10万打御礼企画夢
(言葉で愛して)


「ゾロってさー、あたしのこと好き?」

「は?」

あたしの言葉に今までダンベルを持って上下していた腕を止め、視線を向けてきたゾロにあたしはニッコリ笑顔を返した



言葉で愛して



「もういい!もうゾロなんて知らない!」

憤る気持ちをそのままに、勢いよくキッチンの扉を開けて叫ぶように言えば、その場にいた全員の視線がこちらに注がれた


「おーおー、随分ご立腹じゃねぇか」

「なぁに?ゾロと喧嘩でもしたの?」

机に部品を広げて何やら改造をしていたウソップと、紅茶を飲んで新聞を見ていたナミが呆れたように声をかけてきたが、その時のあたしはとにかく怒り心頭で、荒ぶる気持ちを表現するようにドスドスとキッチンの中へ入りナミの隣に座った

「もー聞いてよ!ゾロったら酷いんだよ!」

「はいはい、聞いてあげるからちょっと落ち着きなさい」

新聞を畳みながらそう言うナミに、あたしは先ほどのゾロとのやり取りを伝えた









ゾロに「あたしのことが好きか」と聞いて数秒、一向に反応を見せずにこちらを凝視しているので、あたしは声をかけてみた

「ちょっと、ゾロ、聞いてる?」

「・・・あ、あぁ」


あたしの声に我に返ったゾロは、それだけ言って再びダンベルの上下を開始して質問に全く答える気が無いようだったのであたしは少しムッとした


「あぁ・・・じゃなくて、質問の答えは?」

「・・・」

「ちょっと、黙ってないで何とか言ってよ」

「・・・」

「無視ですか!」

あたしがいくら叫んでもゾロは無言を決め込み、ダンベルを上下し続ける

そんなゾロの態度にいくらなんでも怒りがこみ上げてきて、あたしはその場から立ち上がりゾロの前に仁王立ちしてさっきからガシャガシャ煩いダンベルを持っているゾロの太い腕を掴んだ


「あたしのこと好きかって聞いてるんだけど!」


そして、あたしが腕を掴んだことによりダンベルは止まり、それを確認してからあたしはゾロの目を真っ直ぐと見据えて叫ぶように言った


「・・・んなもん、言わなくても分かんだろ」


だけど、ゾロは眉間に力を込めると視線を逸らし、そう言ってあたしの腕を外すとあたしに背を向けて緑頭をかき乱した

そんなゾロの返答と態度にあたしは何だかものすごく悲しくなって、気づいたら近くにあった鉛球(ゾロの鍛錬用)を手に取り、ゾロに向かったブン投げていた



ゴインッ



「うごっ!」

「言わなきゃ分かんないこともあるんじゃボケー!!」




投げた鉛玉は見事ゾロの頭にクリーンヒットし、倒れ行くゾロを横目にあたしはキッチンへと走った













「と、言うわけなの!ね、酷いでしょ!」


「おめぇがなっ!」

「ゾロの冥福を祈るわ」

バンッとテーブルを両手で叩いて先ほどの出来事を説明すれば、ウソップは「恐ろしい女だな!」と言うし、ナミは手を合わせているし、酷いのはゾロなのに何であたしが悪いみたいになってるの!

「でも、どうしてナナシは突然そんなことを聞いたの?」

そんなあたし達の会話を部屋の隅で本を読みながら聞いていたらしいロビンが、本から視線を外しそんなことを聞いてきた

ウソップもナミも「そう言えば」と言った顔でこちらを見てきたので、あたしは多少気恥ずかしくなりながら視線を彷徨わせた

「普段はそんなこと一切気にしてないのに」

「うん、まぁ、何となく・・・」

「だいたい、ゾロはそう言う奴だって分かってんじゃねぇか」

「そうよ、ゾロの口から「好きだ」とか「愛してる」何て言葉が出てくる方が恐ろしいわよ」

「いや、そうなんだけどね・・・」

ナミやウソップの言い分はごもっともで、普段から口数少ないし一緒にいても鍛錬か昼寝かぐらいで、本当にあたしたちは付き合ってるのかと思うぐらい甘い思いはしたことがないのだけど、夢を追いかけて直向に強さを求めるゾロが好きなわけだから、それも別に自分の中では納得してるし不満に思ったことは無い



