鴇田の唇がわなわなと震えると、頭を振りながら叫んだ。
「黙れ!……いいか、今にその減らず口も利けないように、嬲り殺しにして……」
「あんたみたいな奴、うちの道場にもいたんだよ。捻くれてて、周りにたーくさん心配してる奴がいるってのに、まるで自分一人だけが不幸な思いをしてきたような顔しちゃって――」
「……黙れと言ってるじゃないですか! も……、もういいでしょう、最後の別れはお終いにしますよ……わ・私とした事が取り乱しましたが、とにかく」
鴇田が身を起こしながら眼鏡を掛けなおし、グランドのゾンビ達に呼びかける。
「お前ら、餌の時間だッ! 新鮮な肉があるぞ、ここになぁ!」
鴇田が指を鳴らすと、ゾンビ達が一斉に振り返った。焦点の合わないその視線たちに捉えられ、穂邑は一瞬竦み上がる。
――ここまでか……
奥歯を噛み締め、痛みでもうほとんど自由の利かない我が身を呪う。そして思う事と言えば残された家族の事や道場の事や仕事のあれこれや……とにかくまぁ、様々な事だ。
――しゅう、小雪、沙雪……父さんはどうやらここまでのようだ。由紀枝、不甲斐ない夫ですまん……あぁそれと……、
そして、ヒロシの顔が不意に思い浮かんだ。……あいつは、まあちょっと擦れたところがあるけれど心配する事はないだろう。友達らしき人物だって出来たみたいだったし、あの活発な妹だっているんだから一人じゃない……もうすぐ、彼の父親に会えると思えば死に行くのもそう悪くないと思えた。
それよりも心配すべきなのは、もう一人いる。
ヒロシよりも、もっとこまっしゃくれた、可愛いけれど可愛くないのが。
――めいちゃん……
奴の事はちょっと心配だ、昔よりは心を閉ざしちゃいないが彼は周囲とはうまくやっていけるだろうか? 自分が引退した後は、彼に道場の事を任せたいとは日頃からぼやいちゃいたが何せあのマツシマの事だ。
日々、周りとは衝突が絶えなさそうだし、それに子ども達に厳しくしすぎやしないだろうか……あぁ、ここにきて今更後悔してきたな。どうしようか、これは。
「先生、何やられちゃってんすか? この程度の相手に、なっさけない」
今のはマツシマの事を思いすぎるあまり聞こえてきた幻聴だろうか。小生意気な感じのする、あの高くもなく低くもない、ちょっとしゃがれた感じのする声が耳元へと届いた――。
それから顔をあげて見れば、すぐ目の前のゾンビの頭がべしゃっとトマトみたいに潰れた。
「……めいちゃん?」
頭部を失くし、噴水のようにびゅうびゅうと血を吹き上げながらゾンビが倒れた。そしてその背後に立っているのは、スコップを抱え不敵に笑う……そう、他ならぬマツシマである。
「まさか背後でも取られました? もしくは、ガードを降ろして上段一本か。らしくないですね〜、俺や九十九くんには散々言う癖に」
「お前……本当にめいちゃんなのか?」
あまりに馬鹿げた質問かとは思いながらも、半信半疑のままに穂邑は問いかけるのだった。
「先生!」
続けざま響いた声にはっと視線を上げる。
「しゅ、修一さんまで……」
見れば少し離れて修一が両手を大きく振り上げている。子ども達は送り届けたのだろうか、その姿は見当たらない。
「何してるんですか、逃げてとあれほど……ゴホッ」
立ち上がろうとして、肺辺りを圧迫されたような感覚に襲われた。全身の骨が軋むように痛い、これはあれだ。身体が限界だ、と悲鳴を上げている。
「無理しないで下さいよ。先生、貴方もう四十歳なんだし。初老なんだし。世間じゃあオッサンですよ、それ」
「そうなんだよなぁ、実はもうその年齢で足腰が……いつまでもお前らの若い穂邑先生でいたかったけど……って誰がオッサンだ、コラ!」
「はは。そんだけ言い返せる元気がありゃ、もう大丈夫ですね」
いたずらっぽく微笑まれてしまい、穂邑が返す言葉もないという感じに苦笑を浮かべた。
「……さー、て」
マツシマがスコップの柄を肩に担ぎながら、その場から立ち上がる。
生霊といえば
ささやななえこ先生の漫画、生霊(いきすだま)はこえーぞ!
てか黒幕の女がすげえむかついてしゃーないw
怖いんだけどその自意識過剰ぶりが本当に腹立たしくておっと殺意が。
この人の漫画、怖いの多いなぁ〜><
「空ほ石の…」って漫画がやばすぎる……
最後に押入れから何かがにゅ〜って出てくるシーンが
本当にきもい、きもすぎる! トラウマじゃ。
絵が丁寧で綺麗なのも怖さ倍増。
この人と山岸涼子の漫画は怖いな。
ホラーなんかギャグだぜとか強がってる人は読むべき。
←前/次→