10万打御礼企画夢
(笑う門には福来る)


大好きな人の前で

ずっと笑っていたいのに


笑う門には福来る


「んん〜」

「・・・何、ルフィ?」

午前中の授業が終わり、お昼の準備をするため教科書を片付けていると、いつの間に現れたのか、既にいなくなったあたしの前の席の椅子に座り珍しく何かを考え込むような顔で見てくるルフィに問いかける

するとルフィは「ん〜」とか「あ〜」とか変な唸り声をして首をかしげながら、その問いに答える様子は無く、人の顔を見て悩むとはどう言うことかと眉間に皺を込めた

「ルフィ、何か言いたいことがあるなら素直に言って」

「お前って笑うよな?」

「は?」

やっぱりあたしの言葉など聞いていないようで、逆に問われてしまったあたしは素っ頓狂な声を上げて首を傾げる

「そうだよな、馬鹿みてぇに笑ってるとこしか見たことねぇもんな」

「ちょっと、何気に失礼なことサラッと言わないでよ」

「誰が馬鹿みたいだ!」と言ってルフィの頭をコツけば、ルフィはそれすらも気にする様子もなく顎に手を当てて考えるように首を傾ける

さっきから一体何なのだと思いながら、ルフィのことだからどうせくだらないことなんだろうと思い、ナミとお昼を共にすべく弁当を持って立ち上がった


「ルフィ!」


立ち上がってすぐ、教室の入り口付近から聞こえるその聞き慣れた声に、あたしは思わず肩を揺らしてしまった

そして、ゆっくりとそちらに視線を移し軽く目を見開く


「お、エース!」

「エース先輩・・・」

すると、同時に呼ばれたルフィが笑顔でその声の主、エース先輩に向かって両手をブンブン振り出した

エース先輩はルフィの2個上のお兄さんで、ルフィが体操着やらお弁当やらを良く忘れるのでお兄さんであるエース先輩がこのクラスに顔を出すことはほぼ日課となっている

おかげでルフィとは元々仲の良かったあたしも今ではすっかりエース先輩と顔なじみで、バスケ部のキャプテンをしているエース先輩の大会にも何度か応援に行ったことがあるぐらいだ

「よっ、ナナシ!」

「あ、こんにちは、エース先輩」

ルフィを見つけてすぐ、エース先輩は遠慮なく教室に入ってくるとルフィにお弁当を渡し(今日は弁当を忘れたのか)、少し話した後あたしの方へ振り返り、ルフィと同じように太陽みたいな笑顔を向けて軽く手を上げた

エース先輩の登場から軽く放心状態だったあたしは、慌てて頭を下げてそう言えば、エース先輩は「相変わらず仰々しいよな」と言って笑うので、あたしは視線を彷徨わせ顔に力が入るのが分かった


「じゃ、じゃあ、あたしお弁当食べてきますので!」

「ん?あぁ・・・」

あたしは早口でそう言うと、足早に教室を飛び出し隣のクラスであるナミの元へと一目散に向かった



「あー!あたしの馬鹿馬鹿馬鹿!」

「まぁたやらかしたの?」

屋上にて

お弁当を広げながら、あたしは先ほどの出来事をものすごく後悔しながら叫べば、隣で同じように弁当を広げていたナミが呆れたように呟いた

「だって、やっぱり好きな人の前で緊張しないなんて無理だよ!」

「あんたねー、それ言い始めてどんだけ経つのよ」

「・・・軽く半年ぐらいかな」

「はぁ・・・」

ため息をつくナミを横目に、それでもあたしはどうしたって想い人のエース先輩の前じゃ緊張してうまく話せないし表情に力が篭ってしまう

好きだって自覚したのは半年前のバスケの大会の時で、一番活躍して一番楽しそうにバスケをする先輩がいつもより輝いて見えて、それまでも大好きな先輩だったけど、それとはまた違う恋する好きって気持ちだと自覚した

それからのあたしはおかしくて、エース先輩の前だと緊張してうまく喋れないし顔も見れない、さっきみたいにすぐ逃げちゃうし、エース先輩もきっと不快に想っているだろう

「だけどどうしたって無理なのー!」

「もういっその事、告白しちゃえば?」

「何でそうなるの?!」

「だって、今のままじゃいつかエース先輩から声もかけられなくなるかもしれないし、それならいっそ告白して玉砕すればスッキリするじゃない!」

「玉砕前提ですか!」

「そんな態度取ってれば希望は薄いと思うけど」

我が友ながらズッパリと切り捨ててくれるナミに、あたしは涙しながらも全くの正論で返す言葉も見つからず弁当の卵焼きを食べた(涙でしょっぱい)


