02.
 誰だって褒められて悪い気はしないだろうし、しかもそれが純粋に本音として聞こえるなら尚更だろう。最もユウ自身はお世辞とかじゃなく本心で言っているんだろうから、それ以外なりようはないのだけれど。

「そうですかね」
「うん。俺、ヘタレでチキンだから」

 そう言ってへらりと笑うユウ君の何とまあ、愛らしい事か。邪気の無い笑顔っていうのか、何なのか……ノラが一歩引いてその光景を見つめながらつくづく思う。自分には出来ないなあ、と。

 そうやって微笑まれて、ほら、ヒロシちゃんだってまんざらでもなさそうだ。

「おはよ〜」

 教室に入ると、思いっきりミイが寝不足そうな顔を持ち上げてこちらを見た。

「おやミイ君ってば、随分と眠そうだ事」
「……何か、段々とクズみたいな生活に落ちぶれて行ってるような」

 そう言って三夜連続の賜物かクマの出来た目で見上げ、ミイは疲弊したように言った。これでも止められないのがあのゲームの恐ろしいところだ……。

「うふふ、ミイ君らしからぬ光景」
「くそ、絶対にノラに嵌められた……」
「人聞き悪いな〜、やめるのは勝手じゃないかー」

 そう言ってヘラヘラと笑うノラの腹黒さと言ったら……ミイは複雑そうにそんなノラをじとと見つめた。

「あ、でも俺はうれしーけどなー。ミイと狩り行けるの楽しいよ、何か」
「……」

 で、天然由来の笑顔でユウがニコニコと微笑みかければ、ミイもそれで毒気と眠気を同時に抜かれたように口を噤んでしまった。

――で、出た〜、ユウ君の天然タラシ攻撃! 何でそれを女の子の前で発揮できないんだぁ?

 ノラがそう思いつつユウの無自覚なやり手ぶりを見守りつつ、ユウはお次はヒロシに絡み始めた。

「ヒロシ君もさ、一緒にやろうよ」
「遠慮します」
「でもさー、みんなで遊びたいな。別にゲームじゃなくてもさ、カラオケでも」
「絶対に嫌です……」
「ぇあっ、何で? カラオケ嫌いなの?」
「大ッ嫌いです」

 そういえば音楽の授業の時、歌唱のテストの時だけはとても浮かない顔をしていたっけとユウは彼の姿を思い起こす。テストは個別に違う部屋でやるから、みんなの前で、とかではないのだけど実に暗ーーーい顔だったのをよく覚えている。

「ふーん、そうなんだー。残念。じゃあボーリング!」
「……それなら……まあ」
「ほんと? やった、じゃあ絶対約束ね」

 凄くどうでもいい事柄なのかもしれないが、ミイとヒロシは何故か折り合いが合わない。ヒロシのこの、ちょっとツンケンしてお高く止まった感じが真面目すぎるミイにはどうにも気に入らないようなのだ。




ユウもミイも田舎の子って感じだけど
ヒロシは都会くさいよね。
ノラもどっちかっつーと都会的じゃないかね。





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