なんて馬鹿な両想い:3
徐々に浅く、加速していく律動に互いが互いに時間を忘れて求めあっていた。意思の疎通が取れている、いない、は別として、自己満足はしていると思う。やってから三日もしたらやった事も忘れるような、そんなセックスではないような気がしていた。
たくしあげたミニ浴衣が改めてペラい生地なのを再確認しつつ、こんな薄着で歩かされるアンネが可愛そうに思えた。
「俺も……俺も、気持ちいいですよ……」
「本当に? 引いてない? 僕の事、軽い奴だって、思って、ない?」
「思ってるわけないじゃないですか。むしろどんどん見せて下さい、そういうところ。俺以外には嫌ですけど」
「あ、たりまえでしょ、あ、あんっ・おち●ちんすごいっ……ナカいいのぉ
しあわせ、おち●ちん大好きぃ、ン・ああっ! んぁあっ、いいよぉ……!」
ああ。……絶対に絶対に口には出さないけど、セックスなんてもうずっとしていなかったしおれは今後も一生オナニーでいいやとおざなりにしていたが、やっぱりマ●コすげぇ。もう、説明不要なくらいにビチョビチョだし。まとわりついてぎゅうぎゅうに締めつけてくる。もはや気が気じゃなかった。
「その、好きです、よ……はい……」
「ッ、ぼ、僕も、すきっ、好き……えっちな子でごめん、でも好きだからっ……好きなの、ん・ぁっああ!」
思いを告げると一層、根元まで咥え込んでいたペニスが一瞬ばかりきつく締めあげられて痛い程だった。逐一反応を見せるアンネがいやらしくて可愛らしい、愛おしさ二万パーセントだ。
「す、すごい……激しいですね? すぐにイッちゃいそうですよ、俺……っく、ンっ」
「あうっ……やっ……んっ、ほんと? うれしっ……、ぼくで……イッて欲しいよっ……でも一緒にいこ、ね……っ!?」
「は、ぁっ……うっ、い……イきそ、――」
「出してっ、全部僕の中に射精して――全部欲しいのぉ、ナカに全部熱いの入れてほしいの、お願い……っお願い来て、お願いだから……んぁ、ぁあ、っ!」
だらしなく緩む自分の声を感じつつ、アンネは清々しいくらいの心地よさを覚えていた。バカみたいにスミルノフを求めると、どんどんと気持ちが落ち着いていった。まるでそれは脳内麻薬みたいに。いやらしく咥え込んだ彼自身が自分の中で一層張りつめるのを感じると、アンネも押し寄せる大きな快感の波を受け入れた。
幸せ者だ。僕は幸せ者だ。こんなふうに愛されて。
「だめぇ僕も、ぼくも、ン……イッちゃう!……あっ、イクっ、あそこがいっちゃうの、っあぁっ、やだ、だめなの、見ないで恥ずかしいからっ、いや――っ」
「嫌です、全部見届けさせて下さい、ッ……」
ここまで来ておいて、だけど、アンネは性欲が強い子、と思われるのも妙に気恥ずかしくて最後の理性に追いすがってしまう。涙を浮かべつつ、イヤイヤをするように首を振るアンネを背後から抱きしめつつ、スミルノフは微笑んだ。
「独り占めしたいんですよ、そういう部分も含めて全部」
「だって、だって……ン、ふぅう、ぁあっ……やだっ、ごめんなさい、ごめ……」
「自分の知らない側面に気付かされたんですよ、俺、その……こういう気持ちになったのも久しぶりで――」
アンネの顎を持ってゆっくりと振り向かせ、そこでようやく軽めの接吻をかわした。今日初めてのキスじゃないだろうか、よく考えると。それで幾分か気持ちが落ち着いたのであろう、アンネは弛緩したように顔を緩めて、それから壁に手を突いた。
「っ、あ、イク・イッちゃうっ……んあぁっ、僕もうイっちゃう、ちんこダメぇ・あああんっ!」
スミルノフよりも少しばかり早く絶頂に達したアンネは、ビクビクと体を痙攣させた涙をぼろぼろと流していた。初めて身体を重ねた時も彼は泣いていたようだが、あれは痛くて泣いていたわけではなかったのだろうか? 気持ちいいと、生理的に泣いてしまうだけなのかも。同時に、スミルノフも絶頂に達していた。彼の精液が望み通りに自分の中に注ぎ込まれるのを感じ、アンネは涙の混じった声を上げた。
「ぁ……ん……あ、ああ」
ぐったりとする彼の身体を支えてやり、気絶しているように目を閉じている彼の頬を思わず叩いてしまった。
「あ、アンネ!? 大丈夫ですか!?」
「ぼく、熱いところ、苦手で……」
乱れた浴衣が何とも暴行でもされたかのような姿に見え、あらぬ誤解を招きそうだった。スミルノフは慌ててジャケットを脱いで(夏場にご苦労様です。クールビズでもいいじゃないか)、アンネに着せてやった。
「あ、汗臭かったらごめんなさい……一応デオドランドスプレーありますので……」
「いいの?」
「え、ええ。それより無理させてごめんなさい、汗ぐっしょりですよ」
アンネの額に汗でしっとりと張り付いた前髪を指先で分けてやりながら、スミルノフはにっこりと微笑んだ。アンネはぶかぶかのその袖をクンクンと嗅ぎながら「スミルノフの匂いだ」と笑った。
「く、臭い? ひょっとして加齢集とか……」
「ううん、柔軟剤の……お花みたいな匂い、とてもいい匂い。ぼく、好きだよ」
そう言ってにっこりと少年のように笑うアンネの天使な事。さっきまでの妖艶なビッチボーイではなくなっているが。とりあえず仕事には戻らなくちゃいけないわけだが……問題はスミルノフの方ではなくアンネの方になってしまったわけである。どう言い訳をしよう……衣装はもうボロボロだし下着は脱いじゃったし……。
「ま。とりあえず館に帰ろうか? あはは」
「その服で、ですか……途中変なのに襲われませんかね」
「その時はスミルノフが守ってくれればいいじゃない。今日の僕は武器を持っていないからね」
と、言いつつアンネは素手の方も中々ヤバイ事をスミルノフは知っているのだった……。おしまい。二人にがっつりらぶえっちをやらせてあげたかっただけの小説だった……。
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