02.
情けなさも相まって本当に眩暈がしてきた……これは相当にやばいんじゃなかろうか。ヒロシは朦朧としてくる意識の中で、もはやマトモに思考も働いてくれない事にいよいよ危機感を覚える。
今までどんなに過酷なトレーニングを受けても感じた事のない焦燥感じゃあないか、これは? 結局、解決の糸口は掴めなさそうであった――、ヒロシは遠のく意識の中で色んな人間の顔を見た。
――父さん……
そしてやはり、最後に浮かぶのは肉親の顔で……あ、いかん。幻まで見えてきた。ぼやけた視界の中で見たのは、アーサーだった時の優しい父の姿だった。上品そうな佇まいで傘をさし、こちらの様子を窺うみたいにして見つめていた。
これってひょっとして、幻じゃなくて俗に言うお迎えが来たというやつではないだろうか。
そんな、まさか、ちょっと早すぎるんじゃあないか。ヒロシは熱に浮かされながら、そんな父の姿を見つめていたが不思議と恐怖は無かった。……むしろ、どこか幸福感のようなものさえ覚えていたのだった。
――父さん。父さんの元へ行けるなら別にいいよ、僕は。ずっと会いたかったんだ、父さんに……会ってお話がしたかった
父の幻影――は気付くとベンチの傍にまでやってきて、優しげな声で一度こちらの名前を呼んだ。それから彼は、ベンチで隣に腰掛けた。
「成る程、戦争論……ですか。いい趣味ですね中々」
「――? 何言ってるんだよ、アーサーが奨めてくれたものじゃないか……」
「はい?」
言ってから気付いた。
「……あ」
「やぁ、ヒロシ君。こんなところでオネンネとはまた君も真面目に見えてとんだ奇行に及ぶものだ」
がばっ、と思わず身を起こすと隣にいたのは……。
「はぁい。奇遇ですねぇ」
「……あ、貴方だったんですか」
優雅に膝を組んで、ヒロシが今しがた借りてきた本を無許可に読みながらその男――ルーシーはニコリと笑ったのだった。彼はそれが私服なのか何なのか、黒のスーツの下に赤いシャツを覗かせこれまた黒のネクタイをしめ、普通の人はあんまりしないようなスタイルである。
「ええ。僕もたまに行くんですよ、そこの図書館。綺麗だし落ち着きますよね」
「……、は……は、い……」
「あらら? どうしちゃったんですか、ヒロシ君。お〜いヒロシくーん」
そのままヒロシの意識はぷっつりと途絶えてしまったのだった。最後に見たのはこちらを覗き込むルーシーの顔だった……。
隊長も私服は変わってそうだよね。
デートでもないのにスーツきて花束持ってそう。
しかも目も悪くないのに眼鏡かけてると思う。
↓自分の事イケメン、若しくはもてる奴だと分かってる奴
・隊長
・創介(自信ありすぎてレイプが犯罪だと思ってない)
・ノラ(特別イケメンだとは思ってないが
女が気を許す顔だとは自覚がある筈。
あとセクハラしてもセクハラにならないと
それも分かっている)
・神父(これもノラと似たタイプ)
・穂邑先生(女どもよ、俺を見てくれ!なタイプ)