君の全てを知っていたくて(竹→久)




休み時間、先生に頼まれた教材を片付けてから教室へ戻る途中、渡り廊下からふと視線を横に向ければ、少し遠くに同じ藍色の忍装束を来たメンバーがちらほらと見えた。

は組は長期実習に行っていると聞いたから、い組か…と考えていれば、無意識のうちに視線をキョロキョロとさせ、一人の人物を探していた。


そして目的の人物を見つけた途端、俺は声をあげようとしたが声になる寸前、呼ぼうとした名前は喉で詰まって出てこなかった。


探していた兵助はいつも一緒の勘右衛門の他、い組の数名のメンバーで固まっており、そのメンバーに向けている顔は俺が一度も見たことのない表情。

兵助とはよく一緒にいるし、クラスメイトを除けば俺が一番兵助と一緒に居るんじゃないかと思ってたんだけど…


「まだまだ…かな」


小さく呟いた直後、突然ポンっと置かれた手に慌てて振り返れば、そこにはニーッと笑みを浮かべる三郎が居た。


「おまえな、突然驚くだろ…」
「いや、『俺の知らない兵助が…』と遠い目をしている竹谷少年が面白いなと観察してた」
「悪趣味。第一、その俺の心情を勝手に捏造するのはやめろ」
「図星でも?」
「……」
「ま、気にすることないと思うけどな(あんなの、クラスメイトの前で仮面被ってるだけの顔だろ)」


そう言うなり三郎は「急がないと次の授業遅れるぞ」と歩き始めたので、俺も急いでそれを追った。



君の全てを知っていたくて
(去り際に目が合ったと思ったのは、多分気のせいだよな)


 

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