そんなこんなで傷心したまま昼休みを終え教室に戻れば当たり前だけどエース先輩はもういなくて、「次当たるからノート見せてくれ!」とルフィも普段どおりに戻っていた



放課後

「ナミ!今日もお付き合いお願いしますっ!」

授業が終わってすぐ、あたしは再びナミの元をたずね両手を合わせてニッコリ笑っておねだりをすれば、ナミは「また?」と言う顔をして小さく息を吐いた

「エース先輩の練習風景を見るぐらい一人で行ったら?」

「そんな冷たいこと言わないでよ〜!いつかは絶対一人で行けるようにするから!まだ心の準備が整ってないの、ね、お願い!」

「あんたの心の準備期間は長いのよ」

会ったら緊張して話せなくなるのに、エース先輩と出逢った当時から行っている練習の見学には時間があれば足を運んでいるあたしは相当エース先輩に惚れているんだと思う

エース先輩は学校中の女の子から人気があるから、練習風景を見るときもたくさんの黄色い声が上がっているので、その中に一人で入ろうと言うのは無謀すぎるので、ナミに協力してもらって一緒に見学に行っていたのだけど、最近はのりが悪い

「でも、だって、一人じゃ怖いし」

「だったら行かなきゃいいでしょ」

「だけど、エース先輩のバスケ姿すごいカッコいいんだもん」

「・・・」

哀願するようにナミにお願いをしてみたが、ナミはあたしを哀れむような目で見た後、一度盛大なため息をついてあたしの肩に手を置いた

「そろそろ、本気で向き合うときじゃないの?」

「え?」

そして困ったように笑ってそう呟いた後、ナミはあたしの隣をするりと抜けて「じゃ、また明日」と言って教室を出て行ってしまい、その様子に唖然としていたあたしは、ナミを止める術もなくしばらくその場に突っ立っていた

だけど、不意に我に返ってナミの言葉を思い返し、そうだよね、あたしもそろそろ逃げずにこの恋心と向き合わなきゃなと反省して、体育館へと足を向けた


キャー

「・・・」

黄色い歓声が届く中、意気込んできたにも関わらず、あたしは体育館の扉の前で立ちすくんでいた

ボールをつく音と黄色い歓声と、時折聞こえるエース先輩の指示を出す声が外まで聞こえてきて、あたしはそれだけでドキドキと高鳴る鼓動に足が竦んでしまった


「ん〜・・・やっぱ無理!」

そこであたしは座り込み、中に入ることを断念した

やっぱり無理だ、あの黄色い歓声の中に入るのも怖いし、何より先輩の声を聞いただけでこんなにドキドキするんだから、きっと本人を目の前にしたらどうにかなってしまうんじゃないかと想像するだけで恐ろしい

ナミが一緒の時はこんなにもドキドキすることはなかったと言うのに・・・


「あれ?ナナシちゃんじゃないの?」

「!!」

自分の意気地のなさに若干落ち込んでいると、不意に呼ばれた名前に顔を上げれば、そこにはサッチ先輩がこちらを見て笑っていた

普段のリーゼント姿とは違い、頭にバンドをしてオールバックにしている姿はもう随分見慣れたものだ

「こんなとこで何やってんの?」

「あ、えっと・・・見学?」

「見学って・・・ここだと見えないっしょ?」

「そうなんですけど・・・見えないほうが良いといいますか・・・」

「?」

エース先輩を直視できなくて声だけ聞いてました、何て口が裂けても言えなくてモゴモゴと口を濁らせていると、始めは不思議そうにその様子を見ていたサッチ先輩だったが、すぐに何かに気づいたように表情を明るくさせると、途端にその口端を吊り上げた

「あー、そう言うこと」

「は?」

「オッケ、任せろ」

「え、ちょ、何の話・・・」

「エース!ちょっとこっち来いよ!」

「ええ?!」

何か悪戯を考えたとでも言うような笑みを浮かべ、その口から出た人物の名にあたしはただ驚くしかなく、体育館の中か「何だー」と言いながら顔を覗かせたのは本当に本人で、あたしはさらに驚いて固まってしまった

