02.


「俺はくそったれ〜♪」

 所変わってこちらはひどーーーく能天気なヤツがいる。

「梅毒、毛じらみ、ばらまく性病〜……っととと」

 歌うのに夢中になりすぎるあまり家の前を通り過ぎてしまったではないか。俺のお間抜けさんめ、と創介は心の中でせせら笑うとくるっとUターンを決める。

 それから久しぶりの我が家の全貌を見上げてから、元気良く帰還するのであった。

「ただいまー!……なんて言って家に誰もいないんだけどね。さーて久々に一人でゆっくり……ゆっくり……。……、あれ?」

 ふっと靴を脱ごうかと足元を見れば、高級そうな草履が一足。サイズと上品そうな作りから女物だと分かるが、あれ、これは……。

 創介は何となく嫌な予感を覚えて慌てて靴を脱ぎ揃え、チャラチャラと着崩していたブレザーをたちまち直し始めた。シャツをズボンにきちっと入れ直して、それから緩めていたネクタイを締めて髪の毛もセットしておく。

 まあこんなものか、と身だしなみを整えてから妙にかしこまった顔つきに切り替わる。咳払いを一つしてから、声の調子を確かめつつ創介はリビングへと続く扉をそ〜っと開けた……。

「……。え、えぇとー……」

 ソファーの上に腰掛けている和服姿の女性は、静かにお茶を啜っていた……。

「お、お母ちゃん……何シテルンデスカ」
「……あら創介、お帰りなさい」

 やけに片言になりながら問いかけると、髪の毛も見事にアップにして、おくれ毛一つとして許さない上品なまとめ髪。高級そうな和服といい、迫力満点な母親である。いつ見ても。

「どこほっつき歩いてたの、この馬鹿息子は」

 顔合わせ早々にそう言われてしまってはグゥの音も出ない。

 創介ママこと弥生は、父がどこか高級クラブでひっかけてきた元ホステスなのだが正直言ってこの見てくれはヤクザの妻にしか見えない。あの悪どそうな狸親父と並んで歩くと完全にそっち系の人だ……。

 ちなみにそういう母の方こそホストクラブ大好きで、夜な夜なあっちのホストクラブでドンペリ空けてこっちのホストクラブでお気に入りメンズに貢物プレゼントをし、とまあこの母親にしてこの息子ありと言ったところか。




はつとうじょう!
創介ママこと弥生かーちゃん。
何かおかしな訛りで喋ります。
一体どこの出身なんだこの人。
創介はママ似。







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