君が足りません(竹くく)


い組の長期実習が終わってやっと学園に帰り、井戸で顔を洗ってからはっちゃんの所にでも行こうと思っていたのに、後からきた勘ちゃんが教えてくれたのは、ろ組もい組と入れ替わるように実習に出たということだった。

はっちゃん、そんなこと一言も言ってなかったんだけど。

いったいどれだけ会えないと思ってるんだ!!
と、そんなこと言っても授業なんだから仕方ないとはわかっている。

けれど…



「勘ちゃん、やばいのだ…」

ポツリと小さく呟くと、「えっ、怪我でもしてた!?」と慌てた様子で勘ちゃんが振り向いた。


「やばいよ、勘ちゃん…」

「ちょっと兵助どうしたの?怪我じゃないなら体調でも悪い?」


それに小さく首を振れば、勘ちゃんは「兵助?」と顔を覗きながら聞いてきた。

普段なら絶対にこんなことは言わないけれど、この時は実習で疲れていて、やっとはっちゃんに会えると思ったのに会えなくて、まるでお豆腐を我慢させられているような危機的な状態だったからか、思わず思ったことをそのまま言葉にしていた。


「はっちゃん不足なんだけど…」




君が足りません

(後日、顔を真っ赤にするおれの前で、勘ちゃんがろ組の三人にこの話をするのは、まだ知らないお話)

 

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