「注意すべきはその男だけなのか? 自警団なら他の連中もいる筈だ」
「……他はガキばかりだ、どいつもこいつもままごと気分で戦場に向かうような奴しかいない。アンタ程の男が本気で相手をするまでもないだろう」
その口調には何だか呆れているような口ぶりも含まれていたが、先程出てきたルーシーという男だけはどうにも特別な扱いなようであった。実際に手合わせをしているのかどうかまでは分からなかったが、ジョーはひどくそのルーシーという男に畏怖の念を抱いているのは伝わって来た。
「ほー、そんな大物に俺みたいな素寒貧が目をかけてもらえるなんてな。有名になったもんだ」
「おい、ふざけている場合じゃないぞ!……いいか、もう一度よく聞けよサージェント」
先へと歩きかけたジョーだったが、その歩みを止めた。かと思うと再びのように振り返り、サージェントに向かってつかつかと歩みを進めてきてそのネクタイをぐっと掴んだ。胸ぐらでも掴み上げるかのようにして、ジョーはネクタイを握りしめると自分より少しばかり背の高いサージェントを見上げつつ言うのだった。
「俺は真剣に警告している。もしアンタが逃げられる状況なら今すぐ地の果てにでも逃亡した方がいい――ふざけているんじゃない、本気だぞ。……ゾンビなんかよりもずっとずっと恐ろしいのは何だと思う? 答えてみろ」
「……人間の狂気か?」
「そうだ、その通りだ。これは比喩でも何でもなく、あの男の狂気に呑まれたら二度と帰って来れないぞ」
「…………」
冗談のつもりで何となく吐いた言葉も、ジョーの神経を逆撫でする結果となってしまったらしい。ジョーもジョーで柄にもなく激情に駆られた自分に反省したのか、すぐさまその手を離してサージェントから距離を置いた。
「とにかく……」
一度そこで息継ぎをし、ジョーが続けた。
「今はここを生きて出ろ。アンタ達の帰りを待っている人間が沢山いる筈だ」
「……お前は? お前はどうする。一緒に俺達と戻るんだろう?」
「俺はいない筈の扱いだ。黙って消えるのが一番いい」
言うが早いかジョーは今しがたメンゲレ達が消えたその開放されたままの扉をチラと一瞥する。まさか、とは思うがジョーは扉の向こうが外の世界であるのを確認するとそこへ向かって歩き出したのであった。
「待て」
止めたところで自分達と行動する気が無いのは分かり切っていたが、せめてこれだけは聞いておきたいと思った。サージェントが足を止めてくれたジョーに向かい尋ねかけた。
「名前は? お前の、名前」
ジョーはやや俯き気味に顔を伏せ、それからもう一度だけ振り返った。吹き込んでくる外気の風が、ジョーの漆黒のコートの裾をはためかせる。
「……ジョーだ。『番犬』ジョー」
番犬、の部分が何だか酷く自嘲めいたものにサージェントの耳には届いたが、勿論それを深く掘り下げるような真似はしない。ジョーもそのサージェントの思いが分かったのだろう、彼の気遣いに心の隅で感謝しておく事にして今はその場を後にするしかない。
生憎だが自分の雇主は今は別にいる、不思議な運命の巡りあわせによって偶然にもここへ向かったわけではあるがそうそう長い時間もかけていられない。あの兄弟にばれてしまったら面倒だ、一刻も早く戻った方が良いであろう。
ジョーはまだ名残惜しい気持ちもあったが――いや、深く考えるのは止した方がいい。これ以上は。恐らく、いや、必ず再び会う事となるだろう。自分と、この男とそして……ジョーはすぐ近くで見た『我が子』の顔を思い出し、そして同時に妻であった彼女の事も思い浮かべていた。懐かしんでいる暇も今はないのだが、だが感慨深かった。そして、ひどく悲しくもなった。
――大きくなったんだな、もうすっかりいっぱしの口の利き方しやがって……
だけど今だけは、ほんの数秒でいいので許して欲しい。ちょっとの間だけでも、父親ぶらせてもらいたかった。今更父親ヅラをするな、と非難されるだろうけれども。
ナイトメア界の訳あり父親は死亡率高いぞ!
ヒロシの父がいい例だ!
ここへきて丈一郎が凄〜く人間臭くなったね。
最初の無口で業を背負ってる系の方が人気出るかしあ?
いやでもやっぱりパパってのが燃えるんですよ。
萌えじゃなくて燃えですね。
丈一郎はあんまりガタイよくないというか暗殺者みたいな
イメージなのであんまりガツガツ系じゃないんだよね〜。
イサムみたいなムキムキ脳筋タイプではないのよ。
体毛も薄いんですよ。色も白いんですよ多分。
あ、イサムってのはジェイソンステイサムね。
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