7月7日



「ねえ骸さん、今日は何の日だか知っています?」
「…ああ、七夕というやつですか」
「流石です」

 この人は日本人ではないというのにやけに日本のことには詳しい。日本のことなどそこまで好きではありませんけどという割には私より知っていることだって多い。やっぱりというか当然というか、彼は今日のことを知っていたことを私は別に驚くこともなかった。
 とはいえ話題を振ったもののその次の言葉は何も決まってはなく、何かが伝えたかったわけでもない。ただ彼との夜の散歩でただ空が綺麗だったというそれだけでぼんやりと言っただけだったのだけど骸さんはそのままふ、と空を見上げ「綺麗ですね」と呟いた。

「…君はてっきり食欲の方を優先するものかと思っていましたが」
「ちゃんと綺麗なものは綺麗だといいます」
「初めて知りました」

 覚えておきますよ、とこれは半分嫌味のつもりだろうけど私にはこれっぽっちも効果はない。食べるのは確かに好きだけど、それ以上に骸さんと一緒に居ることが好きだ。彼と共に過ごしていると実感するその瞬間が何よりも好きなのだ。
 骸さんが足を止めたのと同時に私も一緒になって止まる。本当に綺麗な夜空だった。別に今日が一段と美しいだとかそういう訳ではない。だけどこの人と見ることに意味がある。

「…これからも」
「?」
「君となら、過ごしてあげても構いませんよ」

 話した後に照れるぐらいなら言わなくても良かったのに。いつもの骸さんらしからぬその様子に、近付いてきた顔にゆっくりと目を瞑りながら私はそんなことを思っていた。
-TOP-
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -