※死ネタ、ヤンデレ注意!!







大好きな大好きな風丸さん。
堪えきれなくて僕が想いを伝えたら、風丸さんも僕を想ってくれていた。
凄く、幸せ。
僕達が恋人という関係になってからどのくらい時がたちましたかね?
まあ、そんなのどうでもいいですけどね。僕は風丸さんの隣にいられる今が幸せ。
この「今」は「永遠」に続くんだ。

「宮坂、一緒に帰ろう!」

「はい!」

部活後、風丸さんに呼ばれてすぐに返事をした。
その向こう側で残念そうな円堂さんの顔。残念でしたね、これから風丸さんは僕が独占させてもらいます。





「どうしたんだ宮坂、河川敷に寄るなんて」

風丸さんの手を引いて、河川敷まで来た。

「いきなりすみません。でもどうしても渡したい物があるんです」

それを聞いてキョトンとする風丸さん。可愛い。
僕は鞄から小箱を取り出して、風丸さんに渡した。

「お金貯めて、買ったんです。と、言っても所詮中学生の財力では立派な物は買えませんでしたけど…」

風丸さんは小箱を開ける。

「シルバーの、指輪…?」

「はい、僕が貴方を一生幸せにするという証です。結婚指輪だと思ってもらえたら……嬉しいです。…すみません、こんなもので。いつかもっと立派なのを買い直したいと思っています」

流石に結婚指輪、だなんて言うのは恥ずかしかった。分かっている、こんなキザな真似は自分に似合わないことなんて。風丸さんに軽く笑われて終わりだろう。それでも渡したかった。形にしたかった。

そう思っていたら、
風丸さんが抱き着いてきた。

「うわっ?!!」

「…ありがとう!宮坂!!」

ギュウッと抱きしめられ、風丸さんの優しい匂いに包まれる。温かい。
顔が真っ赤なって、上手く呼吸が出来なくて、口をパクパクさせることしか出来なかった。
そして風丸さんは離れて、その指輪を自らの薬指に通す。白く綺麗な肌に銀色が冴える。

「綺麗だな…どんな宝石よりも綺麗だよ」

それを見ながら心から嬉しそうに目を細める風丸さん。なんだか僕も嬉しくなる。

「凄く、嬉しいんだ。宮坂が俺をそんな風に思ってくれていたなんて」

「そ、そうですか?」

どうしよう、照れる。

「ああ。一生幸せにしてくれる、か…」

「はい!!風丸さんのこと愛してますから!!」

いつもなら恥ずかしくてなかなか言えないけど、今ははっきりと言えた。

「いや、寧ろ俺は宮坂を幸せにしたいんだけど?」

ふふっ、と笑いながらそう言う風丸さんはやっぱり男前でした。でも、

「いーえっ!!僕はもう十分幸せにしてもらっています!!だから僕が貴方を幸せにするんです!!」

ぐっ、と握り拳を作って言えば、風丸さんは目を丸くして、それから笑った。

「そうか?じゃあこれから二人で幸せになろうな!!」

「はい!!!」

「大好きだ!!宮坂っ!!」

これからずっと、今みたいな幸せが続くんだ。僕はこんなに幸せで良いのだろうか!!







次の日の朝、少し眠かった。昨晩は嬉しくてなかなか眠れなかったのだ。
大変だ、遅刻じゃないか!素早く準備して家を飛び出す。
学校に着いた時には部活の朝練は終わっていた。しかしサッカー部の所に風丸さんを見かけない。どうしたのだろう、風丸さんが遅刻するわけないですからね。

教室に入って、朝のホームルーム。ぎりぎり間に合った。
そして今朝の先生の話。

「昨晩、この学校の二年生の生徒が交通事故で亡くなりました。皆も気をつけるように」

凄く重い先生の言葉。そうですよね、人が死んでるんだから。

「先生、亡くなったのは誰ですか?」

クラスメイトの一人が聞いた。別にわざわざ今聞かなくてもいいのに、きっと後で全校集会で話が出るだろうに。
先生は重い口を開く。


「……風丸一郎太さんです」


「……え?」

最愛の人の名前を聞いて、思わず言葉が出てきてしまった。

だっておかしいでしょう?なんでここで彼の名前が出るわけないじゃないですか。

「あれっ、風丸って宮坂と仲が良い先輩だよな?」

前に座る友人が話し掛けてくる。だがそんなのに構ってられない。

「…先生、なにかの間違いですよね?」

僕の口から出た言葉は自分でも驚くくらい低かった。

「先生は風丸さんが昨晩事故で亡くなったと聞きました、間違いはありません」

「嘘…」

それから先生は別の話をして、ホームルームを終わらせた。そしてざわつくクラスメイト。それでも僕には何も聞こえなかった。


まさか、昨日指輪を渡した風丸さんが、喜んでくれた風丸さんが、抱きしめてくれた風丸さんが、笑顔だった風丸さんが、別れ際に大きく手を振った風丸さんが、

事故で、亡くなった?

