第7話〈一緒に。〉
上空30メートルほどの高さを、竜に乗って飛んでいた。
春といっても真夜中。更に氷の竜の背中の空気はとても冷たく、頬が張り裂けそうだが、ナナシはとにかく爽快な気分だった。
アズミにもらったアウターを脱ぐと、身をかがめて凍えるサナエに被せてやった。
「見て。内側のポケットに盗聴器仕込まれてたよ。さすがだなぁ、街長さんってば……流石にもう聞こえないだろうな」
随分と愉快そうなナナシの言葉だったが、サナエの耳には全く入らなかった。
「戻ってよ……あたし、旅なんてまっぴら……」
ナナシの方は、その、風にも掻き消されそうな震えたサナエの声も聞き逃さなかった。
「あんな『クソみてぇな街』に戻るんですか?」
ナナシのその問いに、サナエは答えなかった。
「いいじゃないですか。この子を故郷に返すまで、ちょっと旅に付き合ってください。私もここ1週間、1人で寂しかったんだ」
サナエの無言にも構わず、ナナシはとにかく明るく努める。
そして腕を伸ばし、機嫌良さそうに飛行するガニャンのあご辺りを優しく撫でながら、誰に言ったのか、続けてつぶやいた。
「ねえ、どのくらい時間がかかるか分からないけど、よろしくね」
【第1章 終】
[しおりを挟む]