部活の休憩時間中、ふと以前に鬼道の姉さんに手料理を振舞ってもらった事を思い出した。だからそのお礼を言おうとしただけだったのに、何故か鬼道に思い切り顔面を殴られた。そしてその後鬼道は颯爽と走り去ってしまったのだ。
どうして俺がこんな目に。駆けつけてくれた源田に問うてみたけど、苦い顔をされるだけで何も答えは返ってこなかった。それにしても頬が痛い。これは明日の朝に鏡を見たら顔が壮大に腫れているパターンだな。

それにしても、俺が鬼道の姉さんに手料理を作ってもらうことになったのには、色々と理由とか成り行きがあった。部活終わりに鬼道の忘れ物を届けに行くと、あろうことか鬼道は不在。俺たちよりも早く部活を終えて一番に下校したのに、まだ家に帰っていないなんて鬼道は意外と不良なやつだ。なんて一人で考えていると、俺を出迎えてくれた鬼道の姉さんが「折角だから晩御飯食べて行かない?」なんて言ってくれたのだ。

断るのも悪い気がするから、鬼道の姉さんが用意してくれた飯を食うと、もうそれはそれは美味い。鬼道が部活でちらりと姉の話をしたときに鬼道はシスコンだなあなんて感じたのだが、鬼道が姉さんを大好きな理由も理解できる。男を掴むにはまず胃袋から、みたいな話をどこかで聞いたことがあるが、それは本当なんだと思う。

しかしその事について礼を言おうとした俺は何か間違いがあったのだろうか。あんなに怒り狂っている鬼道を今まで見たことがない。しかし頬が痛い。一向に痛みはひかないし、どういうことなんだよ。保健室へと俺を運んでくれた源田に再び問うてみたが、源田は首をかしげて苦笑いをしやがった。ちくしょう源田め。覚えてろよ。

怒りの矛先があきらかに間違っていると気づくのはこの10分後、鬼道が再び俺の前に現れたときだった。

20120405
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