑みを濃くし口を開いた
「何でも聞いてやると息巻いたのはどこのどいつだぁ?」
「な、お、オヤジ!!」
俺はオヤジの言わんとしていることが瞬時に分かり、途端に自分の顔に熱が帯び、叫びながら立ち上がっていた
隣に座っていたナナシは驚いたように目を見開き俺を見上げていたが、俺はその顔を一瞬だけ見るとさらに恥ずかしくなって、居たたまれなくなりオヤジの部屋を飛び出した
「エース隊長!?」
「グララララ」
「・・・はぁ」
愉快そうなオヤジの笑い声がその時は少しだけ憎らしく感じた
「オヤジの野郎・・・ぜってぇ面白がってやがる」
俺は自室へ戻るとベッドの上に胡坐を掻き、腕を組みながら先ほどのオヤジの笑みを思い返し、眉間に皺が寄った
孫が見たいというのは分かったが、あれは絶対主語に「お前達の」と言う言葉が入っていたことはオヤジが俺の目を見て楽しそうに言ったのですぐにピンと来たが、俺とナナシはまだそんな関係を持ったことが無い
いや、俺としては大歓迎なのだが如何せん、ナナシとは一緒にいる時間が長すぎて、一人の女としての前に仲間として、家族として過ごしていただけに中々現状から一歩が踏み出せないでいる
それに、自分の受け継いでいる血のこともあり、何となくそう言う行為をするのは気が引けるというか変な罪悪感があったりもする
「・・・」
「エース隊長?」
「のわっ!」
目を瞑り思わず嫌な考えを巡らせていたが、突然聞こえた声に目を見開くと、目の前に立っていたのはナナシで、俺は思わず声をあげ後ずさってしまった
壁に張り付いた俺にナナシは「何驚いてるんですか?」と不審気な表情をしてベッドに上って来て俺の正面に座った
「や、ちょっと考え事を・・・」
「考え事?あぁ、さっきオヤジさんが言ってたことですか?」
「!」
お前との一線越えた関係を考えていた、何て口が裂けてもいえない俺だったが、ナナシがあまりにもあっさりとその話を振ってきたので今度は声を上げることも出来ずナナシを凝視してしまった
「初孫って言ってましたけど、それはさすがに難しいですよねー」
「あ、あぁ・・・そうだな」
「誰も結婚する予定はないだろうし」
眉間に皺を寄せん〜と考え込むナナシに、俺は視線が合わせられずドギマギしながら答える
どうやらこの様子だとナナシは自分のことだとは思っていないらしく、そのことにはホッとしながらも少しは気づけよ、と言う矛盾した想いが渦巻いた
「でも、オヤジさんの気持ち少し分かりますよ。子供って可愛いですもんね」
「へ?」
何とか心を落ち着け、再び胡坐をかけば、そう言って微笑むナナシに俺の心臓はドクリと高鳴った
ま、まさか・・・ナナシは子供が欲しいのか?!
そんなことを思いながらゴクリと生唾を飲みナナシの続きの言葉を待っていれば、ナナシは照れくさそうに俺の方を見ると、笑みを濃くして口を開いた
「だって、エース隊長とルフィの子供の時の姿、すっごく可愛かったですもん」
「・・・俺と、ルフィの子供の時?」
「はい!こぉんなに背が低くて、手も足も小さくて、寝てる姿もあどけないし、すっごくすっごく可愛かったです」
「・・・」
ニコニコと嬉しそうにその時の様子を浮かべているのか、手振り身振りでその時の様子を伝えてくるナナシに俺はガックリと項垂れた
「あれ?エース隊長、どうしたんですか?」
そんな俺を見てナナシは話をやめると、だらしない笑みのまま俺の顔を覗きこんできたので、俺は何だか腹が立ってきて、少しからかってやろうと口端を吊り上げた
「お前、分かってねぇだろ」
「何がですか?」
「オヤジの真意」
「オヤジさんの真意?」
俺は釣りあがった口端を戻すと、顔を上げて真っ直ぐと真剣な表情を作って首を傾げるナナシを見た
ナナシは相変わらずキョトンとして俺の言葉を待っているようで、俺はゆっくりと口を開いた
「オヤジは、俺とナナシの子供の顔が見たいって言ってんだぜ?」
努めて平静を装ってそう言えば、ナナシは目を瞬かせ「へ?」と間抜けた声を出した後、俺の言葉を理解したのか瞬時に顔を真っ赤に染めた
「え、え、あの・・・えぇ!!!」
「やっぱ気づいてなかったか」
「だだだ、だって、そんな・・・あたしとエース隊長の子供って・・・」
