なまえに会いたい

京介から届いたメールには、そんな文字が並べられていた。いつもなら絵文字ひとつくらいつけてくれるのに、それがないということは京介に何かあったのか、なんて心配性なわたしは考えてしまう。メールの返信なんて忘れて、急いで家を飛び出した。幸いにもわたしと京介の家はそんなに遠くはないから、すぐに京介の家へと到着した。迷うことなくインターホンを押すと、出てきたのはわたしに意味深なメールを送ったその人、京介だった。

「・・・え、なまえ?」
「京介、・・・っえ」

どうかしたの?なんて聞こうとした瞬間に抱きしめられて、身動きが取れなくなってしまう。耳元で京介がわたしの名前を呼ぶから、それに答えるようにして京介の背に腕を回すと、首元にちゅ、とキスをされた。「とりあえず中、入るか」そう言って京介はわたしの手を引き、今までに何度か訪れたことのある京介の部屋へと連れて行った。繋いだ手を離さないままベッドに腰を下ろすと、京介が再び私を抱きしめる。

「ほんとうに来てくれるとは、思わなかった」
「・・・なにかあったの?」
「週末は憂鬱になる」
「・・・ん?」

土日にはなまえに会えないからな、と言う京介の声色はなんだかしゅんとしていて。よくわからないけど今すごく京介のことが好きな気がする。「それになまえ」ぼすん、という音とともにベッドへと押し倒され、京介の鼻とわたしの鼻がぶつかるくらいの近さになった。近くで見ても綺麗な顔してるなあ。「・・・きょう、狩屋となかよく話してただろ」言った瞬間、目をそらす京介。その小さな動作までもがわたしに向けられているものだと思うと、心臓がどくんと跳ねた。

「ごめんね」
「・・・べつに、もういい」

優しく微笑む京介のこの表情は、京介の見せる表情のなかでわたしの一番好きな顔だ。たぶん、わたしにしか見せない顔。この顔を見るとなんだか安心して、それに京介のことが大好きになる気がする。こんなすてきな時間が過ごせるんだから、週末も悪くはないとおもう。京介は週末が嫌いと言うけど、わたしはそんなに嫌いじゃない。


週末のメランコリー
20120330

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