鴇田と向かい合うような形になりながら、マツシマは邪悪な笑みを浮かべつつ言った。
「お前の顔、どっかで見覚えあると思ったら……どっかの行政機関のヤローだな。いつものデブじじぃはどうしたよ? てめーが犬みたいに引っ付いて回ってた小太りのオヤジ」
「君は……、ああ、そうか。すっかり大きくなりましたね――小さな頃のイメージしかありませんでしたが、松島丈一郎の息子だ。ほーう、随分とまた、お父さんそっくりに成長されたみたいで」
「そうかぁ? 自分じゃあんま思わないけどな〜」
マツシマがスコップを構え直しつつ返すと、鴇田はその据わった目つきのままで答えた。二人の距離の間に、静かな電流でも走ったみたいに緊張が伴う。
「立派なお父上でしたね。引き際をよく知っている、賢いお父様だと思いますよ」
「……言ってくれるじゃねーか、バター犬野郎が」
マツシマが目を細めつつ鴇田に言い返すと、鴇田は僅かに視線を動かしてマツシマを見る。その視線を受けたマツシマが、すぐさま言葉を紡いだ。
「知らないとでも思ってんのかよ。てめー、あのデブの専用肉便器なんだろ? 見たんだぜ、俺」
「……あ?」
くくっ、とマツシマが喉の奥で勝ち誇ったかのように邪悪に笑う。
「しつこく道場に来てた時の……いつだったか忘れたけど。夜、駐車場の車ん中でお前がデブのをしゃぶってんの見たんだよな〜。いっつも一緒にいるのは、ああ、そういうワケなんだー、と思ったよ。盛り上がってくると赤ちゃん言葉になるんだよなぁーあのデブ!」
ゲラゲラと可笑しそうに笑いながら、マツシマが囃し立てるように言う。果たしてそれが本当であるのかそれともマツシマの挑発なのか……現状、真相は定かではないが鴇田の頬がぴくぴくと痙攣しているのが分かった。
冷静に見えて、割と感情的になりやすいタイプなのだろう。表情は乏しいものの、色々と分かりやすい男である。
「……おい、シカトぶっこいでねーで返事しろよ犬野郎。お前のご主人様は今どこへ行ったよ? ん? 姿が見えないんだけど」
「――お前のような下賎の輩に私の努力が分かるはずもない……」
質問には答えず、鴇田はぶるぶると打ち震えながら言葉を紡いだ。
「オッサンのチンポしゃぶるのが努力かよ、それなら俺にだって出来るってんだよ馬鹿野郎!」
それでいよいよのように鴇田がキレた。サミング、いわゆる目潰しをけしかけようとしたがマツシマの構えたスコップによって容易くガードされた。
「……あの男はなあ、ここにいるんですよ。ほら、私のここに。同じ苦しみを与えてやりたくてねぇ。長年耐え続けた私の地獄のような苦痛を共有させてやりますよ」
お互いの攻撃が弾き返されるような形で、鍔迫り合いが終了した。スコップを握り直しながらマツシマが鴇田の半身を侵食するその物体をまじまじと見つめた。人面瘡を囲うように、血管が浮き上がっていてドクドクと脈打っている。
「ふーん。ま、俺なら絶対やらねーわ」
はっ、とマツシマが鼻先で笑った。その背後、何とか手を突くことで片膝で支えながら穂邑が囁いた。
「めいちゃん、気をつけろ……そいつ滅茶苦茶に強い。あまり舐めてかかるな」
「先生がそんなんなっちゃうくらいですからね。それは覚悟してますよ、十分」
「……勝機はあるのか?」
穂邑の声に答えるのは鴇田であった。
「残念だが勝てる見込みなどは無いに等しい、これっぽっちもくれてやる気はない。私を散々愚弄してくれたお前らには最高の死に様をプレゼントしてやる! ゾンビども、こいつらまとめて――」
鴇田の怒声を遮るような銃声。うち何体かのゾンビが倒れる。
鴇田が振り返ると、体格の良い眼帯をした男――そう、サージェントと呼ばれるその男がポンプ式のショットガンを手にして立っている。
全然嬉しくないBL〜ww
中年は多分ゲイ(バイでもいいけど。どうでもいいよ!)で
鴇田くんをお気に入りの秘書兼性欲処理係にしていたようです
その代わりに出世にあれこれ口添えしたり見返りはあるという。
鴇田くんは出世欲が強いので上へ行くためならば
きっとそれくらい我慢するんですね。
ばっちりマツシマに目撃されちゃうあたり間抜け。
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