呆れたように言えば、ナナシは想像したのか更に真っ赤になった顔を両手で抑えながら俺を見た
「どどど、どうしましょう!」
「どうしましょうって・・・どうしよもねぇだろ」
「そ、そうですよね、どうしよもないですよね」
涙目になって混乱するナナシに冷静に答えては見るが、実際は俺の心臓もドキドキと煩く鳴り響いている
想いが通じ合ってから前以上に一緒にいて、それなりに恋人らしいこともしてきて、部屋に二人でいる時なんかは襲ってやりてぇと思ったことも何度もあったがいつも踏みとどまっていて、ナナシとそう言った雰囲気になったこともそう言う話もしたことがなかったため、ナナシがどう思っている俺としては知るチャンスでもあった
ナナシに限ってないとは思うが、もし俺の血のことであえてその話に触れていないのだとしたら・・・そう考えると怖いが確かめずにはいられなかった
だから、俺は目の前で真っ赤になって慌てふためくナナシを試してみたくて、視線を外しながら意を決して言ってみた
「ま、まぁ・・・いつかは見せてやりてぇけどな、俺とナナシの子供を」
熱くなった頬を掻きながらそう言って、どんな返答が返ってくるのか半分期待、半分不安でナナシの返答を待ってみた
「…」
しかし一向に返事は返ってこず、突然こんなことを言ってナナシのことだ、真っ赤になって思考回路が停止して何も言えずにいるのだろうか、それともやっぱり俺との子供なんて欲しくないと言えず困っているのだろうか
そう思ったら一気に不安になって、今回は返事を聞かずにおこう、と自分に言い聞かせながらナナシへと視線を戻した
「ナナシ?」
「・・・わっ!はい!!」
案の定、目をまん丸に見開き真っ赤な顔をして停止していたナナシの前で手をヒラヒラさせてその名を呼べば、ビクッと肩を揺らして動き出したナナシに思わず苦笑してしまった
大丈夫、まだまだこれから先いくらでも聞くチャンスはある
困らせたいわけじゃねぇ
多少なりとも傷ついた自分を戒めながらそう言い聞かせ、ナナシを落ち着かせるために今のは気にするなと伝えようとした時だった
「あ、あたしもエース隊長との子供をオヤジさんに見せてあげたいです!」
「なっ・・・」
俺が言葉を発するよりも先に、叫ぶように言い切ったナナシの言葉に俺はただただ驚くしかなかった
両手を握り締め、恥ずかしかったのか顔を真っ赤に染め、だけど俺の目を真っ直ぐと見据るナナシに、俺は暫く呆然として何も言うことが出来なかった
「そ、れに・・・あたしもエース隊長との子供・・・欲しいです」
「!」
「す、すぐじゃなくてもいいんですけどね!」と言って慌てたように付け足すナナシに、俺は更に驚いたと同時に胸の内からこみ上げて来る想いにグッと口を噤んだ
目の前で真っ赤になりあたふたと視線を泳がせるナナシを見て、その胸の内からこみ上げる愛しいと言う想い
あぁ、そうだ、こいつはいつだって俺の望む言葉をくれて安心を与えてくれる
そんなナナシに対し、少しでも不安に思った自分が心底馬鹿らしくなって、まだまだ俺は成長できてねぇなと苦笑してから、ナナシの腕を掴み自分の方へと引き寄せた
「俺も、ナナシとの子供が欲しい」
「ほ、本当ですか?!」
「あぁ、本当だ」
ギュッとナナシを抱きしめながら肯定すれば、ナナシは俺の胸に擦りよりながら「嬉しいです」と言って笑った
それを聞いたらもう本当にナナシが愛しくて堪らなくて、ナナシを抱きたいって言う気持ちよりも、手放したくないって気持ちが大きくて、こうして自分の腕にスッポリ収まっていることに酷く安心した
「エース隊長似のカッコいい男の子が良いなぁ」
「俺はナナシ似の可愛い女の子が良い」
この調子じゃまだまだ先のことなんだろうな、と思いながらもお互いに呟く未来への想いに笑い合えば、今はそれだけで十分だと思えるのはなぜなのか
それはきっと、どんなことがあってもなくて
ナナシが隣にいるだけで幸せと思えるからなんだろうと結論に至ったのだった
(と言うわけで、孫は当分無理そうだよい)
(そうか・・・)
((オヤジ、そんなに期待してたのかよい))
end
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