イルミル
2017/03/17 22:16


「…あのさぁイル兄」
「んー?」
「抱き付いてくるのは良いんだけど、さりげなく腹揉んでくるのやめてくんない?」
「おお!オレとしたことがうっかり」


何がうっかりだ、わざとらしいんだよ。
オレは布団の中で後ろから抱き付いてくるイル兄を、チラリと振り向いて軽く睨み付けた。
相変わらず何を考えているのか分からない、心の内が全く読めてこない目をしている。
この目にジッと見つめられると何も言えなくなるというか、強制的に黙らされる感じになるというか、とにかく逆らえないんだよなぁ。
オレはプイッと顔を向き直ると、イル兄にされるがままになる。
それに気付いたのか否か、イル兄は尚もオレの腹を揉みしだきながら、無機質な声音で呟いてきた。


「本当にミルは抱き心地が良いよね」
「どうせデブだからだろ」
「気にしてるの?」
「いや?今更食生活変えるつもりもないし、太っててもオレにはちゃんと嫁(二次元)が居るからね」
「ママー。ミルが病気になったよー。頭の」
「うるさいなぁもう!」


全力で茶化してくるイル兄にキッと牙を向くけれど、効果はいまひとつみたいだ。
イル兄に勝てるなんてハナから思ってないし、勝とうとも思わないけれど。

なんて思っていたら、


「太ってても何でも、ミルは可愛いよ」


と、突然の爆弾発言を投下する兄上様。
に、思わず心臓をドキリと跳ねさせるオレ。

って、なにドキドキしてんだよ!
近親相姦なんて無い無い!しかも男同士だし!


「なーに言ってんの、キルの方が可愛いくせに」


ドキドキと煩くなりかける心臓の音を聞き流すみたいに、オレは半分冗談っぽく笑いながら、そんな言葉を返して。
するとイル兄は、元々大きな目をほんの少し見開かせる。

え、あれ、なんだ?
あんまり見たこと無い顔だけど、ビックリした顔なのか?
ほんと感情読みにくいなこの人!


「キルはキル、ミルはミルでしょ」
「そ、そうかな」
「だいたいミルはオレに似てるんだから、可愛いに決まってる」
「ア、アンタ結局それが言いたかっただけだろ!」


何なんだよもう、ドキドキして損した気分だ。
イル兄の言うことにいちいち振り回されてる。
今日はもう金輪際イル兄に構わないで寝るぞ、とオレはガッチリとイル兄に背を向け、体を丸めて眠る体制に入った。

そんなオレを見て、イル兄は一言。


「そのままのミルキが可愛いよ、大好き」
「〜っ!」


そんな甘い言葉を、耳元で囁いてくるのだ。

ああああもうっ、だから近親相姦は無いって!!





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