もう会えないのですか?話せないのですか?抱きしめることも、抱きしめてもらうこともないのですか?

もう僕が貴方の隣にいることは出来ないのですか?

「嘘だ、こんなの、」


「おい、大丈夫か宮坂…」

友人が声をかけてくれるけど、今の僕には届くはずがなくて、

風丸さん風丸さん風丸さん、僕を一人置いて、先に逝くなんて、

「嘘だあああああああ!!!!」

そんなわけない!!風丸さんが死ぬわけない!!僕の風丸さんが!!

「嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だああぁああうわああぁああぁああ!!!」

僕は教室を飛び出した。
嫌だ嫌だ嫌だ!!風丸さんがいないなんて!!探さなきゃ!!今すぐ探さなきゃ!!

僕は全速力で走る。

風丸さんの教室に向かった。
でもそこには、風丸さんの席には誰も座っていなくて、
側に目の死んだような円堂さんがいただけだった。

「風丸さんはどこにいるんですか」

そいつに問い掛けてみた。

「風丸は死んだんだ」

そう答えられた。
他の人に聞いても同じ答えだった。

皆して僕に嘘を付く!!風丸さんが死ぬわけないのに!!皆、僕の風丸さんを隠している!!

「風丸さんをどこにやった!!答えろ!!」

僕はそこにあった誰かのバットを手に取り、答えない奴らを片っ端から殴った。

外を見れば風丸さんがいるような気がして、僕の目の前を塞ぐ窓ガラスを全て割ったけど、そこにはいなかった。

僕は探す。バットを片手に風丸さんを。邪魔な奴らはバットで振り払う。
他の人に風丸さんの居場所を聞こうとしても皆逃げていく。ああ、皆グルなんだ。じゃあ叩いて居場所を吐かせましょうか!!

「風丸さん!!風丸さんはどこですか!!風丸さん風丸さん風丸さん風丸さん風丸さん風丸さん!!!!」


ある程度校内を俳諧してから後ろから誰かに取り押さえられた。

「離せ!!僕は風丸さんを探すんだ!!風丸さんをどこにやった!!」

「もう止めろ!!風丸は死んだんだ!!目を覚ませ!!」

振り向けば円堂だった。そいつは涙を流していた。

「嘘、」

「嘘じゃない」

そいつの言葉には重みがあった。だから信じざるを得なかった。

力が抜けてその場に座り込んだ。

「う、うわ、うわあああぁああああぁあああああ!!!!」

そんな、風丸さんはもういない!!その姿を見ることも、僕に声をかけてくれることも、もう二度と、二度とないのだ。

ぷつり、と僕の意識は途絶えた。







その後の事は覚えていない。全く覚えていない。
とりあえず目を覚ましたのは病院のベッドだった。

いけない、家に帰らないと。僕はすでに暗い病院を誰にも会わないよう抜け出し、夜道を歩いて家に向かった。


その時、


「宮坂!!」


愛しい彼の声が聞こえた。


「風丸…さん…?」


声のする方を見れば、愛しい彼の姿。
なんだ、生きてるじゃないですか。もう会えないかと思ってた。よかった、…よかった!!風丸さんは生きている!!
僕は彼の方へ走った。


「風丸さん!!ずっと探してたんですよ!!どこ行ってたんですか!!」

「ごめんごめん。でももう大丈夫だ。ずっと一緒にいられるぞ」

風丸さんは満開の笑みで両手を広げる。
その薬指には輝く銀色。



「俺は、お前を迎えに来たんだ!!」


「…!」


嬉しくて涙が出てきた。


「風丸さん!!!」



大好きです!!!



僕はその胸に飛び込んだ。


その瞬間、辺り一面が明るくなった。












翌日、とある少年の遺体が見つかった。死因は交通事故だった。
その少年は前日に学校で急に発狂し、物を破壊して何人もの生徒を傷付けた後、意識を失い倒れて病院に運ばれたという。
彼の意識が戻り次第、事情を聞き、精神科がカウンセラーをする予定だったのだがその日彼は目を覚まさなかった。
その翌朝、看護婦が彼がいなくなったことに気付く。彼は夜、病院を抜け出し歩いていた所を車に轢かれたようだ。その運転手は自首。彼の話曰く「少年は自ら飛び出してきた」と。
しかもその場所は少年が事故に遭う前日に少年と同じ学校の二年生が轢き逃げされた場所と全く同じであった。因みにその犯人はまだ捕まっていない。
彼の死体の第一人発見者は言う。

その少年は狂ったような笑みだった、と。






DEAD END.






ーーー
旧サイトから移転。
某様に憧れて書いたのにどうしてこうなった。



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