07.
もういいよ、と言われたので振り向けば……あらまあ。
「何か、七五三っぽい」
「はぁ!?」
率直な感想を漏らせばセラがカチンと来たらしい。思ったままの事を述べただけなのだがセラはとてもむすっとしてしまった。
そして自分で言っておきながら七五三っぽい、とは一体何ぞや。
「うーん、その例えは違うか。お遊戯会的な?」
「……そ、そんなに僕って幼いの?」
「え、自分で気付いてないの?」
誰が見ても百人中百人、セラは高校生には見えませんと答えてくれるに違いない。自信を持ってそう言える。セラ本人はショックだったのか何なのか気難しい顔をさせたままであった。
「い、いいじゃん、若く見えるって事だよ……」
果たしてそれはフォローになっているのかいないのか。複雑そうな顔をしたままのセラに創介が慌てて声をかけてやる。
「あ、あーっ、そ、そうだ。俺、腹減ったな〜〜! 何か食べたいな〜〜! も、もういい時間だしご飯とか欲しいなーーーっ」
「……は、そ、そうか。じゃあ早速ご飯でも作る事にするよ。何でもいいの?」
「嫌いなものとかアレルギーはないよ」
よし、とセラが立ち上がるとメイド服のままキッチンへとてくてく歩き出した。子どもみたい、とは言ったものの女顔のセラには実はよく似合っているような気がした。でもそれを口に出してしまうと、何だか自分がいけない道に走ってしまう気がしたのであえてそこは触れないでおいたのであった……。
「痛っ」
とまあ、何だか妄想に浸っていると現実へと引っ張り戻す声がして。
「え、ちょっとどうしたの?」
「ゆ、指切った……野菜切るのって難しいな」
「難しいってあんた何そんなベタな失敗を!?」
初歩的過ぎるこのミスからも分かるよう、セラはまぁ〜〜〜、料理が苦手なようだ。
「こ、これでよく一人で生活できたね」
いやマジで、と半ば感心したような声色で呟けばセラの意地っ張りな瞳とぶつかった。痛かったのか指を咥えながら涙目で必死こいてこちらを睨んでいる……なけなしの反抗心を寄せ集めたんであろうその目は、何となくだがいじらしくも見える。
「う、うー……分かった! じゃ、俺も一緒に作る!」
「え?」
予想だにしていなかったんであろう創介の提案に、セラが目を丸くさせた。
「え? って何だよその顔。俺も一緒に手伝うって、何作ろうとしてくれたん? 卵に玉ねぎにケチャップにー……あ、オムライス? おお、得意だぜ俺!」
「い、いいよ……僕が雇われる側なのに」
「俺、実を言うと結構料理好きなんで」
「なら何でお手伝いなんか雇うんだよ!? 自分でやればいいのに」
「でもまぁ面倒っちゃ面倒じゃん、ねえ。朝とか特に。あと掃除は苦手なもんでね、うん」
そう言って話しながらてきぱきと手を動かす姿はなるほど、確かに口だけ男ではない。手馴れているのか随分と器用に包丁を扱い始めた。喋り出すと手が止まらない辺り、中々のやり手だ。
「どう、どう? もっこりもこみち並みの手際の良さじゃないか、俺」
「もっ……、って失礼だな。絶対にファンは今怒ってるぞ、一緒にするなって」
「今ちょっと笑ったじゃねぇか! もっこりの方に反応しやがって!」
あれれ、何だかんだで今日初めて仲良くなったと思えないくらいに喋れている。元々自分はそんなに人見知りする方でもないのだが、セラの方はと言えば結構警戒心が強いんじゃないかなと勝手に思っていたんだけど。
気がつくと、そんな思い込み等はもうどうでも良くて。二人仲良く肩を並べてせっせとオムライス作りに励むのであった……。
このもっこりもこみちってネタなんですが
黒井が会社の人に言われた台詞が元になってて
「どうせ黒井さんはあれでしょ、
朝の番組なんてもっこりもこみちが見れたら
後はどうでもいいんでしょ」みたいな事を言われて
「もこみちかっこいいからいいじゃん」と
笑いながら返したら他の営業員が
「黒井さんは今どう聞いても
もっこりの単語に反応して笑いましたよね」と
ツッコミが入って、っていう
まあどうでもいい話がありました。