あなたが居て、わたしが居て
──負けました、と相手が投了した。悔しそうに涙を浮かべている。力の差はあったけど、手は抜かなかった。相手を侮辱することになるし、これは真剣勝負──プロ試験なんだから。

「ありがとうございました」

息を吐き、やっと終わった試験にホッとする。以前の様にギリギリではなく、今回は全戦全勝。間違いなくトップ通過だった。



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部屋から出ると研修センターの入り口に彼奴はいた。
何だよ、終わったら報告がてら家に行くって言ってたのに、と思わず笑い出しそうになる。何でお前がそんなに嬉しそうなんだよ!

「──佐為!!」

思わず駆け寄り、直前で停まってピースサイン。そうしてニヤリと笑うと佐為もまたふやんと頬を緩めた。
相変わらず男なのに綺麗な笑い方するよな。今の女である俺よりも綺麗って何なんだよ、ほんとに。

「受かったぞ!!」

「はい、おめでとうございます」

そうしてニコニコと手をたたく仕草に満足して──あぁ、傍にいるんだなって思う。それが何だかとても幸せで、嬉しい。
当たり前に傍にいてくれることがとても嬉しい──が。

「っていうか、家で待ってろよな」

「やはり待ちきれませんでしたから」

約束しただろと不満には思ってないけど、それを素直に出す気になれなくて口を尖らせればサラリと言われ。うーん、内心がバレバレ?俺が不満に思ってないのに気づいているのか。まぁいいけど。
毒気を抜かれてはぁと息を吐く。やっぱり佐為には適わないんだよなってこういう時に思う。

「──それに」

「ん?それに?」

続いた言葉に首をかしげれば、サッと手を出されので思わずいつもの感覚で佐為の手を握ると、歩き出して。手を引かれながら佐為を見てれば、また笑った。

「貴方に最初のおめでとうと言うのは私でありたかったから」

「…そうかよ」

キラキラの笑顔でそう言われ、俺はあえなく撃沈した。



あなたが居て、わたしが居て






(おい、さっきのって…)(あぁ、プロの藤原さんだ!)(進藤って、藤原さんと知り合いだったのか!?)

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海老貝さま、この度は企画にご参加くださりありがとうございました。本当に遅くなってしまい申し訳ありませんでした!
リクエスト内容は『迷える子羊の続き、もしくは佐為ヒカでヒカルがプロになったすぐのお話』という事でしたが、いかがでしょうか。亀更新の為、未だに本編ではプロになっていないのでもしかしたら本編ifという感じになってしまうかもしれませんが。佐為ヒカになっているでしょうか??
気に入って頂ければ幸いです。

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