南沢先輩って正直、女好きだと思う。
だっていつも女の子と一緒に歩いてるし、恋人は一ヶ月に一回くらいのペースで変わってるっていう噂だし、それにあの外見だし。女好きというか逆に女が寄ってくるんだとも思う。なにせ南沢先輩はモテモテだ。

そんな先輩に告白されたって、結構嬉しいことなんだと思う。返事はまだしてないけど。クラスの友達に相談してみても、みんな答えは同じ。「付き合っちゃえば?」わたしは別に南沢先輩のことなんとも思わないけど、まあみんながそう言うんだったらいいかなって気もしてきた。今夜電話してみよう。



「もしもし」
「ん、あれ、名前?」
「名前です」

名乗ってもないのに声だけでわかってしまったようだ。
ていうか南沢先輩なんかいつもと違う。電話だからか?あ、それともいきなり電話してびっくりしてるのかな。それは別にいいか。

「あの、聞いていいですか」
「え?ああ」
「先輩って女好きですよね」
「・・・うん?」

変な質問をしてみた。すると先輩はなんだか上の空だったらしく、質問を華麗に聞き流されていた。まあいいや、どうでもいいことだし。とりあえず本題に入ってみよう。

「前の告白の件ですが」
「あ・・・おう」

コホン、という咳払いが聞こえた。そんなに緊張しなくても。そういえばわたしも告白なんてされたことなかったから、こういうときにどうしていいのかあまりわからない。告白なんて少女漫画でちらっと目にしたくらいだな。そういえば。それにさえ興味を示さなかったわたしがまさかその主人公になろうとは思いもしなかった。

「オーケイということで」

無駄に英語の発音がよくなってしまった。
するとなんだか電話の先の南沢先輩の声が一時停止した。ん?

「ま、まじで?」
「まじです」
「・・・すっげ嬉しい」

南沢先輩が嬉しそうにしてるとわたしも嬉しいです。
なんていうそこらでよく見かける心にもない台詞を吐いてみた。すると「うぎゃー」とか意味不明な声が聞こえた。・・・今の南沢先輩は喜びを隠せない、という言葉が似合うと思う。ぜひ隠してください。

「なあ名前、俺のこと好き?」
「はい、南沢先輩がいちばんすきです」
「・・・いちばんとか嬉しい」

電話口からでもわかるくらい南沢先輩は喜んでいるようだった。
・・・いちばん好きです、先輩。

にばんめに好きなのは、いま隣で眠っている彼だけど。

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