貴方はずるい



辞めて以来初めて会った元上司は、何だか変わっていた。


この人はこんなに上司に意見できる人だったか?

僕に素直に感謝の意を表すような人だったか?

違和感が浮かぶ。


箱根山でこの人を見限ったときのことはよく覚えている。あのときは本当にどうしようもない人だったのに。
もし当時からこんな人だったなら何か違っていただろうか、とか。
…違う。
この変化はあの事件がもたらしたものだった。


共に働いていたときは怒られたり冷めた目で見られたことこそあれ、褒められたことなどない。
彼は優等生タイプが好きなのだ。僕とは正反対だ。
青木が何だか羨ましくなった。


辞めなかったらよかったかなァ、なんて考えてすぐにそんな馬鹿な、と打ち消す。
僕は探偵助手で彼は警部補、これでいいのだ。
今はたぶん、自信の喪失で昔が懐かしくなっているだけなのだろう。


(…ずるいなァ)


そう思ったら足を蹴ってやりたくなった。



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寂しい益田君でした。
消化不良なのでこの2人の話また書きたい。





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