休日は好きじゃない。 何故なら姉の買い物に半ば無理矢理、付き合わされるからだ。最初の頃はよかった。買うものも少なく、行くところもそう遠くない、むしろ近場だった。 それがなんだこれは。姉貴がバイトを始めるようになってからは容赦なく、なにもかも買いまくるようになった。そのおかげで俺の立場も変わってきちまった。初めの頃は服の感想を言うだけだったのが、今じゃあ荷物持ちだ。両手に花ならまだしも、両手に荷物ってなんだよこれ。 「姉貴ー」 「んー?」 「そろそろ帰ろうぜー」 「んー」 返事は一応返ってくるものの、買い物中の姉貴が俺の話をまともに聞くはずもなく。 そう言っているそばから、更に新しい服を手に取りやがった。つーかそんな色の服、家に何着もあるだろうが。また買うのかよ。 「よし!」 「ん」 姉貴のこの声は、今から試着するという合図だ。 俺が上着やら鞄やらを慣れた手つきで姉貴から預かると、姉貴は手に持った服を持って試着室へと滑り込んだ。こっからが俺の唯一の安らげる時間だ。 姉貴があれこれ試着している間に、俺は試着室の傍らにおいてある椅子に座り、最近買った新型の音楽プレーヤーで今流行の曲を聴く。それが最近の一番好きな時間だったりもする。・・・地味とか言うな。 そんな快適な時間を過ごしているにも関わらず、たまに邪魔が入る事がある。店員が俺に話しかけてくるのだ。「彼氏さんですか?」やら「彼女さん、お綺麗ですね」とか。なんていうか、お前らは俺らのことを恋人以外に見ることができねえのかっつうんだよ。姉貴と俺の年がひとつしか離れていないのもあるだろうが。・・・まあ、姉貴が綺麗ってのは否定しねえけどよ。 「こら明王!」 「あ、・・・んだよ姉貴」 右のイヤホンから流れる音が急に姉貴の声に変わったと思えば、姉貴がそのイヤホンを掴み、すげえ形相で俺を睨みつけていた。 「あんたね、さっきから呼んでるのに聞こえないの?」 「あー・・・悪ぃ悪ぃ」 「で・・・この服どうよ」 姉貴がどや顔で着ている服を見せびらかしてくる。この服はさっきの家に何着もあるような色の服だ。あーでも似合うな。服よりも姉貴の顔に目が行く・・・じゃねえ。 「・・・似合う」 「そう?じゃあ買う」 簡単に服を買ってしまう姉貴の悪い癖のことなんて俺の頭にはなくて、姉貴との買い物をしているうちに気づいた俺の変な気持ちのことで頭がいっぱいだった。次の休日はどうしようか。 20120405 ×
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