幸せに溶ける



微睡みに身を任せることのなんと気持ちのよいことか。


いつ眠ってしまったのだろう。
いつ目が覚めたのだろう。

そんなことを動かない頭で考える。
答えは出ない。
こうしているうちにもう一度眠りに落ちてしまうだろう、と思う。

背後で人の動く気配がした。
青木が起きたのだろう。

昨日は青木と久々の晩餐だったのだが、酒を出すと青木は2、3杯でダウンしてしまった。いつものことだからそれからは1人で思う存分飲んだ。


水でも飲むのだろうかと思ったが青木は動かない。
背中にちりちりと感じるのは青木の視線だろうか。

毛布を勝手に使っているのが気に障ったのかもしれない。
怒られたくないなァなんて思っていると名前を呼ばれた。

突然だったので返事ができなかった。

それでも青木は何度も何度も呼んでくる。
もしかしたら僕を呼んでいるわけではなくただ名前を読んでいるだけなのかもしれない。


なんだか子守唄みたいだ、と眠りに落ちかけていると

「龍一」

心臓が飛び出すかと思った。
なぜか涙が出そうになった。

青木はおやすみ、と残してもぞもぞと動き、やがて音が止むと規則正しい寝息が聞こえてきた。
それを見計らってがばっと起きる。


「あ、ああぁ…青木さァん」


おやすみなんて、おやすみなんて…。

「目が冴えちゃって寝られないですよう!」


(そして一晩中青木の背中を見つめていたのだった)




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