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Clap Thankyou!

下駄箱を出たくらいのとある帰り道。
委員会の仕事で遅くなってしまった私は、日が落ちてからの帰宅となった。
日が落ちると言ってもまだ17時頃。

ちなみに他の子はもう暗いし遅いからと、とっくに帰した。
委員長とは大変なものだ・・・つくづくそう思う。
冬の昼の短さを感じながら、ついでに隠し切れない寒さも感じながら一人で帰ることに。



「あれ・・・柳生だ」



前方にテニスバッグを姿勢正しく背負っている、クラスメートがいた。
さらついた茶髪にスマートに歩くその姿はどう見ても柳生。
でも、なんかおかしい・・・。



「おーい!やぎゅー!」
「おや、あなたは私と同じクラスの・・・」
「覚えててくれたんだ。」
「えぇ、これくらいは当然ですよ。」



にっこりと爽やかな微笑み。
いつもと同じ、屈託のない笑顔。
でも何かが違う気がする。

・・・あっ、



「柳生・・・そんなに寒い?」
「・・・いえ。どうしてそのように思われたのですか?」
「少し体が震えてるし、マフラーきつく巻きすぎじゃないかな・・・って」
「そうでしょうか。私はいつもこれくらい、」
「帰り道にまで柳生になることないんじゃない、雅治?」



そうだ。柳生はこんなに寒がりじゃない。
私がさらっと指摘すると、柳生は黙ってしまった。
あれ・・・これって本当に柳生だったらかなり失礼なんじゃ・・・。
不安に思って顔を覗き込むと、ため息をついて変装をとき始めた。
あぁ、大丈夫だ。完全に雅治だ。



「まさか柳生マニアに見つかるとはのう。」
「誰が柳生マニアだ。可愛い幼馴染でしょ。」
「やっぱり冬に柳生になるのは難しいぜよ」
「話しきいてんのか詐欺師」
「おうおう聞いてるナリ。ダンゴ虫の話じゃろ?」
「あんたの耳は飾りか!?」



茶色のかつらをくるくると指で器用に回している。
本当に話を聞いているか疑問なものだ。



「そんなに怒りなさんな。送っていってやるき」
「家すぐ隣じゃん・・・」
「プリッ」


相変わらず、話をそらすときに変な口癖を使うんだね。
前と全然変わってない、幼馴染にほっとする。
最近はすっかり学校で話したりすることが無くなったから、雅治との間に大きな溝が出来ている気がして不安だった。

・・・ねぇ、知ってる?
柳生と一緒にいることが多いのはね、雅治と話すきっかけを作るためなんだよ。
なんて、そう言ったら彼は何ていうのだろう。
雅治とこんなおしゃべりができるのは、あと何回なのかな。

私が遅く歩くと、雅治も歩幅を合わせてくれる。
よく一緒に帰った懐かしい帰り道を、二人でゆっくりと帰った。



End




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