サヨナラのあとに(竹くく)


さよならは言いたくないから

もし、また何処かで逢えたら…





なんて、変に強がったことを後悔しているのは、その台詞を吐いてから一刻も経ってないんだから、自分のことながら呆れて言葉も出ない。

でも、あの時は無理に強がってでもそうしていなければ、ずっと我慢していた気持ちが溢れ出てしまいそうで仕方なかったんだ。


出逢ってから六年、友人ではない特別な感情を抱き始めたのがいつからなんて覚えてないけど、気付いた時には既に遅く、はっちゃんは俺の心の中に住みついていた。

彼の笑顔が好きだった、その笑顔が自分へと向けられる度に、どれだけ胸を高鳴らせただろう。


「兵助」と、彼の呼ぶ自分の名前は、まるで特別な響きを持つように俺の鼓膜を揺らした。



ねぇ…

最後くらい素直になって、ありのままの想いをぶつけてみてもよかったのかな。

つい先刻別れたばかりの相手にこんなこと言ってはいけないかもしれないけど、会いたいよ…

今すぐ、はっちゃんに会いたいよ


「はっちゃん…」




そう呟いた直後だった、大好きなあの声が聞こえてきたのは。




「…呼んだか?兵助」



その声に肩がビクッと震える。

「な…んで」

そう呟きながら振り返れば、そこには会いたいと思っていたはっちゃんの姿があり、堪えていたモノが溢れ出すように、頬にツーっと滴が流れ落ちた。


「はっちゃん…、ど…うして」


少し掠れた声で問いかければ、目に映るはっちゃんは苦笑いを浮かべながらも、俺のほうを真っ直ぐに見る。


「ごめんな、本当は最後まで言うつもりはなかったんだけど、やっぱり我慢なんて無理だ。…兵助、おまえのことがずっと好きだった」

「…っ!?」


驚きに目を見開いた俺に、はっちゃんは俺が大好きなニカッとした笑みを浮かべ言った。



「兵助の気持ち、聞かせてください」



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