仕事の内容




伊作さんから出た女装役とは一体…と問い質すこと数十分、なかなか話そうとしない仙蔵さんと勘ちゃんに痺れを切らし、隣で様子を見守っていた伊作さんに聞けばあっさりと教えてくれた。


「女装役のことだよね?兵助が女装してライバルのホストクラブに偵察に行くんだよ」

「女装してホストクラブに偵察!?」


ホストクラブでバイトというだけでもだいぶ譲歩したと思ったけど、女装で他の店に偵察なんて。

キッと仙蔵さんと勘ちゃんの方を睨めば、ギクリとしつつも二人して苦笑い浮かべてるし、伊作さんに至っては「あれ、言っちゃまずかった?」なんて呟いているのだ。


「詳しく説明してくれますよね?」


仙蔵さんの方に詰め寄りながら問い掛ければ、渋々という感じではあったが、頷くと説明を始めた。


「最近、隣駅の街にこの店とオーナーが同じホストクラブが出来たのだが、オーナーいわくその店舗の売上がだいぶ高いらしい」

「はぁ…」

「この店だって売上が悪い訳ではないし、むしろいい方だと言っていい。しかしだ、私が店長を務めるこの店が負けるのは嫌だ。それにあの店には私の幼なじみが居てな、奴には負ける訳にはいかないのだよ」


話しているうちに段々と力の籠もってくる仙蔵さん、その迫力にちょっとだけ後ずさろうとした所で、バンっと大きな音を立ててテーブルを叩いた仙蔵さんに、勘ちゃん、伊作さんと共に肩をビクッと揺らす。


「兵助っ!!」

「はい」

「おまえは今日からうちの店のボーイ兼偵察担当だ、存分に奴のいる店を徹底的に調査するんだ!!わかったな」

「はいっ」


迫力に押されるがまま返事をしてしまい、それに満足そうに頷いた仙蔵さんは伊作さんに何かを話し掛ける。

大きくため息を吐いてから元凶とも言える勘ちゃんの方に視線を向ければ、勘ちゃんは顔の前で両手を合わせながら謝っているし。
おれはそんな勘ちゃんに向けて、口パクで一言要求を突きつけた。



(学食の豆腐定食一週間分ね)


 

[back]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -