その瞳で撃ち殺してみろ
青木さん青木さん、と彼の嬉しげな声。
振り向くと水が頬にかかった。
水鉄砲を持って喜んでいる益田を力の限り睨んだ。
「そう睨まんでくださいよぉ」
「今ものすごく目で人を殺せたらと思うよ」
頬から水が滴り落ちスーツにしみを作っていく。
すぐに乾くだろうか。一度着替えに戻るべきか。
「それって口説き文句ですか青木さん」
「何の話です」
「糸屋の娘は目で殺すってね」
呆れて何も言えなかった。彼は図星ですかとはしゃいでいる。
そんな益田にかまわず歩き出す。濡れた服を着替えないといけない。
「無視なんて酷いなァ青木さん。寄っていけばいいじゃないですか、服貸しますよ」
指差した先には薔薇十字探偵社。
視線を益田に戻すと、ね、と微笑んでいる。
もし僕を部屋に入れるためにこんなことしたのなら彼は馬鹿だ。
そんな彼に引っ掛かる僕はもっと馬鹿だ。
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糸屋の娘は目で殺すはもしかしたら彼らの時代なかったのかもしれない。