ぶっちゃけて言うが、シャドウはおかしい。

いや、決して悪意があってそう表現している訳ではないんだけど。悪いやつじゃないしな。
ならば何がおかしいのかって?

俺にやたらと"忠実"なんだよ。

やたらと俺に気を使ったり言う事を聞いてくれたりする。それだけならまだ良いんだけど。少し過剰なんだよな。
俺を王とでも思っているのだろうか。いや、あの少し優しい感じがする態度から女王か姫とでも思ってるのだろう。俺は男だというのに。
馬鹿なのか真面目なのか彼の無表情からは何も読み取れない。とりあえず彼が俺に対して本気なのは分かった。

で、そんな彼を試してやろうと思って尋ねてみた。
「お前は俺の言うことを何でも聞くのか、」と。
そしたら即「ああ」の一言返されました。

冗談に聞いてみる。

「足を舐めろって言ったら?」

「舐めよう」

いやいやそこは嫌がれよ、即答するなよ。真顔で答えるなよ。NOと言われるの前提で聞いたのに。

マジかよこの男は。変態か。







で、現在俺の部屋。ベットに座る俺とそこで跪いているシャドウ。
部屋に来い、跪け、何ひとつ文句言わずに俺の命に従う。騎士でも気取ってるのか。馬鹿馬鹿しい。
だが次の命令には流石に従わないだろう。騎士ごっこも嫌になるはず。さっさと目を覚ましてもらおうか。

「足を舐めろ」

シャドウの前に裸足の足を投げた。
怒るか気味悪がるだろうか、不快に感じるはず。そう思ったのに。
シャドウは俺の足を丁寧に支えるように持ち、あろうことか本当に舐め始めたのだ。

待て待て待てこいつ何で躊躇いもなく出来るんだ、頭おかしいのか変態なのか
だがシャドウの無表情からは感情が読めない。優しい舐め方もいやらしさを感じない。
忠実で従順。こんな単語が頭をよぎる。

彼は踵から指までご丁寧に舐める。舌の這う感触が擽ったい。だが馴れると快感に感じてしまう。そんな自分が恐ろしいのだが。

背徳感と独占欲。後悔と歓喜。さて何を後悔して何を歓喜しているんだろう。俺の頭の中をぐるぐるぐるぐる巡る矛盾思考。

シャドウは俺を本当はどう思ってるんだ?俺はシャドウのことを、

「…わからん」

ただ頭がぐっちゃぐちゃになった。くらくらしてベットに倒れた。腕を乗せた顔がなんだか暑い。
シャドウが舐めるのをやめ俺の顔色を伺ってきた。

「どうした」

「お前の本心が分からない」

体を起こた。前には俺の足を持ったままのシャドウがいるだけ。

「何故いやがらないんだ。何故拒否しない。何故俺の言うことに何でも従う?教えてくれ、いや、教えろ」

「それは命令か」

ここでも命令、かよ。命令じゃなきゃ答えないのか。

「ああそうだ」

シャドウの無表情が一瞬消え、困ったような色を見せた。そして一息ついてから口を開いた。

「正直に言おう。俺がお前が好きだ」

「はぁ?」

意外だな。てかぶっとんでやがる。好きだとか軽々しく言うなし。
あと好きなのが従順なのとどう結び付くのか俺には分からん。

「どうしてその答えから従順になることに繋がるんだ?」

「俺の守るべき姫だと思っている。俺がお前の言うことを聞けばお前は俺を側に置いてくれる。俺を特別と見てくれる。それを望んだ」

シャドウは真剣だった。目が本気だ。どきりとするくらいに。
ああ、馬鹿だ。こいつは馬鹿だ大馬鹿だ。だからそんな方法しか見付からなかったのか。俺はこんなこと望んでいないのに。

はて、俺は本当に望んでいないのか?お姫様ごっこは楽しいと思わなかったか?
やめろやめろ、そんなこと考えたくない。
一瞬でも楽しかったとか舞い上がる気分を感じてしまっただなんて。認めたくない。

とにかくシャドウが俺を想っていてくれただけで嬉しいと思おう。

俺だってシャドウの事が、好きなんだから。



「じゃあシャドウ」

「なんだ」

「俺が好きなら抱きしめたいとかキスしたいとか、その先に進みたいとか考えたこと、あるか?」

途端に赤くなるシャドウの頬。何その素直すぎる反応、可愛いなぁ。考えてくれてたのかな?
今の俺、満足そうに笑ってるかも。

「じゃあやってみろよ」

「な、何を言って、」

「俺もシャドウのこと好きだぞ?」

言うことを聞く騎士としてじゃなくて、お前自信の事が。

「だから、キスして」

「っ、」

躊躇うシャドウ。「めいれいだぞ」なんて言ったら動き始めた。なんだこいつ、弱虫、意気地無し。そんなとこも可愛くて好きかも

ベットに転がる俺に跨り、近付いてくるシャドウ。
その目の色は言うことを聞く人形みたいな騎士さんじゃなくて、俺を求める男の色だった。

重ね合わせる唇。緊張してるみたいだ。やっぱり無表情より素直な反応が可愛いな。どちらにせよかっこいいから好きだけどさ。

「シャドウ、好きだよ。だから俺の言うことなんて聞かなくていいのに」

「俺だってお前が好きだ。愛してる。だからこそ触れずに大切にしたかった」

「馬鹿だろ…」

思わず口に出してしまった。

「そんなのつまんないだろ、本当は触れたいんだろ?好きにしたいんだろ?」

シャドウの目が丸くなる。だがすぐに元の表情に戻り、俺の頭を撫でてきた。

「お前を…壊しかねない」

そう言う瞳は黒く黒く光っていた。
分かった、見えたよ、それがお前の本心か。嬉しいな

「構わない。壊すくらい愛してくれよ」

大丈夫、俺はお前のせいで既に壊れかけてるからな。

「俺の求めてるモノなんて分かってるだろ?騎士サン」

からかうように言ったらまた唇を塞がれた。今度は舌をねじりこまれる。

こりゃ完全にスイッチ入っちゃったかな。まあこうでなきゃ楽しくない。



こんな主従関係も悪くはないな。





END




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旧サイトから書き直し移転。
文がぱっとしないから技術が上がったらまた書き直したい…



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