――ここはとある私立の高校。裕福な家庭にあるお坊ちゃん、お嬢様が通う事で有名……というか金があれば馬鹿でも入れる事で有名だ。
スポーツや美術面ではそこそこ名を馳せているようなので真面目に通い続ける生徒もいれば単に遊び惚けているような生徒までピンキリだった。
「リオちゃんって血液型何?」
「え、何それ突然。ん〜……じゃ、何型だと思う?」
今日もこのクラスは真面目・不真面目組に二断されており不真面目側のクソやかましさには皆ため息混じりにしているのが窺える。
で、絶賛不真面目中の創介は現在、クラスメイトだろうが別々のクラスだろうが女子生徒とあらば絡みたい放題。
彼にとっては学校生活とは毎日が出会いの場、それすなわち合コンのようなものであった。ちゃんと学びに来ている者からすればいい迷惑だ。
「お、逆に聞くね〜。何それ、俺への挑戦? よっしゃ、じゃあそれ当てたらチューしていい?」
「えっ。何でそうなるの? ってか四択じゃん! 難易度低いから〜。ま、いいけどー」
「よっしゃ! じゃあマジで当てに行くからね!?……うーん、A!」
「はずれー」
「……と見せかけてBか!」
「残念でした。違うからぁ」
「っていうのは無しで、俺本命のAB!」
「ぶっぶー」
「う〜ん、あえて言わなかったんだけど俺分かってたよ。Oだって事は」
「やっだぁ何それちょーウケるんですけどー! あはは、アンタ面白いね〜。でも外したからチューは無しね、ごめんねー」
他の女子生徒が呼びにきたのを期にリオはその場からいなくなってしまったようだが、創介はその後ちゃっかり携帯番号をゲットしているのだから流石は今時珍しいくらいの肉食男子。
彼が傍にいるとほとんどの女の子が奪われていき根絶やしにされてしまうと恐れられ、挙句同性からは嫌われまくりだという理由がよーく分かる。
その反面で、彼を『先生』と尊敬する輩もいるにはいるらしい。何が先生だかよく分からないが、まあ草食文化、果ては絶食文化とまで言われつつある近年でここまで積極的に動く男子は貴重だ。
というかコレこそが本来の男子たるもの、創介にとっては目の前にいる女性を皆口説かない事には失礼であるとさえ思っているのだった。ある意味男らしい……のか?
「……お前、朝からよくやるな。それも学校で」
声をかけてきたのはリオにちょっとした恋心? めいたものを抱いているという男子生徒・凛太郎であった。ちょいとばかし腑に落ちないような表情で彼は腕を組んでいる。
「あら、お早う」
「けっ、お盛んなこった。ホラー映画なら真っ先にブチ殺されるタイプだぜ、肉食男子だか何だか知らないけどな!」
「そりゃあアンタ、草ばっかモソモソモソモソ食ってられないでしょーが。えぇ? 大体最近の男子はこう、覇気が無いったら無いね! フラれるのが怖いって何じゃそりゃ! プライドたけーのよ、口説く勇気がないからって風俗に逃げるんだぜ? つうか風俗に捧げるその金をまずテメーの目の前にいる女に使えッ!」
「お前が言うと上から目線だよなぁ、それ……」
ちなみに創介と凛太郎との身長での差だが……、恐らく十五センチ差以上はありそうなものだ。軽く見下ろされるくらいだった。凛太郎は座ったままの創介を見下ろしながら忌々しそうに呟くのである。
「はぁあ? おバカさんだねぇ〜。例えテメーがチビだろうがブサイクだろうが短小だろうがホーケーだろうが! あと喋りが下手糞だろうが、金も無かろうが! そこは関係ないっつーんだよ、男なら頭下げてでも土下座してでも付き合ってくれ! って何が何でも相手に頼み込むのが普通でしょうが、えぇ!? 結局は度胸なんですよ、覚悟があるかそうじゃないか!」
「別にそこまで言ってないんだけど、くっそムカツクなお前」
そしてこの大余裕である。自分に自信があるからなのか知らないが、彼はとにかく堂々としている。
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