ジョーが言っていたよう、階段を下ってゆくとそこに広がるのは無数の死体の山々であった。そのどれもが見事に頭部を切り離された状態で転がされており、あまり長い間見つめていたくない光景である。
「まぁ、ものの見事に首がねぇな……」
確実に仕留められているその死体達から漂う強烈な死臭と血臭が、サージェントと崇真の鼻腔に潜り込んできて容赦なく胃を揺さぶった。その大量の血飛沫が大気中に飛散されているようで、薄赤い霧となって校内に漂っている。
流石に崇真も少し応えたようで、やや視線を逸らし気味なのが分かった。
死屍累々のその転がされた首無し遺体を見渡しながら、サージェントは改めてジョーの腕がいかに優れているのかと思い知らされたようだった。無論、見くびっていたわけではないが、銃も所持していないようであったし近接用のナイフのみでここまでの人数を相手してきたのだから相当なものであろう。改めて敵として対峙しなかった事に胸を撫で下ろす思いでいっぱいであったが、ともかく。
「でも、不思議でした」
ぽつりと崇真が呟くように言い、それからその強烈な匂いに顔をしかめながら腕で鼻を覆い隠した。それで少し声がこもりがちになったが、ともかく続けた。
「何というか……、悪い人ではなかったように見えました」
言いながら自分の中での『悪い人』の線引きがどこまでなのか気になり、それから再び死屍累々としたその光景を見やった。凄惨なこの光景を見せつけられておいて『悪い人じゃない』なんて少し矛盾が過ぎるか、と思い、少し笑い出したくもなったがそれ以外の言葉も思いつかなかった。
サージェントも崇真の言いたい事の大よそは分かってくれたのだろう、肩を竦めながら少しばかりこちらを向きつつ言った。
「まあな。……次に会った時、どうなるかは分からんが」
「……」
何故か何も言えなくなってしまい沈黙していると、サージェントから背中を叩かれた。
「ぼさっとするな、行くぞ」
「あ……、え・ええ……」
出口はもうすぐだったが、気を抜いてはいられないだろう。ぼんやりしている暇だってないのだ、今は――二人はまだ残党が潜んでいない可能性も勿論念頭に置きつつそのあと少しの道のりを辿るのだった。
またその一方では、きつきつの車内に立ち込める別の悪臭に限界になる者が一人……。
「兄貴ー、あいつマジで逃げちゃったんじゃねえの?」
「……うるせぇなあ」
「まさかまた騙された? 兄貴っていっつもそうなんだもん、すーぐに騙されて変な宗教に掴まっちゃうしさー、そのうちたっかい壺とか浄水器とか買わされちゃうンだよぉ〜」
「るっせぇつってんだろ!」
セバスチャンがハンドルの上に乗せていた足を一つ動かすと、クラクションがブッと短く音を立てた。不必要にそんな事をしたらゾンビ達の気を惹いてしまうじゃないか、とは下っ端の首藤の口からはとても言い出せない。
しかしこの兄貴、とんでもなく足が臭い。いやいや気にしているのは俺だけか。俺が極端に潔癖すぎるのか。他の奴らはどう思っているのか、いや案外自分だけで他は何とも思っていないのかもしれない。しれないけど、とにかく臭い。空気清浄機が荒ぶって故障しかねないくらいの破壊力だ。この狭い場所ではもはや公害レベルだといっていい――スメルハザードとして訴えを起こしてもいいくらいだろう。
「この前だってキャバクラの女に騙されてマンションなんか与えちゃってさぁ、挙句女には浮気され? 兄貴が部屋に戻って扉を開けたらピストン真っ最中だろぉ〜?」
「おい黙れV、それ以上口からクソを垂れると縫い付けるぞ! このお喋り野郎が。口は禍の元っていう先人の偉大な言葉があるだろッ」
「だぁってさぁ、俺は兄貴を心配してんだよゥ。で、そのピストン女と男はどうしたんだっけ?」
「……二人まとめて臓器と角膜だけ摘出したらミンチにして豚に与えちゃったよ文句あるかボケッ! 豚は何でも食うからな!!」
セバスチャンの声が更にヒートアップしたところで、二度目の車内に響き渡る轟音。再びの揺れに、兄弟が同時に悲鳴を上げて互いに抱き付き合った。
「今度は何だ今度はぁっ!」
「おい首藤、行け! 二回目だからもう慣れっこだろ!? なあ!」
「えぇえ!?……またですかぁ!?」
今度はライフル銃を適当な調子で持たされて、さっさと行けと視線で促された。舌打ちしたい気持ちに駆られつつ扉を開けようとした矢先、窓に突如のように先手を打って現れた影に首藤は一人バックドロップでもけしかけているような勢いで扉から飛びのいた。
「ぎゃひぃんっっ!!」
「……俺だ」
背後の用心棒を巻き込んで、首藤は座席に手を駆けながらその影をもう一度凝視した。飛んだ勢いで口に噛んでしまった髪の毛を払いのけながら、首藤は恐怖にはりついた顔のまま尋ね返す。
「え? え??」
「俺だ、開けろ」
「クッソ、ジョーかよ。びびらせんじゃねえ!」
前座席からセバスチャンが答えると、首藤が慌てて扉に手をかけた。乱暴に開くと、黒づくめのジョーが返り血まみれでそこに突っ立っている。何も告げずに無言のまま、ジョーは狭い車内に無遠慮に乗り込んできた。
「おい! おいっ!! びっくりしたじゃないかお前ェ! 俺は気が弱いんだよ、もっと普通に現れろよこのトンチキ!」
「……」
Vが半泣きで訴えるが、ジョーは相手にする気配さえ見せない。何も言わずに席に着くだけである。
「……血の匂いプンプンさせやがって。どれだけ暴れてきやがった、変態野郎」
セバスチャンが咥え煙草を満タンになった灰皿に押し付けつつ問いかけるが、ジョーはやはり答えもしない。
「へっ、答えナシかい。ま、いいか」
驚いて暴れてしまった勢いでスーツに飛び散った煙草の灰を叩き落としつつ、セバスチャンはキーに手をやった。
「兄貴、兄貴ぃ! 俺やっぱアイツ嫌いだよぉ、俺の事無視したよ今! ひどいよぉ!!」
「うるせぇ、とっとと次行くぞ次」
夫婦漫才よろしく兄弟漫才を繰り広げる前の奴らは無視し、首藤はジョーの横顔を驚愕したように見つめたのだった……。
キャリーのリメイクを見た。
いやまあ素晴らしい旧作と比べるもんじゃないとは思うけど
やっぱね、キャリー役がクロエってのが明らかミスキャストだった。
旧作のキャリーは絶妙なブスさ加減とイラっとくる感じが
とにかくまあキャリーという喪女を演じるのにおいて
全てクリアしていた感じの女優さんだったんだけどさ、
(でもたまに可愛く見える、っていう凄く自然な感じがある)
クロエはもう明らかに美少女だもんね〜。
いじめられてもすぐに殴り飛ばしそうだしw
いじめっ子の女どもの容姿がクロエに劣ってるので
僻みでいじめてるようにしか見えないのよね。
でも最後のいじめっこ虐殺場面で超能力操るクロエの演技は
流石というかここはすごくかっこいい!
豚の血まみれで狂気的に笑いながらビッチ・チャラ男どもを
次々ブチ殺していきます。
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