ついったまとめ



▽お題


▽君が笑うと俺も嬉しいから
「何にやにやしてんだよおっさん。きもちわるいぞ」
「えっにやにやなんてしてないわよ」
鏡見てみろよ、と差し出された手鏡を覗けばたしかにそこには目を細め口角を上げた中年の姿。
「あら」「本当だったろ?」
そう言って青年が嬉しそうに笑うのを見ることがどれほど俺に喜びを与えるか、本人は知らない。


▽寂しさを知った日
宿屋で1人。
窓の外に眺めたり何度も引き出しを開けたりと無意味な行動を繰り返す。
時折人の声が遠くから届くたびに彼が帰ってきたのかと反応するが愛しい黒髪は未だ見えない。
少しでも早く会えるようにと宿の扉を開けたとき目に飛び込んだのは美しい微笑み。
「おじさま、寂しいのね」そうか、これが


▽『 てのひら 微笑む どうしようもない 』
静かに時は経つ。
気づけば長い付き合いだな、なんて脈絡もないことを考える。
「もうどうしようもないみたいなんよね」
暗い空気にしないようにとの気遣いからのものだろうが、その微笑みはあまりに弱々しい。
つないだ手はこんなに力強いというのに。


▽宙ぶらりんのキモチと、右手。
翌日まで自由行動。どうせだからと街をぶらぶらしてみる。
夕日が綺麗だ。穏やかな気分になったところに聞き覚えのある声が届いた。
そちらを向くと見知ったチョンマゲ。
「おっさ…」
声をかけようと上げた右手が動きを止める。
彼は見覚えのない女性と会話していた。その楽しげな笑顔がちくりと刺さった。



「おっさんのクレープは本当にうまいな。普通と違うというか」
「やっぱ隠し味がね〜」
「隠し味?何か入れてんのか」
「愛情」
「きもい」
「きっ…ひどい!!ユーリ君のマネしただけじゃない!!」
「泣くなよ悪かったって。言い直す。おっさん、気色悪い」
「青年…」



寒い。
目覚めて真っ先に飛び込んだ寝顔に思わず頬がほころぶ。
のも束の間、よく見れば目覚めた原因は彼が毛布を独占していることだった。
「おっさん…」呟いてみるが起きそうにない。
なんて幸せそうな寝顔だろう。外を見ると間もなく夜が明けるようだ。
こんな日々がずっと続けばいいと思った。


▽肌寒い夜に町中でばったり出会った時の2人
昼の暖かさに油断したのが悪かった。
思いがけない肌寒さと格闘しながら夜の街を歩く。
さっさと風呂で暖まろうと思っていると目前に物憂げに川を見つめる青年をとらえた。
「こんな寒いなか何してんの」宿は程近いのに。
「おっさんを待ってたんだよ」そう囁いて湛えた微笑みは妙に艶っぽく見えた。


▽嫉妬なんて俺らしくない
鋭いとげがささったような。炎が暗く燻ぶるような。妙な違和感を覚えた。
なんでもない。青年が知らない女性と楽しげに会話を弾ませているだけだ。それだけなのに。
「嫉妬ね」美しいクリティア人が囁く。
嫉妬。対象に固執していなければ抱かないであろう感情。
俺にもまだ残っていたのかと自嘲してみた。



「おっさん、邪魔なんだけど」
ご飯手伝うよ、なんて珍しいことを言うから台所に共に立たせたら、役に立つどころか動きの妨げになって邪魔なことこの上ない。
おっさんは今にも泣きそうな表情で見つめてくる。
そんな顔しても無駄だ。
「そっちでクレープでも作ってろ」後でおいしくいただいてやるから。







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