09-2.今夜は悪い夢が見れそうだ



 キコキコと軋んだ音を響かせながら、全くどういう原理なのやら車椅子(と、鎖で縛り付けられたミイラ男)はゆっくりと近づいてきている。

「……あいつ、生きてるのかしら? ゾンビだったら噛みつかれないよう気をつけないと」
「生きてよーが死んでよーがどうだっていいの、只もうキモいだけだわっ」

 それからナンシーがしゃがみこんで、その上質そうな革のブーツに手をやった。しっかりと結ばれたその紐を解き始めるのでまりあが怪訝そうに首を傾げた。

「なあに? どしたの、靴紐緩んだ?」

 ナンシーは首を横に振ってから、一度そのブーツを脱いだ。

「武器の代わり。……何も無いよりはマシよ」

 そう言ってナンシーは紐の部分を伸ばせる限りに伸ばし、その手にぐるぐるとテーピングのように巻きつけた。それからしっかりとそれを握ると、ブーツをまるでヨーヨーのようにぶら下げて見せた。

「なるほど……」

 重みもありそうだし、何よりヒールの部分は刺さったら痛そうではある。 

 ナンシーは扉にさっと張り付いて、そっと廊下を伺い始めた。

「それよりも来るわ、あと少し。いい? せーので飛び出してとっ捕まえるわ。あたしが後ろから羽交い絞めにするから、まりあちゃんはその間に鎖を外して」
「ええ!? またあれに触らなくちゃいけないわけ!?」
「……だったらまりあちゃんが私の役割をしたっていいのよ。後ろから、あいつの首めがけてチョーク・スリーパーを決めてくれる?」

 想像してイヤになったのかまりあは舌を出してうえ、っと一言付け加えて見せた。

「分かった。我慢する……」

 その顔は既に泣きそうになっていたものの、まりあは決意を固めてくれたようだ。まあ、この四面楚歌、出来ることといえば数が限られているし。……そうせざるを得ないのだが。

 ナンシーが頷いて、また体勢を元に戻した。

「……ええ。宜しく」
「うう、兄上、隊長、お父様ぁ〜……まりあは乙女の意地にかけて何とか頑張りますぅう……」

 ナンシーの目がす、っと鋭くなった。

「――行くわよ」

 呼吸を整えたような声で準備を促すと、まりあが一瞬だけ強張ったがすぐにまた真剣な顔つきへと切り替わる。

「……せぇ……のッ!」

 その合図と共に、二人が勢い良くその場から飛び出した……。




ネットの創作話って怖い話多いけど
あれをまるまる実写にしても怖さは伝わらない気がするね。
あの淡々とした文章を一人で読むのが怖い。
コトリバコの実写? 見たけど
あれまーーーという感じだったなぁ





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