甘い一時(鉢くく)
合同授業で組み手をすればお互いに譲ることはないし、試験ではいつも首位争い。
意見が食い違い、言い合いをすることも少なくはない。
競い合うばかりの俺たちだから、本当は仲が悪いんじゃないかなんて疑われたりもするが、そう思いたい奴にはそう思わせとけばいい。
むしろ、その方が都合がよかったりする訳だ。
まさかわたしと兵助が恋仲だとは思わないだろうからな。
「…三郎」
そんな事を考えながら、布団に散らばる兵助の髪をすいていれば、眠たそうな目でこちらを見る兵助が居た。
「どうしたんだ、兵助」
「いや、その…、こうして三郎と居ることが出来て幸せだなって思ったりしたんだ」
わたしの方に手を伸ばし、そこに居ることを確認するかのように頬に触れながらそう言う兵助に、思わず赤面しそうになるが、ここはぐっと堪え、同じように頬へ手を伸ばし輪郭をなぞれば、兵助はくすぐったそうに目を細めた。
「何を恥ずかしいこと言っているんだ」
「おれは本当にそう思ったから言っただけだよ」
そう言いながら甘い笑みを浮かべた兵助は、身体をわたしの方に寄せると、頬に触れていたわたしの手に自らの手を重ねてゆっくりと瞼をおろした。
素直じゃない普段とは違い、二人でいる時の兵助は偶に酔ってしまったかのように甘えてくる。
それは、わたしだけが知る兵助の姿…
スーッと寝息をたて始めた兵助に優越感を感じながら笑みを浮かべながら、自らもそっと目を閉じた。
甘い一時_
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