心から伝えたい言葉


「ゴンってスゲーよな」
「え?何が?」
「オレなんかと付き合ってくれてる所が」


夕ご飯を食べ終わって、お腹いっぱいで動けず、二人してまったりと各々雑誌を読んだりゲームをしたりしながらゴロゴロしてたら、キルアが唐突にそんなことを言い出して。
オレはパラパラ適当に捲っていた雑誌を閉じて、すぐ隣で同じように寝そべりながら携帯ゲームをしているキルアに視線を向ける。
当のキルアは、ゲーム画面に夢中のようだけど。
キルアはまるで、いつもみたいに、何でもない他愛無い話でもするかのように、淡々と話を続けた。


「だってさ、オレ殺し屋だぜ?こんな風に呑気にゲームとかしちゃってるけど、人を殺したことがあるんだよ」
「…うん」
「そんな奴と誰が関わりたいって思う?一緒に居たいとか、ましてや付き合いたいとか、ありえねーだろ」
「…それは、」
「けど、ゴンはオレと一緒に居てくれる。なんでだ?」


キルアはオレに言い返す隙も与えないくらい、次々にそんなことを言って、時々「あ、死んだ」とかゲームのことを呟いてる。
なんでだ?と聞かれてすぐにパッと答えを言うことも出来ないし、そんなこと聞かれても一緒に居たいから居るんだっていうことしか思い付かないし、わりと大事な話をしてるんだからいい加減ゲームから離れてよなんて不満も頭に浮かんできて、唇を尖らせた。

だけど分かる。
キルアはきっと、真っ直ぐオレに向き合うのが怖いと思ってるんだ。
だからゲームを手離さない。

分かる、分かるけど…


「時々思うんだよ、オレは、ゴンと一緒に居ても良いのかなって」
「!」
「オレなんかに、そんな資格あんのかなって」


ここまで言われたら、さすがに腹立つ。

オレは体の内側が爆発したみたいにカッと熱くなるのを感じて、衝動のままに、両手でキルアの頬っぺたをベチンと叩いた。
けっこうな力で、思いっきり。


「何言ってんのさ、バカッ!!」


なんて、大声で怒鳴りながら。

思いっきりビンタされたうえ至近距離で怒鳴られたキルアは、今までピコピコ弄っていたゲームをその場に落としてしまう。
あまりに突然すぎて、オレの攻撃を避けることも防ぐことも出来ず、ビックリしたのかキョトンと目を丸くさせてオレを見つめた。
オレはキルアの頬っぺたを両手で挟み込んだまま、フンと鼻息を荒くさせる。

はぁ、全くもう。
やっと、こっちを見てくれた。
オレは気持ちを落ち着かせようと、一度大きく深呼吸して、それからまた、口を開く。


「オレとキルアが一緒に居るのに、資格なんているの?そんなこと誰が決めたの?神様?」
「や、神様って」
「オレはオレが一緒に居たいと思う人と一緒に居るよ。それは誰が何と言おうと変わらないし譲れない。キルアがオレと一緒に居たくないっていうなら別だけど」
「そんなのありえねーよっ!」
「でも、キルアはオレに同じようなこと言ったよ?」
「っ、」


言い返すオレに、息を詰まらせるキルア。
ちょっとだけ意地悪な言い方をしちゃったのは、『オレなんかが…』なんて自虐をするように言ったキルアに、仕返ししたい気持ちがあったからかもしれない。
オレはフ、と表情を緩めて、更に言葉を続けた。


「確かに、キルアが殺し屋だったってことも、人を殺したことがあるってことも、ちゃんと分かってる」
「…ん」
「でもオレは、そのことでたくさん悩んで苦しんで、自分の生き方を見つけようともがいてるキルアを、一番近くで支えたいって思う」
「…っ!」
「そんなキルアのことが、好きなんだ」


そう言って、自分のおでこをキルアのおでこにコツンと重ね合わせて、へにゃりと情けなく微笑みかける。
するとキルアは、一瞬だけ泣きそうになるのを堪えるみたいに、くしゃりと顔を歪ませて。
小鳥が啄ばむみたいにチュッと唇にキスをすると、オレの頭をグイッと引き寄せて、力強く抱き締めてきた。
まるで小さな子どもが、怖がってぬいぐるみに抱き着くみたいな、弱々しくも懸命な力に、オレは堪らなくなって、キルアに負けないくらいの力で、目一杯抱き締め返す。





「なぁ、ゴン」
「うん?」
「オレ、今まで何度も何度も心の中で呟いてたけど、照れくさくって言えなかったことがあるんだ」
「ん、なぁに?」








「お前にあえて、本当によかった」




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