なんて馬鹿な両想い:2



 一方で気分が陶酔していくアンネは、片方の手で自らのはだけたおっぱいに手をやって弄り始めていた。

「あ、アンネ、……えっ!? ちょっ、マジですか、っ」

 素っ頓狂なスミルノフの声が頭上から飛んできたが、構う事はなかった。

(自分でこんな事しちゃうなんて、僕おかしくなってる……えっちな子だと思われたらどうしよう――やばい、変な声出そう……)

「その、アンネ、も、もういいですッ、あ、あとは自分で何とかしますからこれ以上は――む、無理強いさせてすみませ……」
「だ、だめっ、ダメ! む、無理強いじゃないもん、ぼ、僕も……は、恥ずかしいけど、へ、変な気持ちになっちゃっただけだよ……無理なんかしてないし、ていうか変態みたいだと思われたら嫌で、僕……」

 恥じらいつつ告げるアンネの顔と表情を見ただけで、もう興奮してイってしまいそうなのが本音である。純愛路線は終了しました。女の子座りですんすんと鼻を鳴らすアンネに、スミルノフはこれはもう何かしてあげなくては、という妙な使命感がムクムクと起き上がってくる。

「っ、あ、す、スミルノフ!? あっ……」
「だ、大丈夫です。絶対に優しくしますんで」
「……う・うん……」

 正直言って二度目なんだけど、一度目の時にそれを言うべきだったような、あれ言ったかな。と前の事を考えるのはヤメにして。スミルノフは背後からアンネを抱きかかえるような姿勢を取ると、さっきから揉みたくてしゃあなかったおっぱいに触れてみる。

「ひゃうっ……!?」

 彼が情けない声を上げると、妙な優越感に満たされてしまう。これには流石のスミルノフ、いい歳こいて頭の中が最低な妄想でいっぱいになってしまう。スカーレットから女には不足しないように色んな子を紹介してあげる、と言われつつ結構です、と断り続けた男がまさか美少年にうつつを抜かす事になるだなんて誰が想像しただろうか。
 よもや可愛い男の子のおっぱいを揉んで悶絶しているのだから頂けない。揉んで悶絶。なんちゃって。手の平の中でいやらしく形を変えるおっぱいについ夢中になってしまう。というか、感動ですらあった。男の乳がこんなに柔らかいとは。堪らない感触についしつこく変態オヤジの如く息を荒げてしまう。

「は……っ、ん、く――す、スミルノフってばもうちょっと優しくしてくれる……?」

 しまったつい、と慌てて離れて、申し訳なさそうにシュンとした。

「ご・ごめんなさい、つい……痛かった、でしょうか……」
「う、ううん……いいんだ。べ、別に気にしてないよ。でも、おっぱいっておとこでも気持ちいいんだね。初めて知ったからちょっと驚いて」

 気持ちいい、と素直に言われたのが誇らしくもありかわいい、と率直にきゅんとした。可愛いかよ、とどこかの若者のように頭を抱えてからスミルノフは思わずぎゅっとアンネの身体を抱きしめた。驚いて「どうしたの急に?」と問われたが、どうしたもこうしたも。

「あ、アンネ、ええと……」
「なに?」
「か、顔が見たいのでこっちに向いてもらっていいですか……」

 それを聞いてアンネは恥ずかしそうに一瞬目を逸らした。

「――う、うん、いいよ……いいけど。でも、なんだか恥ずかしいな……こんな明るい場所で、か、顔とか見られるの」
「何言ってるんですか。あ、アンネはその、可愛いんですからもっと自信を持ってください」
「へっ」

 うまい言葉が出てこなくてつい、馬鹿にしてるんじゃないかと思われるような発言をかましてしまった。が、アンネの顔がまた別の意味で見る見るうちに紅潮したのが目に見えて分かり一層ときめいた。

「か、可愛いってそんな……どういう意味だい? 僕の顔が? そうだとしたら可愛くないよ、可愛いならキティー様とか、リリーとかもっと女の子がたくさんいるだろう。言う相手を間違えているよ、君は」
「そういうわけじゃなくてですね、えっと……とにかくアンネは可愛いんです、はい」
「そんな……きみはまた誰にでもそういう、事、言って……ンッ、ぁあっ、!」