「だけど、やっぱりあたしだって不安に思うよ」

それでも時々、不安に思うことがある
別にゾロにとってあたしは特別必要な存在じゃなくて、いてもいなくてもいいんじゃないかって

今日のことも、何となくゾロの鍛錬姿をボーっといつものように見てたら、そんな不安な気持ちがほんのちょっとだけ出てきて思わず口を付いて出て、別に答えは期待してなかったけど、ゾロの煮え切らない態度が一層自分自身を意固地にしてしまって現在の有様

いっそ、照れながら「好きじゃねぇよ」とか言われたほうがましだったかも


「ま、そうね。あんたの気持ちは分からなくないわ」

「どうも」

「でもなー、実際ゾロに好きって言わせるとなると難しいだろうな」

「天変地異でも起きないかしら」

それって奇跡並みの何かが起きないと無理って事ですか、とでも聞きたくなるようなことを言うロビンに苦笑を浮かべながら、あたしは小さくため息を落とした

別に普段から好きって言ってもらいたいわけじゃないんだけど、こっちが聞いた時ぐらいいえないもんなのかねー・・・あぁ、無理だなぁ、ゾロは(自己完結)




「ナナシ、てめぇよくもやってくれたな!」

そんな思いに耽っていれば、突然キッチンが勢いよく開いたかと思うとそこに現れたのはまさに今思っていた人物で、その頭には大きなたんこぶが出来ていた

「お、生きてたか、ゾロ!」

「あれで死んだら一生悔やむ!」

「普通は死ぬわよ」

ウソップに笑われ目くじらを立てるゾロに、今は何となく恥ずかしいし、思ってないことまで怒り任せに言ってしまいそうだからゾロとは関わりたくないあたしは一度だけ視線を向けてすぐにそっぽを向いてやった

するとゾロはそんなあたしに気づいたのか、ズカズカと足音を立ててあたしの前までやってくると、テーブルを挟んだ先の椅子にドカッと座って睨むように見据えてきた

「お前は俺を殺す気か」

「あんな鉛玉で死ぬ毬藻じゃないでしょ」

「毬藻ってなんだ!見ろこのこぶを!」

「似合ってるじゃない」

「やかましいわっ!」

怒鳴るゾロにあたしはそっぽを向いて適当に答えれば、ナミ達は呆れたように顔を見合わせゾロは盛大なため息をついた


「何怒ってんだよ」

「別に怒ってないし」

「怒ってんじゃねぇかよ」

「怒ってないって・・・」

しつこく聞いてくるゾロに、あたしは思わず怒鳴りながら振り返れば、その目に捉えたゾロの顔は相変わらず眉間の皺を深く刻んだままではあったが、酷く悲しそうに歪んでいてあたしは思わず言葉に詰まった