「お、ナナシじゃねぇか!今日は見に来てくんねぇのかと思ってたぜ」

「・・・」

「おーい、ナナシ?」

「うわっ、はい!」

エース先輩の登場に放心状態でいれば、顔を覗き込むようにして現れたエース先輩の顔にあたしは一歩後ずさりながら大声を上げてしまった

するとエース先輩は少しだけ不機嫌そうな顔をしたが、すぐに笑顔を向けてくれた

「エース、マルコには休憩してるって言っとくからな」

「おう、サンキュ!」

「え、え、ちょ、サッチ先輩?!」

「ごゆっくり〜」と言って体育館の中へ戻っていくサッチ先輩に、状況を理解できないあたしがパニックを起こしていれば、隣に感じる熱気を含んだ気配に視線を向ける

「・・・!」

「あ〜暑ぃな」

視線の先には白いユニフォームの首元を引っ張りながら、そう言って汗を拭うエース先輩がいて、その距離は少し動いたら腕が触れるんじゃないかと思うほどで、あたしの緊張は更に高まった

どうしようどうしよう、と思うのに全くどうしたら良いのかわからなくて、ドキドキと高鳴る心臓は相変わらずで、あたしはエース先輩を直視できなくて俯いてギュッと目を瞑った

「なぁ、ナナシ」

「はい・・・」

ポツリ呟いたエース先輩の声にも、あたしは大げさなぐらい反応してしまって小さく返事をするのがやっとで、ギュッと握り締めた両手のひらは汗でグッショリ



「最近、俺の前で笑わねぇよな」

「!」

その言葉に、あたしは思わず目を見開きエース先輩の方へ視線を向けてしまった


「なぁ、何で笑ってくんねぇの?」

「あ、の・・・それは・・・」

視線の先のエース先輩の表情は悲しそうに笑っていて、あたしはどう答えていいか分からず視線を彷徨わせ口を濁す

やっぱりエース先輩もあたしの態度がおかしいことに気づいていたんだ、と改めて思い知って罪悪感に苛まれながらも、この恋心が気づかれない言い訳をしなければと考えれば考えるほどにいい案は浮かんでこない


「えっと・・・笑ってると思いますけど」

「いや、笑ってねぇな」

やっと搾り出した言葉もエース先輩にあっさり切り捨てられ、真っ直ぐといつに無く真剣なその表情に「な、何でそんな言い切れるんですか?」と、やっぱりどもりながら返せば、エース先輩は真剣な表情をそのままに口を開いた


「だってお前、笑うと可愛いじゃん」


その瞬間、あたしは目をこれでもかって言うぐらい見開くと同時に体中が熱くなった

だけど、エース先輩のその真剣な瞳から目を離すことが出来なくて、あたしはその目を見据えながら恥ずかしいやら嬉しいやらで泣きそうになるのを必死に堪えた

「俺、ナナシの笑った顔見るとすげー頑張れるんだよな」

「え?」

暫くして、エース先輩の表情が和らぎ微笑みながら言われた言葉に、あたしはまた驚く

すると、どこか照れくさそうに頬をかきながらエース先輩は視線を彷徨わせた後、再びあたしの目を真っ直ぐと見据え口を開いた


「できればナナシの笑った顔、俺が独り占めしてぇんだけど」

「その、好きだし・・・」と続け、やっぱり照れくさそうにこちらを見据えるエース先輩にあたしの思考回路はショート寸前で、何だこれは夢なのか?!何て脳内パニックを起こして熱くなる頬を両手で押さえながら、目の前のエース先輩の表情を見たらこれは夢じゃないんだって再認識することができて

「あ、あたしもエース先輩の笑った顔、独り占めしたいです!」

思わず叫ぶようにそう言えば、エース先輩は一瞬キョトンとした後、見る見るうちにその表情を満面の笑みに変えガッツポーズをした

「あー良かった!」

「ふふっ・・・」

そんな様子を見ていたら、何だか一気に緊張が解けて思わず声を出して笑えば、エース先輩はあたしの腕を引いた

「やっぱ笑った顔が一番好きだ!」

あたしの背に腕を回したエース先輩に、あまりに突然のことで驚きやら恥ずかしいやら戸惑っていたけど、そう言って力強く抱きしめられ、あたしは嬉しくなってその少し汗臭いユニフォームに顔を埋めた







(ナナシが笑わねぇって家でうるさかったからなー、エース)
(一言好きだっていやぁ収まった話しだったのにな)

end


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