「好きだから、僕と付き合って」
「いーや」

即答。こうなることはわかっていたけど、それにしても返事が速すぎる。それに、なにを隠そうこれで4回目の告白だ。普通なら告白してふられたらなんとなく気まずい関係になってしまうのかもしれないけど、僕となまえちゃんはちょっと違った。

僕がなまえちゃんに初めて告白したのは、もうかれこれ2年前になる。こういうとずいぶん前のような気がするけど、僕はそんなに昔のことだとは思わない。つい昨日のことのようにも思えるほどだ。なにせ、衝撃的すぎたからなあ。



「なまえちゃん、好きです」
「・・・え」
「付き合ってください」

好きな人に告白するなんて人生で初めてだったから、めちゃくちゃ緊張して、やっと言えたことば。でも、「ごめんね」それを簡単に受け流されたときはその場に崩れそうになった。

「わたし、めんどくさいことは嫌いなの」
「・・・そっか」
「でも、太陽くんのことは好きだよ」
「え?・・・え、」

なんだろう、付き合うのは拒否されたけど、それでもなまえちゃんは僕のことが好きだって?なんか辻褄が合ってないような気がする。矛盾ともいう。「好きって、・・・誰を」「だから、太陽くんだってば」僕がやっとの思いで言った言葉をさらりと言い放ってしまうなまえちゃんは、とても涼しい顔をしていた。

「付き合うなんてめんどうなことは嫌だけど」
「・・・う、うん」
「好き同士ならいいよ」

なまえちゃんの言った言葉を、僕はあまり理解していなかった。



というわけで、僕たちは付き合ってはいないけれど、「好き同士」というのは継続中だ。デートもしたし手も繋いだ。それにキスだって、その先も。何が違うのかよくわからないけど、恋人になるのは嫌なんだそうだ。

とりあえず、乙女心っていうのは難しいものなんだなあと勝手にそれのせいにしてみたけど、僕は未だになまえちゃんの考えがよくわからない。「付き合ってるの?」とたびたび問われてるけど、それに対していつも「エッチはするよ」と答え、周囲の人を唖然とさせてしまうなまえちゃん。事実だけど、女の子でそれはちょっと、ね。まあなまえちゃんだからいいんだけど。

「太陽くん、何考えてるの」
「なまえちゃんのことだよ」
「・・・へえ」

ところでなまえちゃんは他の女の子と違って、どこか棘がある。綺麗な花には棘があるなんて言うけど、まさにそれだ。とても人懐こくて男の子からも女の子からも人気なんだけど、ある程度距離をおく。だから傍からみるとたまに、友達がいないんじゃないかな?なんて思うこともある。

「なんで付き合うのは嫌なの?」
「めんどくさいからかな」
「なにが」
「束縛されるとこ」

こんなやりとりも何回交わしたかわからない。ほんとうにわがままなひとだけど、僕はなまえちゃんのことが好きだ。・・・追われるのは疲れる、でも追うのは楽しい。なんて誰かが言ってたような気もする。そう考えてみると僕はほんとうになまえちゃんのペースに乗せられっぱなしだと思う。

「なまえちゃんのそういうとこ、嫌いじゃないよ」
「え、ちょっと太陽く・・・」

だからたまには僕だって男なんだ、っていうとこをなまえちゃんに気づかせてやるんだ。・・・かまってくれないと寂しくて死んじゃうような、めんどくさい生き物なんだよ。男っていうもんは。
ね、なまえちゃん?


わがままなプリンセス
20121102
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