「お、今日はキッチンが賑やかだなー」

そのゾロの表情に動揺していれば、今度はゆっくりとキッチンの扉が開き、中に入ってきたのはこの部屋の主とも呼べるサンジだった

片手に食材入りの籠を持ってタバコをふかしながらやってきたサンジは、「ナミさんに、ロビンちゃんに、ナナシちゃんまでー」と言って鼻の下を伸ばして近づいてきた

「んだ、毬藻野郎もいやがったのか」

「あぁ、いちゃ悪ぃかよ」

「おーい、サンジくん、僕もいますよー」

コソッと自身の存在をアピールするウソップを無視し相変わらず睨み合う二人に、あたしはゾロから視線を外し何となく罪悪感に苛まれ両手を握り締める

何でゾロがあんな傷ついた顔するのよ、あたしの方が傷ついたんだから!と自分に言い聞かせながら先ほどのことを思い出し、再びこみ上げてくる怒りに眉間に力が篭った


「ナナシちゃん、こんな筋肉毬藻は放っておいて、一緒にお茶でもどうですか?」

そんなことを考えていれば、いつの間にか隣に座っていたサンジに肩を抱き寄せられ、驚きながらもいつものことだと苦笑しながら「そうだね」と頷いた

そうだ、こんなときはお茶でも飲んで心を落ち着けて、それから色々考えようと思った時だった




「おい、その手を今すぐどけろ」


突然、低く威嚇するような声が聞こえたと思えばサンジの腕を掴み睨みつけるゾロ

「あぁ?何で俺がてめぇに指図されなきゃいけねぇんだよ」

「うるせぇ、とにかくどけろ」

普段、サンジがどんなにスキンシップを取ってきても何の反応も見せないゾロが、今日に限っては違ったようで、かなり不機嫌そうな表情をしてサンジを睨んでいる


「はっ・・・自分の気持ちもハッキリいえねぇ奴に彼氏づらされたくねぇな」

「んなっ!」

「!」

普段とは違うゾロに驚いてれば、そう言ってあたしの肩から腕を離したサンジの言葉に更に目を丸めた

え、ちょ、何でそのこと知ってんの!?

「てめぇ・・・なんでそのことを」

「偶然聞こえたんだよ、ナナシちゃんの必死な声が」

「・・・っ」

た、確かにあの時は必死で声を荒げていたから、サンジが船外にいたとしたら聞こえていたとしても可笑しくは無いが、そうだとしたら相当恥ずかしい

そう思ったら段々と熱くなる顔


「必死なナナシちゃんの想いを無下にしたお前なんかに彼氏面されたくねぇって言ってんだよ!」

「くっ・・・」

ズビシとゾロを指差し、勝ち誇った笑みを浮かべ言い切るサンジに、ゾロはとうとう口をつぐんでしまった

そして、サンジはゾロの動きが止まったのを確認すると、あたしの目を見据えて口を開いた


「ナナシちゃん、自分の思いも伝えられないようなどーしよもねぇ毬藻なんかやめなよ。そしてその傷心した心を俺が癒しっ・・・!」




ダンッ





「!」



そして呟きだしたサンジの言葉を遮るように、船内にテーブルを叩く音が響いた





「ゾロ?」

その音に驚き、サンジの言葉に圧倒されていたあたしが恐る恐る音の方へ視線を戻せば、そこには俯き片手の拳を机に乗せている状態のゾロがいた

声をかけてみても反応は無く、一体どうしたのかと再びその名を呼ぼうとした時だった



「・・・だ」

「え?」

その声は随分小さくて、あたしの位置からは全く聞き取れず思わず聞き返してしまった


ゾロにしては珍しいそのか細い声に多少心配しながらも、未だに俯いたままのゾロにあたしはどうしたものかと困惑する












「だから、好きだって言ってんだろ!」













しかし、勢いよく顔を上げたゾロとその口から出た言葉に、あたしは先程までの心配と困惑は全て吹っ飛ぶぐらい驚いて、思わず


「は?」


と言う、自分でも間抜けすぎる言葉が口から出た





「だぁ!くそっ!!」


そんなあたしを見たゾロは、そう言って荒々しく立ち上がると、来たときと同じように盛大な足音を立ててキッチンから出て行ってしまった







「ナナシ、良かったじゃない」

「・・・っ」

ゾロが部屋を出て数秒後、静寂を保っていた船内に響いたのはナミの声で、放心状態だったあたしはその声の方へ振り向き、その言葉に泣きそうになってしまった


うん、これは夢なんかじゃない、ゾロがあたしのことを好きだって言ってくれたんだ!

真っ赤な顔で、だけどちゃんとハッキリ聞こえた


「あたし、ゾロのとこに行ってくる!」

「はいはい、いってらっしゃい」

そう再認識した瞬間、無性にゾロに会いたくなって、さっきまでの怒りもどこかへ吹き飛び、あたしは椅子から立ち上がるとニヤニヤ笑うナミ達を尻目に、足早にキッチンを飛び出した


言葉にすることがそんなに大事だとは思っていなかったけど、実際言葉にされると何だかこっちまで愛しいって気持ちが溢れてくる



だからあたしも精一杯の想いを込めて伝えるよ





「ゾロー!あたしも大好きだよ!」

「あー!もう分かった!」






だからゾロも、時々は言葉にして伝えてね














(サンジ、おい、大丈夫かー)
(ダメね、相当ショックみたい)
(馬鹿ねーあの二人の間に付け入ろうなんて絶対無理なのよ)

(・・・ナナシちゃん)


(サンジー飯まだか?)
(黙れクソゴム!)

end


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