「いやあああッッ!!!」 「・・・」 最近噂のホラー映画を観よう、と言い出したのはなまえの方だった。別に俺はホラー映画なんかに興味はなかったが、なまえがどうしてもと言うので仕方なく観る事になった。 ホラーだから部屋の電気消そうか! と、なまえが言ったときは正直すこしだけ期待した。・・・ほら、よく考えてもみろ。年頃の男女が二人きりで真っ暗な部屋の中、寄り添って映画を観るんだ。健全な男なら誰しも、そういう事が少しは頭をよぎるはずだ。 しかし、完璧な条件の中にひとつ、紛れ込んでいた悪条件。 「あああああッ、むりむりむり!!!」 「あーもう・・・うるせえ」 ・・・なまえが極度の怖がりだったという事だ。 今の俺の状況は、説明するのに困難を要しない。なまえが俺の手を掴み、肩に顔をうずめているような状況だ。 なまえはたぶん、この状況を自覚していないだろうと思う。 あー・・・、正直言うと俺のほうは結構キツいんだけどな?でも、さすがの俺でも目の前で何人もの人間が残酷な方法で殺されていく映画を観ながらなまえを襲うなんて、そんな悪趣味なことはしない。もっとも、画面に映し出されているのがもっと違うものだったら今頃どうなっている事かはわからないが。 「・・・はあ」 大量惨殺シーンが漸く静まり、なまえが額にうっすらと浮いた汗を拭う。こちらにちらりと目をやるなまえとの距離は先ほどと変わらぬままだ。 「そんなに怖いか?これ」 「・・・私、こういうの駄目」 じゃあ観なけりゃいいだろ。 そう言おうとして口の動きをいったん停止。今度は聴覚と視覚を働かせる。 「・・・ん?」 画面から流れてきたのは男女のベッドシーン。濃厚なキスの後、ゆっくりとソファに押し倒される女。 「うわ・・・こういうのあったんだ」 なまえが頬を赤らめて画面から目をそらす。 「なまえ」 「なに?・・・篤志」 視線がぶつかる。なまえに握られた手を腰へとまわすと、なまえは小さく息を漏らした。顎をくい、と持ち上げてやるとなまえがゆっくりと目を閉じる。 刹那、 ≪ぎゃああああああッッッ!!!!≫ 映画から流れ出すすさまじい叫び声に驚き、なまえがテレビの方へ目をやった。そこに映っていたのは先ほどまでベッドの上に居た男女の変わり果てた姿だった。・・・それを目にしたなまえは、もちろん。 「うわあああッッ!!」 絶叫。 ・・・映画が終わるまで、行為はおあずけだな。 俺は小さくため息を漏らした。 ハッピーエンドはおあずけ 私もホラー映画は全くだめです それなのに無理して観て結局夢に出てくるのがオチ 20120123 ×
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