一番手酷くやられた腹部(何本か骨が折れてるのは想像がついた)を擦りながら、穂邑はとりあえずその場はマツシマ達に任せる事にして自分は足を引っ張らぬよう撤退する。
「修一さんが彼らを連れてきてくれたのか……ありがとう」
穂邑が言うと、修一は何だか申し訳無さそうにした。言い淀んで見せながら、修一はもごもごとその唇を動かした。
「先生……、あの――謝らなくてはいけない事があります」
「? 何、が……?」
「お、俺――俺、実は、先生を見捨てて逃げようか、実はすごく迷ったんです。子ども達を、何としてでも助けたくて。それで、どうしよう、どうしよう……って迷っている時に同じく放送を聞いた彼らと会って、ここに。……正直、彼らに会わなければ俺は貴方を助けに行かず逃げていたかもしれません。先生でも勝てない相手ですし、俺なんか到底敵わないんだろうなって……」
それを聞いて、何だか笑い出したくなってしまった。
「何だ、そんな事――」
「そ、そんな事って! 俺、自分を助けてくれた人を見捨てようとしたんですよ、そんなの最低じゃないですか……! 俺、情けなくて、本当に……本当にもう……うぐっ」
感極まったように修一がめそめそと泣き出すのが分かった。それが余計におかしくて吹き出しそうになりもしたが、何とか堪えつつ穂邑は言った。
「正直な人だなあ。……あのね、俺はそのくらい覚悟で相手に挑んだんですし、いいんですよ別に。それに、俺としては助けた命が次へと繋いでくれる……それが一番だ。そして死ぬのは年長者から、それが暗黙のルールですよ」
「……うう、ひぐっ……俺、俺本当に、弱虫ぃ、でぇ……えぐっ、うぐっ……」
話しながら入り込んでしまったのか、修一はしゃくりあげながら本格的に泣き出してしまったので流石に参った。
「ま、まあ修一さん。反省会は後にして今はとりあえず――」
言いかけた時だった。二体のゾンビが行く手を阻むようにして、のらりくらりと現れたのは。
「はっ……、や、やばい!」
呻く修一だったが、すぐにシノが躍り出た。
「バブ、追っ払って!」
シノの指示にだけは、バブはきちんと従う。勢いをつけてゾンビへと飛び掛り、噛み付いて相手を翻弄する。猟犬らしい、その俊敏な動きはのろのろとしたゾンビにはとても追いつけない程の身軽さだ。
残る一体も、どこからかの援護射撃によって華麗なヘッドショットと共に炸裂した。
後頭部にめりこんだ弾丸によって、額から風穴を開けてゾンビはその活動を停止させられるのだった。
「今の……崇真お兄さんがやってくれたんだ! だから、安心して進めるよ」
シノが説明するのと同時に、先を急ぐように指示を促した。そんな彼の勇ましい姿を見つめながら、修一は下手すれば自分よりよっぽどこの少年のほうがたくましいのではないか――と、思ってしまうのだった。
夢々に引き続いて崇真も覚醒モード。
弟に仇をとると誓った彼は例え元が人間だろうが
ばったばったとゾンビたちを撃ち抜いて行くのでしょう。
バブがゾンビに噛みつくシーンで思い出したけど
ビヨンドっていうフルチのゾンビ映画で、
盲導犬にゾンビが追い払われるシーンが出てくるんだけど
そこでゾンビがマジビビリなのがうける。可哀想。
それまでゾンビらしくのらりくらりとした動きなのに
犬に襲い掛かられた瞬間めっちゃ素早く倒れ込んで
イヤイヤしてんのが演技じゃなく本気で嫌がってそうw
フルチ監督はゾンビと人外をバトルさせるのが好きだね。
サンゲリアではサメと戦わせてたけどあれも
ゾンビ役の人が本当に逃げ腰だった。
ゾンビ役も只うーうー言いながらうろつくだけじゃなくて
高度な演技力を求められるんだね。大変だね。
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