16-3.死に方を選べ



 林檎だけはその様子を、母と共に離れて見守っていたがいよいよ放ってはおけなくなり母の手をすり抜けてそこへと近づいていった。

「そ、そんな……」

 首を失ったかつての級友へ近づきながら、林檎は深い絶望の淵に立たされているようなその声で言った。

「どうして――ね、ねえ、どうしてなの……」

 きっとその言葉には、きっとあらゆる意味が込められているのだろう。だがその問いに対する完璧な返答は、今しがた起きた惨事によって無きものにされた。震え崩れる林檎を支えるのは、エルと夢々だった。

「お、教えてよ――あたしが一体何をしたの? ねえ、あたしのせいなの……? 全部、全部、あたしがいるからなの?」
「林檎、違うのよそれは……」
「う、うっ……分かんないよ。ねえ、あたしどうしたらいいのか――」

 そして……その光景を眺めながら、湊が覚えるのは絶望感でも悲壮感でもない、また別の――そうだ、途方もない疎外感を覚えて叫び出したくなっているのだった。

 この中では一番の場違い、仲間外れにして完全なる部外者だ。

 他の人々のように何か貢献できたか? いや、何も出来ていない。自分がやっている事といえば逃げ回る事以外は、何もなかった気がする……仇を取るのか、と聞かれれば恐ろしくて身が竦み上がる思いだった。じゃあ何もしないで終わるのかと聞かれたら、それも嫌だった。

 結局、自分はどうしたい?

 捨て身で戦う覚悟はないけど、でもかっこよく人助けはしてみたい。そして感謝されたい。誰しもヒーローには憧れるものだ。……空想上の中での自分は負ける事を知らない無敵の主人公だというのに、現実はそうもいかない。

 殴られたら痛いし、血は出るし、骨は折れるし、どこかが千切れる事だってあるし、死ぬ事だって。その瞬間、それまでは軽々しく日常的に用いていたような気がする『死』という言葉が急速に近くに感じられてぞくっとなった。

 この感じ、友達を失った瞬間も、母を失った瞬間にさえも覚えなかった。

 人を失う事と、自分が失われる事とはまた違う。こんなにも恐ろしい――一瞬の戦慄は全身を侵す震えへと変わり、眩暈がして吐き気がした。

――俺は、俺は一体何なんだよ……?

 そしてそれ以上に煩わしいもの。結局、ここにいる意味のない自分の存在感。

「……」

 騒々しい周囲の声をよそに、湊はそんな自分を哀れんでいるのだった。




湊の気持ちも分からなくもないよね〜。
一番ここにいる理由なさそうだもの。
今まで振り返ってみると湊みたいに何となくなりゆきで
パーティーに参加しちゃったタイプはいたけど
誰もそう思わないんだろうか。
俺、場違いじゃね?みたいな。
そんな書き手の疑問を
具現化してみた感じのキャラだな、この子
ユウと似てるようでそこが違う。


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