10万打御礼企画夢
(傍にいること)


机に向かって難しい顔をする彼の大きな背を見ながら思う



傍にいること







「マルコー」

「なんだよい」

無遠慮にマルコのベッドでゴロゴロしながら、間延びした声でその名を呼べば、マルコはその表情と同じく難しい声を返してくれた


視線は机の上の海図で、こちらを見る気配はない


その様子を見てあたしは小さく息を吐いて、マルコの枕を抱き締めながらベッドの上に座り壁に背を預けて口を開く


「あたしが傍にいて邪魔じゃない?」

「は?」

その唐突な問いかけに、今まで海図に向けていた視線を勢い良くこちらに向け、訝しげな表情をするマルコに、やっとこっち向いたな、と嬉しくなる気持ちと、邪魔して悪いなって気持ちとで思わず苦笑してしまった

「だって、あたしマルコのこと大好きで、いっつも一緒にいたいから、どんな時でも傍について回るでしょ?」

「…」

あたしの言葉にマルコは一瞬目を丸めた後、その光景を思い出しているのか視線を斜め上へ向けた

実際、マルコが上陸準備で指示を出してるときも、戦闘で一番に飛び出すときも、偵察の時も、ご飯の時も、見張りの時も、あたしは常にマルコの傍にいる

特に何をするでもなく、ただ、とにかくマルコの傍にいたいからの行動なわけで、決してストーカーとかではない


「今だってマルコは忙しそうにしてるのに、あたしはゴロゴロしてるし…」

「手伝う意思はねぇのかよい」

「恐れ多いです」

マルコが難しい顔するものなんて、あたしでは一瞬で思考停止する自信がある

あたしの返答にマルコは呆れたようにため息をつくと、今まで視線だけこちらに向けていたのを、椅子ごとこちらに向けて腕を組んで口を開いた


「で、結局何が言いたいんだよい?」

「つまりは、あたしは無駄にマルコの傍にいて良いのかってことだよ」

無駄にとか言ってる自分もどうかと思ったが、あたしはマルコの枕を力強く抱き締め、意を決して聞いてみた

マルコの傍にはいたいけど、マルコが迷惑だと思うことはしたくない

「…」

「しょ、正直にどうぞ」

あたしの問いかけに、マルコは暫く何も言わず相変わらず気だるそうな目をしてこちらを見ていたので、あたしは答えを促す意味でそういえば、マルコは一度軽く目を伏せた


「足りねぇぐらいだよい」

「え、何?」


ポツリ呟いたマルコの声が聞き取れなくて、思わず前のめりになって聞き返せば、マルコは顔をあげ椅子から立ち上がった


ギシ


急に立ち上がったマルコにどうしたんだろうとその動きを目で追えば、マルコはあたしの目の前にあぐらをかいて座った

近くなった距離と、絡んだ視線に胸が高鳴る

「マルっ…」



「ずっと傍にいろって言ってんだよい」



あたしの声を遮るように、そう言ってあたしの頬に大きな手を添えて笑うマルコに、あたしは大きく目を見開いた


「傍にいても…邪魔じゃない?」


「あぁ。まぁ、最初の頃は邪魔と言うか…気が散ったよい」

「えっ!?」


思わぬマルコの言葉にあたしはショックで声をあげれば、マルコはおかしそうに笑うとその手をあたしの背に回し、抱き締めていた枕を奪ってベッドの下に放り投げた

そして背に回っていたマルコの手に力が入れば、あたしは呆気なくマルコの腕の中に納まって、突然の出来事に、だけどマルコの匂いに包まれているのが無性に嬉しくてその背に腕を回すと、マルコがあたしを抱き締める腕に力を込めあたしの肩に顎を置いた


「今じゃ、ナナシが傍にいねぇと落ち着かねぇよい」


照れ臭そうに、だけどどこか嬉しそうにも聞こえるその声に、あたしの胸一杯に広がる幸せな気持ち

嬉しくて幸せで、この気持ちをどう表現したら良いかわからなくて


「そっか・・・じゃあ、これからもずっとマルコの一番傍にいさせてね」


そう言って、あたしの持てる全ての力を使って抱き締めれば、マルコは「当たり前だよい」と言う優しい声と共に優しく抱き締め返してくれた














(じゃあ、今日から一緒に寝ようよ!)
(それはダメだよい)
(何で!!?)
(男の事情だよい・・・)
(?)

end


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