 先のイチャイチャで既に硬くなっていた乳首を舌先で転がしながら、一気に歯を立てるとアンネは身を震わせ声を上げた。慌ててアンネが自分の口を塞いで、声を抑えこむのに必死になった。

「だめ、そこっ……感じちゃうよ……、あ、んんっ……あんまりすると、」
「あんまりすると、何ですか」
「――い、いじわる……おかしくなるよ……ぃ・イっちゃいそうになるからヤダ……!」

 甘い吐息を漏らしながらも、アンネはまだどこか受け入れがたい感情に身悶えしているように見えた。少し強めに刺激し続けると、アンネはスミルノフの頭を抱きながら彼の太ももに向かって自分の腰を挑発するように押し付け始めた。

「ねえ、入れてほしいよ、お願い……僕そっちでイきたい」

 自分から脱ぎだすんですか、そこで。アンネはその挑発的なミニ丈の浴衣をたくしあげると、白の紐パンツにその指先を添えた。まさかとは思うがこれもスカーレット様の指定なんじゃ……と戦慄しつつその隙のなさに驚きを禁じ得ないのであった。そりゃそうだ。軽く衝撃であった。

「これ、えぇとつまり……濡れてるという事でしょうか?」
「だってしょうがないじゃないか――き、きみがその、気持ちよくしてくるから。ねえ、一緒に気持ち良くなろうよ……? それとも僕じゃ……嫌?」
「ま、まさか」

 それはない、と即答しておいてから、いやいや正直自分ももう限界だったのです――アンネは自ら下着を脱ぎ捨てておくと一度壁に手を突いた。その指で自分の入り口へ触れ、こちらに見えるようにほぐして見せた。先走りのカウパーでべとべとになった指先がぬらぬらと光っているのがこの距離でもはっきりと見えて煽情的であった。物欲しそうにぐちゅぐちゅと音を立てながら、アンネは横目でこちらを伺うようにして振り返る。

「――ちょっと怖いからゆっくり入れて、ね……?」
「分かってます、痛かったら言って下さい」
 
 体位的にバックからの挿入だったが、アンネは手を突きつつこちらを振り返って熱っぽく声を漏らした。熱化したペニスの先が触れるだけでアンネは反応を見せた。

「ッ、ぁ……」
「平気ですか? もう少し力を抜いた方がいいですよ」
「へ、平気……嬉しかっただけだから……」

 少し擦れただけなのに体中に快感が響き渡る。アンネは生まれて初めての気持ちに戸惑いつつも、不思議な幸福に満たされていくのを感じて身体の力を抜いた。最奥にまでそれが入った時には、胸いっぱいに幸せが広がったのをはっきりと自覚した。

「あっ……んっ……すごい……すごいよぉ……、奥に当たってるの…… おち●ちん……おっきくて奥がきもちぃよ 動いてくれる? 激しくしていいから、ちょうだい」

 自ら快楽を求めるようにアンネの方から動くと、スミルノフも煽られたように腰を動かした。それでも草食系を絵に描いたスミルノフ、略してSS、やはりまだ気遣っているのかどこかその動きは頼りない。それでも積極的にグチョグチョに締め付けてくる粘膜の生温さに眩暈がしそうだった。あの夜よりもずっとエロく乱れるアンネを前にして、はっきり言って見て見ぬふりなどできない。

「気持ちいいよぉっ……っン・ぁあ、あっ、もっと……もっと激しくしてぇ! らめぇ、後ろからっ、らめなの」
「あっ、あの時よりも随分とエロいですね、二回目とは思えないくらいです」
「だって、だってぇ……んっ、あぐっ、うっ、ふ・あっ こんなの初めてだから、っ!」

 この街へ来てから、初めて愛されているという感情を知って。こういう形かもしれないけど、誰かと繋がれるということ。言いようのない、名前のつけられない多幸感を覚えていた。好き。好きです。好きなんです。愛してる。大好き。


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